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俺の伯爵様  作者: 華々
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第二話 ドーランド伯爵家!?


×第2章 ドーランド伯爵家×




冬の寒い中、学校の外にトランクを持って追い出されたスコットルは、学校の下のすぐ近くにある町へ来ていた。

「プライセントタウン」。

この町はスコットルと3人の悪友同士で学校の休暇に来ていた町である。


「これからどうしよう・・・。」


スコットルはプライセントタウンの中央にある大きな噴水の縁に腰を下ろした。

周りでは小さな子供達が遊び回り、大人達はこの噴水の水を使って洗濯をしていた。

スコットルはため息をついて、昨日の夜のことを思い出す。








「スコットル。んで、どんな話してたんだ?」


寮の寝室で、ボンズとジェームズがわくわくしながら聞いてきた。

ボードはというと・・・もう先に寝ていて、2つ奥のベッドからイビキが聞こえていた。


「俺さ・・・卒業するんだ。」


「「・・・・はぁ?」」


ボンズとジェームズは首をひねった。


「卒業?なんで?」


「先生が俺に教えることがもうないらしくてさ・・・。」


「卒業するまで後2年残ってるんだぞ?」


「うん、そうなんだけどさ・・・。」


その場のテンションが一気に急降下した。

ジェームズはクエスチョンマークでいっぱいで、ボンズはただあんぐりと口を開けていた。


「じゃあ、もう俺たち会えないってこと?」


「いや、一応たまに学校に戻ってこようかと思う。それに手紙も書けるし。」


「仕事はどうするんだよ?」


「えっと・・・、まぁなんとか探してみるよ。」


「ス、スコットル〜。」


その日の夜は1人を除いて、3人で泣いた。

あれだけ泣いたのは何年ぶりだろう。










足にドンっと衝撃がきて、スコットルは目が覚めた。

足下には小さなボールが転がっている。


「ごめんなさい!」


男の子が遠くからやって来て、スコットルに謝った。


「いや、いいよ。」


「あ、あのさお兄ちゃんって、旅の人?」


男のがスコットルのトランクを見て言った。


「あ〜、そうなっちゃうのかな?うん、そうかも。実は昨日までは寝るところも食べるところもあって、けっこういい生活してたんだけどさ、今日からは浪人っていうか・・・なんていうか・・・。」


「浪人?」


「うん、そうなんだよね。とりあえず仕事探さなくちゃいけないんだけど・・・。」


すると男の子は二カっと笑って、スコットルの手を引っ張った。


「お兄ちゃん、知らないの?町の掲示板・・・御触書とか書いてあるところなんだけど、そこに

今日新しい紙が貼ってあってさ、ドーランド伯爵の家のメイドや執事を募集する公告が張ってあったんだよ!」


「本当か!?」


「うん!!」


スコットルは男の子に連れられて、掲示板のところへ行った。

そこにはたくさんの老若男女がひしめき合っていて、遠くからしか見ることが出来なかったが、確かにそこには書いてあった。


「本当だぁ、夢みたいだ。」


「でしょ、お兄ちゃん?でも早く伯爵の家に行かないと!」


「え?」


「定員オーバーになっちゃう!」


男の子が指を指した先には、小さく定員数が書かれてあった。


「んっと・・・20人?」


「違うよ、200人だよ。この定員数に気づいて早く行った人達がいるんだ。だから、おにいちゃんも・・・。」


「なんでお前、そんなに詳しいんだ?」


「僕は目がいいし、それに・・・僕のお姉ちゃんもその中の1人なんだ。」


「・・・・。」











「ちょ、ちょっと待っ!」


「お兄ちゃん、早く!」


2人は藪の中を突っ走っていた。


「ここどう見ても道じゃねぇぞ!?」


「こっちのほうが近道なんだよ!」


そうして2人は走って走って、伯爵の家の門にいきなり出た。


「うぉあ!?」


スコットルは止まれずに門の中まで走り、石につまずいた。


「これで、終了です。」


執事が一言発すると、門はぴしゃりと閉まった。

スコットルが後ろを振り返ると、男の子がガッツポーズをしていた。


「ありがとな。」


スコットルは手を振った。













「え〜、今から振り分けをしたいと思います。ここから、ここまでが・・・・・」


まず屋敷に入る前にどこの担当になるか振り分けされ、結果、スコットルは庭掃除班にされた。


「・・・であるから、各自寮に戻り15分後に各自の持ち場に戻るように!以上!!」


そしてぞろぞろと、屋敷の中に入っていった。

スコットルは最後に来たために後から入る形となってしまい、いろんな人を観察していた。


本当にいろんな人がいるんだな・・・。でも若い人ばっかりだ。中にはまだ学校に行ってそうな歳の人までいる。


「あなたも庭掃除に振り分けられた人ですよね?」


「え?」


スコットルの横にはとてもかわいらしい、亜麻色の髪をした女性が立っていた。


「はい。あなたもですか?」


「はい。私、マレットといいます。よろしくお願いします。」


マレットはふわっと花のように笑った。

とたんに、スコットルの顔も真っ赤になる。


「俺はスコットルです。」


それにしても・・・・


「かわいい。」


「え?」


「あ、い、いえ。すみません。えっと、可愛らしい名前だなと思って。」


「まぁ。」


マレットの顔も真っ赤になり、そっぽ向いてしまった。

はたから見れば、初々しい恋人同士である。

が・・・、恋愛には障害もつきものでさっそく障害物がやってきた。


「へぇ、君マレットっていうんですか。可愛いね。」


2人はびっくりして、飛び退いた。

そこには、背が高くて黒髪の美形君が立っていた。


「え、あの・・・。」


美形君はマレットの手の甲にキスをした。


「俺はニークって名前なんです。後で、お茶でもしませんか?」


マレットはさっきよりももっと真っ赤になって、頭から湯気が出ている。

スコットルはムッとなって、ニークとマレットの間に割って入った。


「お茶なら俺、大好きです。特にローズティーなんか。マレットと俺はこれから仕事があるんです。その後でなら、俺がつきあいますよ。」


「・・・へぇ。」


ニークはスコットルを見、フッと笑うと首を振った。


「まぁ、いいさ。時間はいっぱいあることだし。」


ニートはくるんと向きを変えて、屋敷の中へ入っていった。

そして、そういえば・・・とマレットが思い出す。


「スコットルさん!早く寮に行かないと!!」


「あ!!」


さっきまで人の多かった屋敷の入り口には誰もおらず、2人だけだった。

そして急いで2人は階段を駆け上がっていく。


スコットルはまだ知らなかった。

あのニークがこれから彼の一生のパートナーになろうとは。

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