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第十一話 浜辺にて



 夏、真っ只中の、8月上旬のある日の事。




 「ザーーーーーッ・・・・・・、ザーーーーーッ・・・・・・」


 「(ガヤガヤガヤ・・・)」




 遠くから波の音と、(かす)かな歓声が聞こえてくる。




 「ゴメンね、私に付き合ってくれて・・・」


 「良いよ、そんな事」




 今、僕と姉さんは、浜辺のビーチパラソル中で休憩していて。

僕の隣に座る姉さんが、申し訳無さそうに謝った。




 「それより、脚の方が大丈夫なの?」


 「うん、取り()えずは落ち着いたから」




 なぜ今、そこに居るのかと言えば。

姉さんが、泳いでる途中で脚を()ってしまったからである。




 ・・・




 この日、僕達は海に泳ぎにきた。


 それは数日前、姉さんが夏季講習で学校に来ていた時。

姉さんの友達グループの中で、男子と一緒に泳ごうと言う話が上がったそうだ。


 姉さん自体は気乗りしなかったのだが、結局は押し切られたんだとか。


 しかし、そこは年頃の女の子達だから。

やっぱり、乱暴だとか下心のある、変な男と一緒には成りたくないと言うので。

一緒に行く男子を選んだみたいである。


 そうやって厳選された中に、なぜか僕が入っていた。


 僕は年下なのだが、どう言う訳だか、そう言う風になっていた。


 恐らく、姉さんを誘い出すのが目的だろう。

それもあってか、姉さんも結局、参加する事にした様である。


 そう言う訳で、僕は姉さんの誘いを受けて、一緒に海に来ていた。


 ちなみに、他の誘われた男子は。

(さわ)やか系のイケメンの先輩達で、思ったより僕と馬が合ったが。

結局、年下は僕一人だけだった。




 「それに、私を運んでくれてありがとう・・・」




 姉さんが顔を赤くして、(ささや)くようにしてお礼を言う。


 そんな姉さんを見て、僕もつられて顔が熱くなっていく。


 なぜ姉さんが、そんな反応をしたかと言えば。

姉さんが脚が()った時、僕が姉さんをお姫様抱っこしながら、ここに運んだからである。


 とうぜん周囲からは。

好奇心と嫉妬が入り混じった視線が、僕達に集まった。


 近くでの、先輩達やお姉様方の(はや)す言葉と、生暖かい視線。

遠くからの、”爆発しろ!”と言う嫉妬丸出しの視線が、僕に突き刺さる。


 それらの視線は、結局、ここに着いて姉さんを下ろすまで続いた。




 「そ、そう言えば、その水着とても似合っているね」


 「えっ!」




 あの、何とも言えない気まずさに思い出し。

僕は、慌てて話題を()らせる。




 「ホントに?」


 「うん、とても可愛いよ」


 「うふふっ、ありがとう」




 姉さんの水着は、フリルがあしらわれた青いワンピースで。

とても可愛く、露出もそれほど多くない。


 確かに可愛いのだが、如何(いかん)せん、姉さんは胸がそれなりにある上。

腰も細く、お尻も丸いので、とてもスタイルが良い。


 何しろ、街を歩くとナンパや、スカウトに捕まるのが多いのは。

その所為(せい)でもある。


 なので水着を着ると、どうしても体のラインがモロに出て。

そのスタイルを(さら)す事となるので。

一緒に来ていた先輩方の中には、姉さんを見て、変に前かがみになる人もいた。




 「良かった。この水着は、ケンちゃんの為に買ったんだよ♡」


 「そ、そう・・・」




 姉さんが嬉しそうな笑顔で、そう言った。


 可愛い姉さんが笑うと、破壊力抜群だ。


 可愛い系の美人で、スタイルの良い姉さんだが。

やっぱり男が苦手で、ずっと僕の側を離れない。


 しかし、何も知らない人間がこの光景を見れば。

多分、スタイルの良い美人を、隣に(はべ)らせている様に見えるだろうから。

それが、先程の嫉妬の受ける原因ともなっていた。




 「ねえ、ケンちゃん。

 私ホント言うと、余りここに来るの気が進まなかったの。

 でも、ケンちゃんが来るって言うから、来たんだけど。

 ホント、来て良かった」



 遠くの水平線を見ながら、そう言う姉さん。




 「懐かしいなあ。昔は家族で海水浴に行ってたけど。

 何年ぶりかな・・・」


 「ホントだね」




 昔を懐かしむ姉さんに、同意する言葉返しつつ。

僕は、姉さんと一緒に向こう側にある、水平線を(なが)める。


 その後、二人は無言になったが。

会話も必要に無いくらい、互いの間に、マッタリとした空気が流れていた。




 *********




 「(恥ずかしいなぁ・・・)」




 私は心の中で、恥ずかしがっていた。


 なぜなら、ケンちゃんからお姫様抱っこされたからである。


 私が泳いでいる最中、脚が()って溺れかけた所。

ケンちゃんが急いで来て、私を抱き上げた。


 私を運んでいる途中で、一緒に来ていた()達が。

私達の周りで、"キャッキャッ"と(はや)し立てていた




 「(ケンちゃんに迷惑かけて申し訳ないよ〜)」




 同時に、ケンちゃんに迷惑かけてしまった事に、少し落ち込んでいたが。


 そんな思いと共に、ケンちゃんに抱き上げられた嬉しさも感じていた。




 「(ケンちゃんに、お姫様抱っこされちゃった♡)」




 まるで私を、軽い荷物をその辺に運ぶくらいに、気軽に持ち上げていた。


 それは、空を浮かぶようにフワフワした感覚で。

落ちないようにシッカリとしがみ付けば、ケンちゃんの熱い肌・・・。


 イヤだ、何にHな事を考えていたの!


 ケンちゃんにお礼を言ったのだけど、

そんな変な事を思っていたので、何だかボソボソした声になってしまった。


 でも、その直後。

ケンちゃんの言葉を聞いて、私は嬉しくなる。




 「(この水着、似合ってるって♡)」




 良かった。この水着、わざわざケンちゃんの為に選んだ。


 チョット、他の男の子の視線が痛いんだけど。

これ、そんなに露出が高い訳でも無いのに、どうして?


 最初、海に行くのに、余り乗り気がしなかったんだけど。

ケンちゃんも連れて行く事になって、仕方なく了承した。


 最も、私を誘い出すダシと言うだけでなく。

ケンちゃん、その物を狙っている()もいるから。

その()達から、ケンちゃんを守る為。

私は、すっとケンちゃんにへばり付いていた。


 だけど結果的に、怪我(けが)の功名とは言え。

ケンちゃんにお姫様抱っこされたし。


 こうして、仲良く隣にいる事が出来る。


 海に来て良かった〜。

ケンちゃんにお姫様抱っこされし、水着を()められたし。


 そんな浮かれた気分を悟られないよう。

私は、ケンちゃんに昔の話をしながら、遠くに視線を向けている。 


 こうして私は、上機嫌のまま。

ケンちゃんの隣に座り、一緒に海を眺めていたのだった。


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この作品同様、姉弟のイチャイチャした作品です。
手をつなぎながら
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