ある朝
目を開けると豪華な天蓋のレースが見えた。
「ん…」
ティアリス・フロージュ・アイクワーズは17歳。アイクワーズ王国の姫である。腰まであるツヤツヤの髪は白銀で、瞳はルビーのように赤い。鼻筋はとおっていて、儚げだか美しい。
そんな彼女は、今目覚めた。
手元にあるベルを鳴らすと、侍女であるリリアが現れた。
「お目覚めですか?」
「うん…」
「では、朝食の準備をして参りますね。」
そう言ってリリアは部屋を出ていった。プラチナブロンドに緑の瞳の彼女は可愛らしい容姿をしている。ティアリスとあまり変わらない19歳で、小さい頃からの仲良。なにより、彼女あってのティアリスなのだ。
「はぁ…」
そして、今日はダンスパーティーの日。ティアリスはあまりに憂鬱だった。それは、彼女と踊りたいものが多すぎるから。美しい容姿に、姫という地位。それに絶大な魔力を持つ彼女は、いわゆる高嶺の花だ。自分と婚約してほしい、という貴族があとを絶えない…
コンコン、
リリアが朝食を持って来た
「はい、お待たせ致しました。」
「ねー、リリア」
「はい?」
「今夜のダンスパーティー、何とかして休めないかしら?」
「残念ながら無理でしょう。ティアリス様がメインのようなものですから。」
苦笑しながらリリアは応えた。
「う~」
仕方がないとばかりに、ティアリスは紅茶を飲んだ。
そして、部屋に用意してあるダンスパーティー用のドレスを見ながら、
(なにか素敵なことが起きないかしら…)なんてことを考えていた。