5:言われた通り観察しているんだが…
「おっ、ついに始まったようだな」
現在南城門の丘の上から魔物と交戦中の俺らのクラス。そして俺らはその光景を城壁のてっぺんから眺めている。今回戦闘服に着替えているのは俺とアルだけである。まあ俺は普段着が戦闘服だし、アルも自分の紋章がついた立派なジャケットを着ているだけだし、この2人がまさか先頭に行くなんて思われないだろうが。
「それにしても…なかなか良い動きをしている方がちらほらいますね」
「良い訓練をされているねー」
「確かにそうですね。しかし…」
「チーム同士の連携やそれぞれの役割分担がまったく行われていない。いや、これはそのようなことを学んでないな」
「この状態で前線は確かにキツそうだね」
他のみんながそれぞれの感想を述べる中、俺は一人一人の生徒らを研究でもしますか。Bクラスは合計11人はら構成されており、男子女子の比率は7対4。まずはすばしっこい動きで魔物をやっつけている獣人の子。名前はアーシア。|トレードマークはあのうさ耳だな。核は風であり、身軽な《ラビット》の特性を生かし、素早い移動から敵を魔力付与をした剣できるのが基本のスタイル。
ちなみにこの世界の魔法の仕組みだが、この世界には魔力が溢れている。俺らはその魔力を呼吸で酸素と一緒に取り込んでいる。魔力は俺らの体中にあり、その魔力を行使する。そこで大事なのはイメージ。魔力を何に転換したいか、そのイメージが具体的に出来るかにより出される魔法の大小が決まる。先程の魔力付与は魔力を自分の手に集中させ、水玉が葉から葉へ移動するように、剣へと移動させることで発動させている。
もちろん、すべての魔法が使えるわけではない。俺らの魔力によって変換できるものは、俺らの体の中にある、心臓とは別の核というもので決まる。この核は生まれた時に何かの属性を持っており、レアなものでは二つの属性を持っているものもある。
見るとアーシアは、風の付与がされた剣で次々と魔物の首を刈っている。
「なかなかいいね。あの感じ、かなり手馴れだよ!」
お、アルからの賞賛が。やるな、あいつ。次は…テド。種族は獣人でアーシャと同じか。核は大地、攻撃力は高いが何より高いのは防御力。広範囲で味方の攻撃を自分が受けるというドM能力ではあるがもともと《グリズリー》は耐久力が高いのでこれほどマッチしている能力はない。また、冷静沈着で、優れた判断力を持っている。
「ってなかなか高スペックだな」
「だが弱点もあるらしいぞ。あいつ、実は金銭欲がえげつないほどあるらしい。褒美、宝などの言葉に敏感だと。マニュアルに書いてあったぞ」
「ほう…」
ここにいる6人も全員物欲半端ないからな。テドとはうまくやっていけそうだ。
「あと、アーシアとは幼なじみらしいよ。これもマニュアルからだよ」
「…マジか。ていうかあのマニュアル、そんなものまで書かれていたのか」
あんな薄っぺらいものにそこまで書かれてんのか。もっとちゃんと見ときゃよかったな。まあ、次いくか。次は吸血鬼のリリス。現在飛行しながら狼みたいな魔物を手裏剣で見事射ている。
「いや忍者かよ」
「あながち間違っていないですよ。なんか上空から偵察用のコウモリを放っていて、それから敵の位置を把握しているらしいですし。隠密系の者ですね」
「マジで忍者じゃねーか…」
俺のツッコミをノルンが捕捉する。核は血で、大抵の吸血鬼と同じ能力だな。主に吸血をすることでそのものの力を根こそぎ奪い取る。現にさっき殺した魔物から血を吸血し、体力と魔力を回復している。だけど大丈夫か?吸血している間に魔物が襲いかかってきているぞ。ところがその魔物は風属性の魔法により切り刻まれた。えっと魔法を放ったやつは…
「ティア、だったよな。俺がトム・クルーズ先生の名前を間違えた時に怒ってた」
「いやだからトム・リース先生ですよ。なんで毎回間違えるんですか。しかも間違えが妙にリアルな名前ですし」
ノルンの的確なツッコミ。ありがとうございます。ティアは妖精であり、核はさっきの技から風だとわかる。リリスと同じく空を飛べるので、上空からバンバン魔法を放っている。
「いや、あれ魔力枯渇するだろ」
「そういうわけないですよ。ほら、あちらに」
桜がさしたその先には、みんなに回復魔法やをかけている者がいた。核は無属性か。ん?だが、あれは…
「人間、だよな…このクラスにいたのか?」
「そのようですよ。。ただまったく歓迎されていませんが…差別をさない国で差別があるとは、本当に嫌なご時世です」
桜さんがさっき溢れる目で生徒たちを見ている。マジ、怖いっす。でも、あの男、確か名前は大河だったはずだが、少々違和感があった。
「これ、人間にしては魔力量多すぎないですか?」
「それあたしも思った。普通の人の何倍もある、にゃん!」
ノルンとアルが疑問にする。確かに、魔力がこんなにある人間はそうそういない。なるほどこれがここにいる理由か。だが、使っている魔法の威力が魔力量に見合っていない。このままでは意味ねぇな。宝の持ち腐れってやつか。会長さんの言いたいことがやっとわかってきた。
「あのような奴らを覚醒させることが今回の仕事か」
「そうだね〜。面白そうだね、ロウ〜」
「だな。とは言ってもこんなところに化け物じみた奴がいるとは。驚きだねえ」
「「「「「化け物はお前だ(あなたです)」」」」」
…みんなに突っ込まれた。悲しい。すると遠いところから違和感があった。魔力反応だな。それもたくさん。だが姿は見えない。
「透明化しているようだね。みんなも気付いているのかな」
「いや、ありゃ気付いてないな。それどころか魔物がりで調子になってどんどん前進していやがる」
「あっ、でもこれ多分ロウさんやアルに出番ありますよね」
「あっ本当?あたし、あのボス的なやつを倒したい!」
「だめだ。それは俺が殺る」
だってな。
「あいつらにちょーーっとお仕置きが必要だしな。人間の力を見せてやんよ」
他のメンバーが目を逸らす。きっと俺の目がやばかったからなのだろうが、気にしない、気にしない。
そして事態は急展開を迎える。
生徒らの自己紹介、半分くらいしました…どうですか?