2:新たな教師との出会い
ノーウェスト王国防衛学校3号館にて、とある集まりがあった。
ノーウェスト王国はこの世界では珍しい、多種族が複数住んでいる王国である。全ての種族に対して、等しく扱われる、実に良い国である。またそれぞれの技術が集積しているので、産業、医療、農業、全てにおいてトップクラス。まさに夢の国であろう。
その分、他の種族からその技術を求められて攻められることも多い。しかしこの国には弱点があった。
種族が多いことにより、まともな防衛ができないのだ。というのも、考えも役職も違うからである。今まではなんとか食い止められていたが、この先何が起こるかはわからない。
このままではまずい、と考えた国王は、防衛軍以外に、防衛の学校を設立。そこで自分の役職や戦術、仲間との協力を学び、4年の時を過ごして防衛軍、もしくは防衛軍関連の職へとつく。
その学校の3号館で2年Bクラスが集まっていた。この学校には学年の違い以外でそれぞれの実力に沿い、上からA、B、C、そしてDクラスに分かれている。Bクラスは現在11人から構成されている。
「何でここに集められたんでしょうか?」
「…褒美かな?」
「だといいんだけどねぇ」
そんな会話をしている二人は《ラビット》のアーシアと《グリズリー》のテド。二人とも獣人である。そこへ吸血鬼のリリスが割り込む。
「新しい先生が入ってきたらしいよ。なんか、すごい奴みたいでさー」
「その情報確かなのぉ?…って、偵察のこうもりだね」
「うん!会長さんとその人達が話していたから多分そうだよ」
「あんまりそれを飛ばしていると怒られるぞ……ん?『達』って言ったよな。先生、複数人なのか?」
その時例の会長さんが入ってきた。相変わらず赤い。今日は赤いノースリーブと赤いジーパンという、かなりカジュアルな服装でやってきた。
「みんな、静粛に。君たちには2つの知らせがある。えー、まず、君たちの指導をしていたトム・リース先生だが、彼はどうしても手の離せない用事により、辞職した」
生徒達が一斉にざわめいた。最初からとんでもないことを言ってきた会長さん。トム先生が辞めた…?
トム・リース。約10年この職場で働いてきたベテランさんであり、2ヶ月ほどこのクラスの指導者であった。指導は厳しいものの、根はとても優しく、人望もあるよい先生だった。その先生が…なぜ?テドが挙手した。
「辞職の理由を聞いてもよろしいでしょうか」
「…手の離せない用事だ」
「その内容をーー」
「先生本人から内容は伏せておくように言われている。安心しろ。安否は確認している」
そんなことを言われるとテドも黙るしかない。他のものも、それ以上追求しないことにした。場が静まったことを確認し、会長は話を続ける。
「そして2つ目だが、君達は今先生がいない。よって新たな先生を連れてきた。6人な」
再度クラス内がざわめいた……6人?またまた会長さんのとんでもない発言。どう考えても多すぎる。今までにない異例の事態である。「やっぱりこういう反応だよなぁ…」と呟きながら会長は口を開く。
「まあ、文句はとりあえずあとで。順に紹介して行こう。入ってこい」
すると空いていたとびらからまず1人目が入ってきた。カジュアルな私服姿で。だが放っているオーラからはただ者ではないことがわかる。そして何より…イケメン。生徒内の女子達がヒソヒソ囁き合っている。そして男達はスタイル諸々含め嫉妬の眼差し。しかしそれは言えない。彼のただ鳴らない雰囲気によって。
「シリウスだ。種族は吸血鬼。よろしく頼む」
ガチ、イケメン。女子達が心の中で「キャー!」と叫んでいる中、次の方が入ってきた。
2人目はモデルのような超絶スタイルの良い女性である。彼女も普段感じることのないオーラを醸し出しながら礼儀正しくお辞儀をする。この時点で男達の心拍数はバクあがりしている。
「新しく貴方達の指導者となりました。桜です。種族はシリウスと同じ吸血鬼。以後、お見知り置きを」
その美貌と完璧すぎる態度に男達が一斉に鼻血を吹き出した!女子達が冷たい視線を脳筋な男らに向けている間、3人目が入ってくる。
今度の方も女性だが、なぜか服装が中学校の制服っぽい。コスプレなのか…?しかし本人も自覚しているようで顔が赤い。
「えっと…今日からあなた達の先生になります。ノルンで
す。種族は不明で、竜をやっています。よ、よろしくお願いします」
顔を真っ赤にしている姿に少し和む生徒達。場もほっこりする。しかしここで一つ重要なことに気づく。竜?
「もしかして…竜人なんですか?」
「え?あっ、はい。今は生き残りか、少ないので不明としていますが…」
アーシアの質問をあっさりと肯定するノルン。そのことに他もみんなも驚愕する。竜人は強大な力を持つ反面、他の種族に狙われ、もともと数が少ないこともあり、実際に会えることはないと思われていた。このクラスの中でも出会ったことのあるものは少ない。
そして4人目が登場。今度は天然パーマが目立つ、穏やかそうな男だ。目はとても細く、そこがまた穏やかな雰囲気を出している。
「こんにちは〜。名前は長すぎて自分も覚えていないから龍君でいいよ〜。これでもドラゴンだよ。よろしくね〜」
名前を本人が忘れるってなんだよ…というツッコミはさておき。ドラゴンが二体…生徒達は目を丸くするしかない。一体に会えるだけでも珍しいのに、二体も目の前にいる。「生きててよかった…」と呟く者も出てきた。
そして5人目が来た。どう見ても獣人である。しかし…猫耳に長い尻尾。《キティー》である。
「今日からみんなの担任になります。アルフォネアです。アルって呼んでね。よろしく!」
その姿にしばらく全員がボーッとしていた。するとそのようなことに対し疎いアルは、
「…にゃ?」
首をコテンと傾けた。再度男らが鼻血を吹き出した!だが今度は女子達は彼らを睨むことはない…なぜなら彼女らもその姿に雷のような衝撃を受けているからだ!可愛すぎるのだ!アーシアなんかは「ふぇ〜〜」と、わけのわからない声を出している。
そして最後の人は…まだ来ない。生徒らもざわめく。会長ははぁとため息をついた。
「ロウ!早くこい。リーダーであるお前が来なくてどうする?」
「ヘイヘイ。わーかってるわーかってる」
する遠くから入ってきたのは1人の男であった。シャツにジーパンというラフな格好で特徴といえば少しダルそうな顔だろうか。生徒らは彼から何も感じなかった、いや、感じることができなかった。そして疑問に思った。「彼がリーダー?」そしてその男はこう言う。
「お前らの先生になった、ロウだ。種族は人間…以上。」
生徒たちは何も言えなかった。驚きもしなかった。ただ唖然としていた。その理由は明白。
この世界で人間が最弱であったから。
はい、キャラクターを増やして見ました。こんな感じで頑張りまーす。