Chapter0
プロローグ
この世界に存在する幾多の生き物。人類や動物、植物。
そして、その全ての生物をどれも例外なく、常に優しく見守る、空、大地、太陽。
かつて、神として崇められたその三種は、どんな時も欠けること無く、常に暖かく、どんな生物をも優しく見守っていた。
しかし、今日は違った。大地を揺らす、巨大な影。その影は我が物顔で大地を踏み荒らし、その異様な大きさで、陽の光と空の青を遮っていた。
――巨人。それは地底より出でし災厄。
そんな存在は、伝承の中だけのものだと思われていた。そんな存在、この世にありはしない、と。
だが、それはか弱い人間の願望でしかなかった。人間は食物連鎖から離れ、自分たちが狩られることなど、微塵も考えていなかった。
店に出れば大量の死体が並び、それを品定めし、食事を作る。そんなことが、当たり前になっていた。味や見た目だけで残飯を生み出し、謝りなく捨てる。そんなことが、当たり前になっていた。
全長、数百メートルを超える巨体。その巨体は、硬い岩石で覆われ、いかなる攻撃も通さなかった。
平和呆けし、増えすぎた人類。それにたった一人で現れた、岩石の巨人。
巨人は、この大地を根城にし、自分たちが中心と思い込み、のうのうと増え続ける人類を粛清するかの如く、大地を、家を、人を、何の躊躇もない巨大な足で、踏みつぶして歩き始めた。