第十話 昔みたいに
梅雨も明け、本格的な暑さが始まった頃。
「(コンコンコン)」
「入って良いよ〜」
ベッドの上で壁にもたれ、エアコンで涼んでいると。
ドアから、ノックの音かした。
まあ、間違いなく姉さんだと思い。
僕は返事を返す。
「(ガシャ)」
「あれ、何か用?」
「ううん、特には用って事じゃないんだけど。
・・・ねえ、ケンちゃん、この部屋少し寒くない?」
「そお? 僕には丁度いいんだけど」
部屋に入った姉さんが、そう言って少し震え出す。
僕には丁度いい温度だけど、これが、男女の違いなのかな。
最も、姉さんは冷え性ぎみと言うのもあり。
そう言った部分も、拍車をかけているのだろう。
だから姉さんは今、シンプルな部屋着用の青いワンピース姿で。
露出も、夏の割には少なかった。
流石に外に出る時の服装は、肌の面積が増える物になるけど。
その分、冷房が利いた室内に入った時が、大変らしい。
「ねえ、ケンちゃん。チョット良い?」
「ん? な〜に〜」
ベッドの上に乗った姉さんが、膝立ちで僕ににじり寄り。
姉さんの言葉に僕は、何気なく壁から体を離した。
「えいっ!」
「(ギュッ)」
「(えっ!)」
膝立ちで近寄った姉さんが、イキナリ僕の頭を抱き締める。
「何だか少し寒いから、しばらくこうしても良いかな?」
「ふぐ、うぐ、うぐ」
姉さんが僕の頭を抱いたまま、そんな事を言うが。
僕は、姉さんの胸に顔を押さえ付けられて、喋ることが出来ない。
「あっ、ゴメン。苦しかった?」
「・・・はあ、・・・はあ」
僕が窒息していたのに気付いた姉さんが、腕の力を緩め。
何とか呼吸出来る空間が出来た僕は、荒い息を吐いていた。
姉さんは、巨乳と言うほどでは無いにしろ。
それなりに胸があるので、押さえ付けられると呼吸が出来なくなる。
「ほら、ほら。ケンちゃんも、腕を廻して」
そう言って僕の腕を取り、自分の背中に持って行く。
寒いと言うだけあって、姉さんの体は何だかヒンヤリしている。
「ん〜、温かい〜」
僕の腕が、姉さんを抱き返すと。
背中に廻った温かさに、満足そうな言葉を出した。
・・・
「(なで・・・、なで・・・)」
それからしばらく、姉さんが僕の頭を抱きながら、背中を撫で。
僕は、そんな姉さん成すがままになっていた。
昔はよく僕は、姉さんにこうして甘えていたのだけど。
しかし、姉さんの胸が膨らみ始めた頃。
何だか恥ずかしくなり、だんだん甘えなくなっていった。
「ケンちゃん、気持ち良い?」
「・・・うん、・・・気持ち良いよぉ、おねえちゃん」
「クスクスクス」
姉さんが撫でながら、僕に尋ねたので。
余りの気持ち良さに、僕がつい、そう答えてしまう。
僕の言葉を聞いて、姉さんが可笑しそうに笑った。
昔のように、抱き締めながら僕を撫でる姉さん。
しかし、あの頃とは全く異なり。
僕の顔は、温かく柔らかい物に覆われている。
柔らかさと温かさ、キャラメルに似た甘い匂い。
そして背中の滑る、なめらかな手の感触を感じているいる内に。
僕の意識は薄らいで行き、思わず昔の様に姉さんを呼んでいたのだ。
「懐かしいね、何だか昔に戻ったみたい」
しみじみ言いながら、僕を抱く腕に再び力を込めるが。
加減をしてくれていたので、苦しくはなかった。
こうして僕は、姉さんの柔らかさに包まれながら。
昔みたいに、甘えていたのだった。
*********
ケンちゃんの部屋に遊びに来たのだけど。
チョット肌寒かった上、丁度、いい位置にケンちゃんの頭があったから。
何となく思い付きで、ケンちゃんの頭を抱いたら。
こんな状態になっていた。
確かに、背中に廻ったケンちゃんの腕は温かったが。
それと同時に、この状態が懐かしくなって、彼の背中を撫でていた。
「ケンちゃん、気持ち良い?」
「・・・うん、・・・気持ち良いよぉ、おねえちゃん」
気持ち良さそうな声で、私に答えるケンちゃん。
私の呼び方も、昔の甘えていた頃に、いつの間にか戻っている。
そんなケンちゃんを見て、何だか可笑しくなってしまった。
そう、昔はよくこんな風によく甘えていたよね。
でも、私の胸が膨らみだした頃から、だんだん避けるようになった。
だから私は、ワザとケンちゃんの顔に、胸に押し付けてみたんだけど。
効果は、私の予想以上だった。
”どお? ケンちゃん、おねえちゃんのオッパイは。
これでもクラスでは、大きい方なんだぞ”
私は内心で、そう言ってケンちゃんに自慢する。
やっぱりケンちゃんも、男の子なんだね〜。
こんなに、オッパイが好きだなんて。
「懐かしいね、何だか昔に戻ったみたい」
私に甘えるケンちゃんが懐かしくて。
そんな事を言いつつ、抱く腕に力を込めた。
こうして、懐かしい思いに浸りながら。
私は、甘えるケンちゃんを可愛がったのであった。