4:戦いの始まり
「人間に教師なんてできるわけねぇだろ」
生徒たちの中からそう言い出したのは、立派なツノを頭から生やしている体格の良い男であった。彼は獣人、《ライノー》のラルフ。おそらくこのクラスの中で一番の攻撃力を持つものである。
「会長。これはどう言うことですか。なぜ人間が教師、しかもその中のリーダーをやっているのですか?」
ラルフと同じ《ライノー》である、フリードが抗議した。2人は圧倒的な物理的火力により、このBクラスは来た者である。ちなみにAクラスへと行けなかった理由は、魔法の実力がペラペラだからである。
「なぜって、それほどの実力があるしかないだろう?」
と会長は1足す1は2、当たり前じゃん、みたいに答えた。これに対してみんなは疑問を持つしかない。
人間。獣人のように身体能力が特に優れていなく、吸血鬼のような回復能力もない。賢さの面では高いところはあるかもしれないが、妖精ほどではない。はっきり言って最弱の種族であるのだ。そんなものがなぜ実力のあるものなのか。
確かにこの国は種族が共存していける共存国家だが、思想まで共存意識は無理がある。このように、人間が戦えるわけがない、という差別意識も強い現在である。
するとやっと状況を理解したロウが口を開いた。
「えーっと…人間で悪りぃのか?ってか、前の先生…トム・ソーヤーだっけ?も人間じゃーー」
「まず、トム・リースです!あと彼はあなたと違い、妖精です。まあ、実力は間違い無くあなたよりありましたから!」
ロウの発言に腹を立てているエメラルドグリーンのさらさらな髪をした女の子は、トム先生と同じ妖精のティア。同じ種族であることもあり、彼女がトム先生を最も尊敬していると思われる。
他の生徒も、ロウの発言に文句しようとしたその瞬間、
「ウゥーーーーーーーー!!!」
校内に警報の甲高い音が鳴り響いた。どう見てもチャイムの音ではない。その音にロウは疑問を持つ。
「ん?、これはなんだ?」
「警報だぞ。この国に敵が攻め込んでくるんだよ。お前、さてはマニュアル読んでないな。生徒諸君、一旦この場で解散する。戦闘準備だ」
「マニュアル?そんなもんもらってないぞ。あの時俺はチラシしかもらってないがーー」
「そのチラシがマニュアルだ!!」
「あんな薄っぺらいものをマニュアルというか!」
そんなことをロウと会長が言い合っている間、生徒たちは準備のために去ろうとしている。
「で?俺らはどうすればーー」
「新人の雑魚人間は観察でもしてな。いても足を引っ張るだけだろうしな」
ラルフがそんなことを言った。少しだけ青筋を浮かばせながらもロウが会長を見ると、彼女はコクリとうなずいた。そして無言で言ってきた。あいつらの実力、取り敢えず見ておけ、と。
「了解、そんじゃ見といてやるよ」
「ふん、邪魔になんねぇとこで見とけ」
微妙な雰囲気のまま、教師との対面は終了した。
「やっぱり前線に出たいなぁ…」
「仕方がないだろう。そこはAクラスや防衛隊が担当だ。俺らにはまだ荷が重すぎる」
準備が終わり、現在南城門前に待機しているB組の生徒たち。Aクラスや、現役の防衛隊は現在北城門前で現れた魔物の群れや、山賊らと交戦中。Bクラスにはまだ前線に出ることは禁止されているが、実践をすることは大事であるので、今こうして魔物が万が一逆方向から来ないよう見張っているのである。とは言っても、全く現れる気配がない。
アーシアがつい漏らしてしまった小さな願望に自分達の力量を完全に理解しているテドが答えると、何も起こらないことに対して多少イライラしているラルフも口を挟んできた。
「ちっ。俺らが前線に出られねぇのはこのクラスに必要ねぇ奴らがいるからだろ。あいつとかなぁ!」
そう口を吐くラルフの視線の先には、ビクビクしているひとりの人間が。一応Bクラスの生徒なのに、その姿からは全く威厳というものを感じられなく、というより、威厳を感じられなくて当然だとラルフは考えている。
彼の名は大河。Bクラスの中で、というかこの学年の中での唯一の人間である。Bクラスに入れた理由はサポート系魔法のバラエティの多さだが、ラルフらはそれだけで入れるわけがないとは思っており、裏で何かがあったに違いないと踏んでいる。
不意に、アーシャが先生らのことで口を開いた。
「そういや、あの人間の先生はどう思う?」
「ふん、あんな雑魚を先生?うちらも舐められたもんだな」
「まったくその通りですわ!」
ラルフが罵ると、トム先生を先ほど馬鹿にされて憤りを隠せないティアもそれに乗っかる。他の生徒もロウに対する第一印象は良くなかったみたいだ。
「だけど他の先生はやばかったな」
「2人目の桜?っていう先生見た時まじ世界が変わった」
そんなことを興奮気味に話している2人は、どちらも不明であり、1人は土人形のテリー。もう1人は不死者のソレイユ。2人ともお調子者である。が、どちらともなかなか強力な種族だ。
ちなみに不明という種族だが、これは数が少ない種族や、絶滅してしまった種族を統括しているのであり、絶滅している種族のうち名前が確認されていないものもあるため、不明となっている。2人の種族がそこまで確認されていないから、不明として認定されたのだろう。
この世界の中で1番数の多い種族はダントツで獣人であり、その中でも《ライノー》《ラビット》のようにさらに細かく分類分けされている。次に多い種族は…わからない。なぜなら明確な数が確認されていないからである。よってもしかすると、獣人より生息数の多い種族がいるのかもしれない…
閑話休題。時は生徒らのトークに戻る。
「あたしはアル先生がいいなー。可愛い…」
「おい、リリス。顔がかなりまずいことになっているぞ」
リリスがうっとりし始めると、テドがすぐに現実に連れ戻した。だがみんなそれには思わず賛同してしまう。第一は獣人の中でも特に人気があり(おもにその可愛さに)、しかも今回のはなんと茶髪ショートのスラットスタイルと来た。その爆発力は…ダイナマイト何個分だろうか。とにかくすごい。
そんな中城門先の丘の上で見張りをしていた獣人、《ファルコン》のフォルスが敵を捉えた。《ファルコン》は視力がかなり高く、百メートル先のものも見れる。さらに飛行も可能。
「敵、発見。距離、約2キロ。種類、魔物のみ。数、百ほど…手段、待つ?それとも戦闘?」
生徒らも想像世界への現実逃避から帰還し、意識を切り替える。ついに魔物が現れたのだ。
「ありがとうフォルス。まあ、ここは待つのが妥当だろうかどぉ…」
「たかが魔物だろ?さっさと片付けてしまおうぜ。ついでにあの人間に現実を見せてやらんとなぁ」
「トム先生に教わった技を見せてやりますわ!」
と、みんなは意気込み、丘の上へ走っていった…だがこの先自分達がが致命的なミスを犯してしまうことに気付くものは誰もいない。
そして戦闘は始まりを迎える。
キャラクターがどんどん増えていく…全員紹介できるかな。まあ、そこもボチボチ紹介、ですね。誤字脱字が多いですが、そこは見逃してもらいたいです。