第五話 一緒に寝てもいい?
春分も過ぎた、ある日の夜の事。
・・・
「ううっ、さむっ」
パジャマに着替える為に、上着を脱いだら。
肌が外気に当たり、寒さに体を震わせた。
一応、寒さのピークは過ぎたものの、まだまだ寒い。
もう少ししたら、桜が咲く頃だから。
それまでには、少しは暖かくなって欲しいなあ。
「(コンコン)」
そんな事をつらつら思いながら、寝る準備をしていたら。
いきなり、ノックの音が聞こえた。
「(ガシャッ)」
「(モジモジ・・・)」
この時間に僕の部屋に来るのは、姉さんしか居ないので、入るように言うと。
案の定、姉さんが何だかモジモジした様子で入ってきた。
姉さんは、ピンク地にクマ柄の可愛らしいパジャマを着ており。
部屋に入りながら、上目づかいで、甘えるように僕を見詰める。
「・・・あのねケンちゃん。
・・・今日も良いかなぁ・・・」
部屋に入り、言い辛そうにしていた姉さんが。
少し間をおいてから、恥ずかしそうに、そう呟いた。
********
「・・・暖かい」
姉さんが、力が抜けきった声を出す。
今、僕は、姉さんと一緒にベッドの中で寝ている。
姉さんは冷え性な為、冬はナカナカ寝付けないらしい。
なので冬は僕を、湯たんぽ兼抱き枕とする事がある。
出会って最初の頃は、僕が姉さんの布団で寝ていた事もあったが。
大きくなるに従い、そんなことも無くなって行き。
姉さんが僕に抱き付く様になってからは、今度は、姉さんの方が来るようになった。
しかし流石に、思春期の男女が一緒に寝るのは。
別の意味を持っている場合もあるので、チョット恥ずかしい。
特に僕達の場合は、血の繋がりが無いので。
そんな事をつい考えてしまう。
現に、母さんからは軽く嗜められてし。
姉さんも、それを意識してか、少し恥ずかしそうにしている。
でも、寒いのが我慢できないみたいで。
恥ずかしがりながらも、僕と一緒に寝ていた。
一方の僕の方も、魅力的な女の子と、一つの布団で寝る事にドキドキしていたが。
出来る限り、それには意識しない様にしていたのある。
「暖かくて、気持ち良い・・・」
姉さんは、布団に完全に埋まった状態で。
仰向けに寝た、僕の右脇に体を入れていて。
その体勢でまま、頭を僕の胸に乗せ。
両脚も絡ませ、特に冷たい足先を僕の右足にくっつけている。
くっついた、姉さんの足先がとても冷たく。
こんなに冷たいのなら、寝られないは当然だろうと思う。
「(さすりさすりさすり)」
姉さんの背中を温めるよう、擦ってやる。
頭はヘアバンドで固定されているので、背中の方を擦ってやった。
「(ゴソゴソゴソ・・・)」
目の前で膨らんだ、布団の山が揺れる。
感触からすると、どうやら僕の胸に頬ずりしているようだ。
いつも満足した状態になると、姉さんは頬ずりをするので。
しばらくの間、姉さんの背中を擦ってやった。
・・・
「すーー・・・、すーー・・・」
背中を擦るうちに、姉さんは静かな寝息を立て始めた。
もう、これで大丈夫だろう。
「なで・・・、なで・・・」
でも僕は姉さんの背中を擦るのを、撫でるに変えたのだが。
寝た後も、それを止めなかった。
柔くて、暖かい姉さん。
そんな姉さんの感触を、少しでも長く味わいたかった。
「(・・・ふぁ)」
柔らかい姉さん撫でている内に、僕も何だか眠くなってきた。
それでは、僕もそろそろ寝ようとしよう。
隣りにある、暖かくて柔らかい存在を感じながら。
次第に僕は、深い眠りへと沈んでいったである。