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魂(コン)からのお願い  作者: 早秋
第1章
28/134

(28)依頼遂行中

 カイトの魔法習得は、まず基礎の基礎から始まった。

 そもそもカイトは、魔法を全く使えないのだからそれも当然だ。

 その基礎の基礎というのは、魔力を感じ取るところからである。

 どこかで聞いたことがあるような話だとカイトは思っていたが、懸命にもそれを口にすることはなかった。

 アイリスはある程度海人の持つ知識を知っているが、そのやり取りをしても意味がないと考えたためである。

 

 それはそれとして、魔力を感じ取る訓練がすぐに始まったわけだが、どこかの主人公のように教わってすぐに感じ取れるようになるわけでもなかった。

 大人としての経験と知識の記憶があるから何とかなるかと考えていたカイトだったが、すぐにそこまで甘くはないと思い知らされたというわけだ。

 勿論そんなことでへこたれるわけはなく、カイトは地道に言われたとおりに魔力を感じ取れるように色々と工夫をした。

 そして、アイリスから概要を教わった翌日になって、ようやくカイトは魔力を感じ取れるようになっていた。


「――――これでも十分早いと思いますが?」

「そうなんだ。それはよかった」

 多少の焦りを感じていたカイトだったが、アイリスからそう言われて内心でホッと胸を撫で下ろしていた。

「それはともかく、魔力を感じ取れるようになったので、さっそく魔法を教えます……と、言いたいところですが、しばらくは今の訓練を続けてもらってもいいでしょうか?」

「それは先生のいうことを聞くけれど、基礎が大事ってことかな?」

「そうですね。それに、もうすぐ次の港に入るからというのもあります」

「ああ、そういやそうか」

 当たり前だが、カイトがアイリスから魔法を教わっている間にも、セプテン号は海原を進んでいた。

 その結果、後数時間で次の目的地に着くところまで来ているのだ。

 

 もっとも、カイトは次の港――というよりも、全ての依頼が終わるまで港に降りるつもりはない。

 これは既にガイルと話し合ったことで、もし降りるにしても例の笛を使ってセプテン号の持ち主だということを知られないようにする予定だ。

 勿論それは、カイトの身の安全を考えてのことである。

 今受けている依頼を終えてセイルポートに戻るまでは次の新しい依頼を受ける予定もないし、貿易をするにしても今のところ先立つものがないのでどうしようもない。

 そう考えると、ガイルが荷物の受け渡しをきちんと確認する以外には、観光以外に特にすることもないのである。

 

 アイリスの提案を受け入れたカイトは、セプテン号の中か神域で魔法の訓練をすることにした。

 それ以外にも蚕の様子を見たり、船長室にあるパソコンで船の設計をしたりと、意外に忙しい。

 船を降りて観光をするくらいなら、それらを行っていたほうがいいというのが、カイトの出した結論だ。

 その結果、カイトは次の港では降りないということになったのである。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 予定通りにエイリカの港に近づいたセプテン号だったが、少しの間沖で待たされることになった。

 セイルポートのギルドマスターからの連絡は入っていたのだが、本当にこれだけの短期間で来るとは思っていなかったエイリカのギルドマスターが、セプテン号が入れる埠頭を空けていなかったのだ。

 といっても、もともとすぐに出発する予定だったらしく、ギリギリでかち合ってしまったのだが。

 それでもギルド側の不手際であることには違いなく、交渉することになったガイルに対して、エイリカのギルドマスターは終始低姿勢で話をしていたらしい。

 その姿勢の裏には、セプテン号のような大型の船で、セイルポート―エイリカ間を五日も掛からずに着くことができたということがある。

 それだけの船であれば、大抵の依頼をこなせることができるので、ギルドに見切りを付けられたくないと考えるのは当然のことである。

 

 とにかく、セイルポートで受けた五つの依頼のうち二つをエイリカで済ませたセプテン号は、入港してから二日後には出航した。

 その二日間、ガイルは予定通りに港に降りて、情報収集も含めて街の中を歩き回っていた。

 その間もギルドの関係者から、どうにかカイトと繋ぎを取ってくれないかと言われていたらしい。

 その対応が予想できていたガイルは、その話をのらりくらりと躱しつつ、荷下ろしも含めてギルド側と対応することになった。

 その結果、カイトはエイリカの者とは特に話をすることなく、港を出ることになったのであった。

 

「――――それにしても、本当によかったのか?」

 エイリカの港を出てしばらくして、船の進路方向を確認していたガイルが、横に立つカイトにそう聞いてきた。

「エイリカの港に降りなかったこと? それだったら特に問題ない。今降りても問題しか起きないからな」

「それには俺も同意するが、多少新しい町を楽しんでもよかったと思うが?」

 船乗りというのは、大抵次の停泊地に着くと酒場なりで陸地を楽しむものだ。

 ガイルはその理由を十分に理解しているので、カイトのことを心配しているのだ。

 

 そんなガイルに、カイトは苦笑しながら首を左右に振った。

「本当に、気にしなくていい。セイルポート―エイリカ間は、重要航路の一つだからまたいつかは来ることになるから」

 北大陸と南大陸を結んでいるセイルポート―エイリカ航路は、海運航路の中でも重要航路の一つである。

 同じように北大陸と南大陸を結んでいる航路はあるが、セイルポートを拠点にする場合は外せない航路の一つといってもいい。

 それを考えれば、一度くらいエイリカに降りなくてもいずれは来ることになるというカイトの言葉は、間違ってはいない。

「そうか。それならいいが……」

 そう言ってしばらく考えるような表情になっていたガイルだったが、やがて首を左右に振った。

 

 そして、何かを思い出したような顔になってカイトを見た。

「そういえば、俺の航路計算はどうだった?」

「ああ、それは――――」

 ガイルがエイリカの港に降りている間、カイトはガイルが航海中に記録していた航路のチェックを行っていた。

 これだけの短い期間ですべての航海術を教えるなんてことはできていないが、ある程度のことはできるようになっている。

 航路の記録もその一つで、ガイルはしっかりと航海中に記録を取っていたのだ。

 

 ガイルが取っていた記録の中で、ずれているところを一つ一つ指摘していったカイトは、最後にこう付け加えた。

「――色々と細かい点は間違っているが、基本的な考え方は間違っていない。これであれば、近いうちに完全に任せられるようになると思う」

「本当か? それはよかった」

 カイトの言葉に、ガイルは心底安堵した表情で頷いた。

 カイトから教わったことは、ガイルの知っていた方法とはだいぶ違っていて、本当に大丈夫なのかと不安を持っていたのだ。

 それが、カイトから御墨付きを得たことで、ようやく安心できたというわけだ。

 勿論、今の結果に満足することはなく、これからもきちんと技術を身に着けるつもりでいるのだが。

 

 カイトがガイルの教えた航海術は、外洋を航海する上では必須の技術である。

 今のところ内海しか航海していないセプテン号だが、いずれは外洋にも進出する予定だ。

 その際に、今教わっている航海術があるのとないのとでは全く違ったものになると、現在セプテン号に乗っている中ではガイルが一番感じているのだ。

 何しろ、カイトやアイリスなどの天使たちは、最初から外洋を航海するための航海術を知って運用を行っている。

 この世界にある航海術を使って実際に航海をしていたのはガイルだけで、それゆえに新しい航海術が有用なものであると理解できているのである。

ガイルが成長すると同時に、カイトも色々と変わっています。(言葉遣い・態度含めて)

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