1:とんでもない提案をされたんだが…
とあるファストフード店で、俺ら六人ははある女性を待っていた。
時刻は12時を回った辺。お客さんでかなり混んでいる。大盛況だな、こりゃ。流石ファストフード店と言ったところか。と、そこまではいいんだが…
「なんでこんなところで待たなきゃいけないんだ…?」
そう、今、大の大人が六人、ファストフード店の端っこで、何も頼まずただ座っているのである。それもあってかなり注目されている。一応この面子、美人、イケメンがいるからなぁ。俺?良い方だ、よ…うん。
まあ、一人だけテリヤキバーガーのセットを10個頼んで、それらを黙々と食べ続けている奴がいるので、それに注目しているものも多いが…
食っている本人、白髪天然パーマがトレードマークの龍くんに一言申してみる。
「お前、何1人で黙々食ってるんだよ。てか相変わらずそんなに食べてよく太らねぇな」
「全くだ。俺でも7個くらいが限界だな」
「いや、シリウスさん、それでも太りますよ…」
「このような場で大食いなど、自重するべきです」
「うまっ…食べた分のカロリーはアルくんに送ってるから大丈夫だよ〜」
「人の話を…」
「えーーー!?そんなの聞いてないよ!ロウ、私、そんなに太った?太ってないよね?ないよね!?」
「んな訳あるか。変わってねぇーよ」
「はぁ…少しは人の話を聞いてください」
愉快な連中だなーとみんなに思われているんだろうな…この会話もボリュームダウンなどされていないし。そもそも待ち合わせを何でここにしたのだろうか。こうなる事くらい、あいつも分かってただろうに。
そんなこんなしているうちに、約束の時間まであと5分きった。約束の時間になっていくにつれて、口数が少なくなる。よくあることだ。今までやっていたことがただ誰かがボケてそれにみんなが突っ込むスタイルだから、あまり静かになった印象はないけどな。ただひたすら、龍くんのバーガーをムシャムシャ食べる音が響く…うるせえな。
この微妙な空気を切るように、桜が口を開いた。
「それより…ここへくる方はどうやらあなたの知り合いのようですが」
「ああ、昔の仕事仲間ってとこだな。かなり(というかめちゃくちゃ)変わってる奴だが、実力は申し分ない。(多分)信頼もできるから安心しな」
「ほう…おまえが認めるほどだとは。というか知り合いがいたのか。あの一匹狼とも呼ばれたおまえに…」
「その名前はマジでやめろ。頭粉砕するぞ。」
「シリウスさんを粉砕しても、彼は吸血鬼。頭復活するので無駄ですよ。あとその(痛いかつダサい)名前も自業自得ですよ。そして先ほどのセリフ、心の声かなり漏れてましたよ」
「グッ…反論出来ねぇ……あと心読むな」
赤髪で癖っ毛が上に生えている、ノルンのツッコミが炸裂。前もっていっておくが、彼女はこれからも恐らく死ぬまで永遠に突っ込むことをやめないキャラだ。覚えておけ。
もちろん、彼女にその自覚はない。
そしてシリウスの言っていたあの痛さマックスのもう一つの名前。確かにあれは俺の自重のない行動によってついちゃったんだけどよ…もう嫌だ。そんなことを考えていたら、
「相変わらず変わっていないな。ロウ」
ついにやってきた。だがその姿は異彩を放っていた。というのも全身赤色なのだ。赤色のワンピースに赤色のハイソックス、赤色の靴。腰あたりまで長い赤髪ツインテールのお姉さん。
もっと言わせてもらうと、両手赤色の手袋を着用しており、その右手には赤いトートバック!完全なる赤色お嬢さん!あーやべー、レッドカーペットまで見えてる気がする。
目も赤いのでは、と思ったそこの君!残念、瞳はコバルトブルーです。あくまでも服装が赤だ。
「あんたも相変わらずだな、会長さん」
ふっ、と会長は笑い席についた。すでに会ったことのある俺、龍くん、そしてノルンはなれているが、初対面である他の三人はその姿に目が点になっている。もちろん周りの客も、だ。
…今回くらいまともな格好で来いよ。
「ロウ、この方が…?」
「ああ。彼女が俺の仕事仲間であった会長さんだ」
「ロウが世話になっているな。名前は都合上『会長』としといてくれ。よろしく頼むよ。龍くんたちも久しぶりだな。」
「久しぶりだねぇー」
「そちらは今でも元気そうですね。ところで、今日はどうしてこの場所で待ち合わせですか?何か重要な理由でも…?」
ノルンが俺が今一番疑問になっていることについて質問した。そう、わざわざなぜこんなところで会う必要があったのか。
「いや、ただうちから近いから」
「は?ざけんなよ!考えた時間返せや!」
「知らないよそんなこと。ロウはやっぱりこういうとこ細かいんだよねぇー。そういうとこ、女に嫌われるぞー」
「こんなとこでずっと待っている気持ちも考えてみろよ!あと、俺にはアルがいるからな」
「ロウ…サイテー、にゃん」
「掌返しがあっさりと決まったね〜」
「…何でこうもいじられるのだろうか」
てか、会長さん絶対ここの近くに家ねぇだろ。まあ、軽口を叩き合ったところで、会長さんは本題に入った。
「さて、今回私がここにきた理由はもちろん遊びに来たからではない。君たちに提案があるからだ」
この一声によって一気に場の空気が一転する。アル達もこの一声で思わず固唾を飲む。相変わらずこの女の通常モードと仕事モードのギャップが凄まじい。何というか、キリッとしてるんだよな。
今度は何なのかなぁ。今まで会長さんから幾度の依頼を受け、数え切れないほどの茶番に巻き込まれた。だが、どれもこれも今となってはとてもためになり、次へのステップへ導かれるものばかりだ。彼女の信頼はそこにある。
しかし出てきた答えはあまりにも意外で、それと同時にアホなものだった。
「君たち、私の今の職場で教師をやらないかい?」
「「「「「「………は?」」」」」」
初めて俺らは綺麗にはもった。あ、これはあかん奴だ…
「死」。それは誰もが決して避けることができない、人生に一度しか訪れないこと。
そして同時にその時に感じることは当日になるまで誰も分からない。死人からその感覚を教わりたいものだが、それは出来ない。
死は恐ろしい。それが訪れる時、人々はそれまでの記憶や思い出、そしてこれからへの希望を失うのだから。
しかし同時に死は尊い。自分の人生に終わりがあることで、その人生がより一層面白くなる。
予め限られた時間の中で、どれだけ沢山笑い、怒り、泣き、そしてまた笑うことが出来るか。人それぞれ違い、実に面白いものだ。
ここで問いたい。「死」は我々に必要か、否か。
もし、君たちに「死」のリミッターが無くなったら。永遠の命を手に入れることができたのなら。君は喜び、歓喜するか。それとも悲しみ絶望するか。だがそれ以前に、
決してこない「死」を受け入れることが出来るだろうか。
話は変わるが、一つの世界がここにある。
ここは、人間、獣人、吸血鬼、さらに神など色々な種族がいる、少々ぶっ飛んだ世界。
しかしさまざまな種がいることにより、それぞれの思想がぶつかり合い、他のものへの思考の違いは激しい。
それ故、数多の戦争や虐殺、蹂躙が繰り返され、強者と弱者がはっきりと区別される、弱肉強食の時代になっていた。
この世界はいずれ壊れることは目に見えている。だがその世界の住人は気づくはずもない。彼らがその世界の主人公であり、彼らの「死」は世界の「死」よりも早く訪れるからだ。
そのような中、たった一人の人間がこの世界の、生きる者の常識をくるりと覆してしまう。幾度の関わりや事件を通じて。
もっとも、本人はめんどいことはなるべく避け、マイペースに生きているだけなのだが…
そこはまあ、神というか、運というか、主人公補正というか、そういうものからは逃げられないものである。
さて、この人の「死」は一体どのようなものなのか。
とりあえず初めて見ました。キャラの説明や世界観はこれから投稿していく作品にボチボチ描いて行こうかなと思っています。語彙力皆無ですが、よろしくお願いします。