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最強の者に最高の死を!  作者: 瓜野ロマ
第一章:教師をすることになったんだが…
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10:生徒達の考え

 あれは何だったんだろう…


 アーシアは自分の部屋でただただぼーっとしていた。ちなみに彼女もそうだが生徒達は全員学校の寮に入っている。男子寮と女子寮の二つである。アーシアは先ほどの戦いを思い出していた。


 人間の戦い方。全く考えたことがなかった。人間は貧弱な種族。とても戦闘ができるはずがない。だがあの人の戦いはとても美しかった。自分達が防ぎきれなかったあの炎の量を全て避け、最終的に敵を打った。


 何故だろうとアーシアは疑問に思う。何故、あの人より脚力、俊敏さを持つ自分があのような美しい戦いが出来ないのか。そこでアルの言葉を思い出す。


「これが人間の戦い方。」


 よく考えるとロウは魔法を一切使っていなかった。アルのサポートによって終盤高く跳んでいたが、本人は魔法を一切行使していない。つまり自分達でもあの動きができたというのだ。しかし自分はその炎は避けずに魔法で防ごうとした。なぜなら魔法に対する信頼が強かったから。魔法に頼り過ぎていたと言っても良い。


「自分の力はまだまだなのかぁ…」


 そうポツリと呟いて、夜空に輝く月を見つめていた。













「あれは…本当に…?」


 同じくその頃、大河も自分の部屋の中で悩んでいた。彼は人間であり、主に他のメンバーのサポートを行なっていた。だが今回自分がサポートしきれないほどのダメージを受けてしまった。あの人が助けに来なかったら、自分達はあの火によって死んでいただろう。


 自分の無力さを改めて思い知るもの、ロウの戦いに唖然するもの。それぞれがそのような感情を持つ中、大河だけは少し違うものを感じた。


 それは人間にも戦いができるのか、ということ。彼は今まで戦いなどには参加するものの、実際に戦うことはなかった。しかし今回あの戦闘を見て、自分にもできるのではないか、という可能性が浮かんだ。


 その感情は人間であることに対し自信をかなりなくしていた彼にとってとても新鮮なものであった。


「人間にも戦えるのか…」


 何度も脳内で繰り返し考えていることをつい口に出してしまうほど


 彼の中に小さな希望が生まれていた。













「クソッタレが!何なんだよあいつは!」


 そう言って自分のテーブルをぶっ壊したのはラルフだ。現在彼はこれまでにないほど憤っている。その理由は明白。彼はあの戦いでは何も成果を得られなかった。だがあの先生は見事敵を全滅させてしまい、そのことに対して自分のプライドがやらせていないのだ。


 要するに嫉妬である。


「何で…何であんな奴が勝てるんだよ。俺よりも弱いくせに…人間のくせに…」


 彼、というより彼の種族ライノーは物理的攻撃力が高く、大抵の敵はその力で倒すことができる。故に今回の戦いも、手順さえ掴めていればあの魔導師艦隊には対抗できた。


 だがそれは手段さえ掴めていればの話だ。ラルフは攻撃が全ての男なので、何か考えて動くことはほとんどない。つまりそれが自分が黒影になった理由で、あの男に劣るところなのだ。だけれども…本人は怒りのあまりそのことに気付いていない。


「なめんなよ、人間。お前なんてただのゴミなんだよ。」


 共存国家で言ったらアウトの言葉を発しながら、彼はその夜ただただ怒り続けた。小さな闇を抱えて













 夜10時あたりだろうか。アーシアは自分のところのインターフォンが鳴ったことで我に帰った。ドアを開けてみると、そこにはリリスがいた。


「今日、ちょっとどこかに行かない?気分転換っていうか、リフレッシュっていうか…」


 よく見るとリリスの後ろに先ほどの戦いで負傷したテリーやソレイユ、ティア、テドもいる。そしてみんななんかだるいような、上の空のような、とにかくぼーっとしている。


「みんなも同じなんだねぇ…」

「そりゃそうだよ。あんな負け方をしちゃ、そしてあの人の助けてもらえれば、ねぇ。」

「ああ……私も行くよぉ。どこに行く?」


 こんな時間に夜遊びは大変よろしくないが、「学生にそんな縛りはよくないと思うが…ねぇ?」と少々脅し気味に会長が意見を押し通したので、生徒達は感謝しているのである。


 こうして現在、アーシア、テド、リリス、テリー、ソレイユ、ティア、そして大河の7人で夜道を散歩している。しかし誰も何も話さない。もう6月、こんな時間でも気温は暖かく、大変心地よい。しばらくの間、7人はこの心地よく、微妙な空気のまま歩き続けた。


 ついにこの雰囲気がたまらなくなったのか、最初にリリスが口を開いた。


「なんか、いや!なんか喋ろうよ。こんなんじゃつまらないじゃん!」

「じゃあリリスが話題を作りなさいな。あなたが私たちを誘ったのですから。」

「うっ…」


 ティアにド正論を言われ、一瞬怯んだリリスだが、即座に話題を作り出す。こういう時の彼女の頭の回転は早い。


「じゃ、じゃあ、テリー!黒影になった感想、教えて。」

「えっ?俺にふるなよ…」


 みんなもなんていうものを聞こうとするんだと思いながら、だけどテリーとソレイユのみが感じたものを知りたいというのもあり、黙ったままでいる。


「まあ、とにかく最初は熱くて、熱くて、気付いた時はよ、もう筋肉の感触がないんだよ。熱が自分の痛覚を壊しているみたいな。そりゃあ動けるわけもなくてさ。ほんと、大河が助けてくれなきゃダメだった。」


 うわー、と他みんなの顔がひきつる。自分達もあの惨状を見てしまったので、どんな状態だったのか容易に想像できてしまうのだ。再度みんなが黙り始めてしまった。


 7人はいつのまにか学校付近まで来ていたが、ここでティアがあるものに気づいた。


「な、なんですの…これ。」

「?、どうしたの、ティ……ア?」


 何があったのか聞こうとしたアーシアも固まる。他のみんなも何かと見てみると…


 学校の正門の真横に建物があった。いつからあったのか、いや、そもそも正門真横にこんな敷地あったっけ…みんなが疑問に思う中、ソレイユが建物の看板らしきものを見つけて読み上げる。


死人の酒場(デッドマンズ・バー)…って、何?」

「死人の酒場ってここ、酒場なのぉ?」

「みたいだな。少しだがアルコールの香りもする。」


 アーシアがさらに疑問を口にすると、テドがそれを肯定する。みんなもさらに不思議に思った。こんなところに酒場があっていいのか…?そして名前もかなり犯罪臭があるし…しかし同時にとても気にもなった。ここにいるもの達の中で酒場に足を踏み込んだものはいない。よってここは彼らは新たな地の目の前にいるようなものだ。ついにテリーが、


「…入ってみる?」

「「「「「賛成。」」」」」

「やめといたほうがいいって、聞いてないか…」


 テドは反論しようとしたがすぐに取り消した。みんなが初めての酒場にドキドキする中、だが、とテドは考える。


 こんなところに酒場など立つわけがない。だがあの会長さんのことだから、なんとか立ち上げたのだろう。そしておそらく店主もおかしな人であろう。そんな人、今日あったあの人しかいない。


「やっぱりか…」

「いらっしゃー…い?」


 そこには今日、絶賛注目を浴びているロウとアル達が居たのである。

思ったんですけど、三人称の視点(主に生徒達の視点)めちゃくちゃ描きづらいんですよね…まあ、描き始めたからにはやり通すんですけどね。とりあえず、投稿しました。

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