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クランクイン!  作者: 雉
始まりは大きく、そして突然に
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Chapter7-5

「そう……朝にいきなり地震が……」


 盗賊二人を加えて五人になった一行は、久の自宅にお邪魔し、居間の机を囲むようにして座った。セシリスに居た三人は、当時の状況をジョゼとハチに説明し始めた。盗賊二人も自分たちの目で見た情報もあることから理解は早く、ものの数分で大半を理解してくれた。


「で、織葉ちゃんが気付かなかったら久は死んでいたと」


 話を理解したジョゼが久をいじる。ジョゼは地震発生当事、久が爆睡していたことを織葉から聞かされた。


「う……」


 思わず黙ってしまう久。やはり、自分だけ爆睡していたとなると恥ずかしいものがある。それに、織葉の判断が少しでも遅ければ、少なくとも自分の頭に写真立てが落下していたのだ。

 もう少し気を引き締めないといけないなと、久は思った。



「なぁ、みんな」


 騒ぐ久たちに対して、タケが静かに口を開く。決して大きな声ではなかったが、その声に皆が反応し、暴れていた久とジョゼはピタリと動きを止める。それほど真剣さに満ちた声だった。


「これから話すのはオレの推測なんだが――」


 更に続いたその発言で、場に緊張が走る。おそらく何らかの推理をしているだろうと思っていた久ですら、嫌な汗が額に滲んだ。


「オレは、この地殻変動は狙って行われたものだと思う。土属性の魔法を得意とする上級魔導師。その様な人物が犯人なら、犯行は容易い筈だ。今回の様なピンポイントで魔法を行使することだって出来ると思う」


 お互いの顔を見合わせ、タケの発言を吟味する四人。

 確かに、あのような不自然な切れ目の入り方は自然界ではあり得ない。あとから確認した盗賊二人も、自然で生まれた亀裂ではないだろうと一目見て感じた。


「そうだとして、目的は何なの? セシリスに何か狙われるようなものなんてあるかしら? それに、上級魔導師の犯行はあり得ないわ」


 ここでもやはり浮上する、一番の謎。犯人の目的。

 それともう一つ、ジョゼが反論した一つの推測。


『上級魔導師の犯行はあり得ない』


 ジョゼの指摘したこの点こそ、タケが推論した際に口に出さなかった疑問点。納得できないたった一つの疑問だった。


 魔導師の中でも高等技術を多く学び、尚且つ魔力が増大で、その魔力を造作も無く操る魔導師の事を、ユーミリアスでは上級魔導師と称している。

 先天的な条件も多くあることから、誰しもなれる存在でなく、上級魔導師と言う存在は非常に数少ない。

 上級魔導師は自らの存在を驕ってはならず、人々に尽くすことを第一の使命と動かねばならないとされる。また、自然の恩恵を受ける魔術を崇拝し、それと同じ程、自然を崇拝し、愛さねばならないとう、大きな掟があるとされる。


 様々な命を育む土壌。全てを清める清水。力を与える烈火。祝福を運ぶ疾風……全てを理解し、善も悪も全てを受け入れる心が無ければ、上級魔導師の称など、到底授かることは出来ない。

 そのような高貴な人物である上級魔導師が、犯行に及ぶなど考えられない。ましてや、今回は地割れ。自然を愛する上級魔導師が土を傷つけるなど、あり得ない話なのだ。仮に上級魔導師が自然を行為的に傷つけたとすれば、杖を折られ、魔力を永久剥奪される厳罰が課されると聞く。


「そうだ、上級魔導師は自然を傷つけない。だけどジョゼ、よく思い出すんだ。オレたちは昨日、一体何を見た?」

「何をって……。まさか、あの河川敷の?」


 そのジョゼの言葉で場が凍りつく。昨晩、織葉が血まみれで倒れていた例の場所。その地面は魔法攻撃によって大きく傷ついていた。

 捜索を続けていたタケ、ジョゼ、ハチは、この攻撃は土属性の攻撃であると言うことに見当をつけていた。

 それに、現場には魔法攻撃発生時に残る残留魔力が残っており、その残留魔力は、残留とは思えないほどの魔力量を放っていた。その感じる力からするに、あの攻撃は間違いなく。上級魔導師による攻撃。もしくは、上級魔導師クラスの力を持った魔導師によるものだ。


「そうだ……。そうだよ! あいつ、地面を爆発させるような魔法ばっかり使ってきた……!」


 ジョゼの発言を聞いて、フラッシュバックで記憶が戻り、その時の状況を鮮明に思い出す織葉。


 織葉は幾度と無く地面で起きる爆発をゆいと共に回避した。煙にほんの少しでも擦れただけで服が焼け焦げ、火傷を負う烈火。魔法に関しては皆無に等しい織葉でも、あの魔法攻撃の火力は馬鹿げていると、身を持って感じていた。


「仮に、そいつが今回のセシリス襲撃事件の犯人だったとする。上級魔導師級の力を持つ犯人。――そいつはセシリスに何を狙いに来た?」


 河川敷で織葉たちを襲撃し、ゆいを誘拐して姿をくらました犯人。もし、その犯人と今回の襲撃事件の犯人が同一人物だとしたら。

 こんな静かな村を襲ってまで、必要なものがこの村にあったと言うことだ。それは――。



(ま、まさかあいつは、あたしを狙って――)



 織葉の脳裏に、最悪の答えが浮かび上がる。



(あいつの次の狙いは、あたし……。間違い、ない。あの場所にはあたししかいなかったんだから……)



 あの場所には織葉とゆいしか居なかった。

 ならば――間違いなく奴らの狙いは織葉だ。久もタケも、あの人物に出会ってすらいないのだから。


 織葉は恐怖を感じた。だが、その感情を噛み堪え、ゆっくりと口を開いた。本当はそのことを口に出すだけでも恐ろしかったが、皆に伝えなければいけない。皆がすでに分かっていても、自分の口から伝えなければいけない。



「そいつの狙いって、あたし――」



 ……ザッ、ザザー


 意を決して口を開いた織葉。しかし、その覚悟を踏みにじるかのように、聞き覚えの無い耳障りな音がどこからか鳴り、織葉の発言を無理やり遮った。

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