間章 Start of nightmare.
赤色と黒色の混ざり合う世界。
私が隠れていたのはそんな色の場所だった。
夕方でもないのにそんな色に見えるのは、おそらく切り刻まれた『人だった』何かの肉片から染み出る赤黒い血の色と、それを轟々と燃え上がらせる紅の冥火、紅の冥火から出で立つ黒い煙、頭を壊すかのような異臭を放つ焼かれていく何かの臭い、そして裏切りを意味する『冥王』の使い、ミスリルアーマー
『JUDAS』の、血のような赤黒い装甲色のせいだろう。
私の国は、『冥王』によって滅ぼされたのだ。
『冥王』が初めて世に現れた事件で、『薔薇の惨劇』と呼ばれている。
『冥王』の尖兵が街を闊歩し、国民を殺していく。生存者を出さないために。
『冥王』の騎士が、私の住んでいた家を、街を、国を、蹂躙していく。
目の前で人が死ぬのなんて、手と足の指を使って数えても数え切れないくらい、見てきた。
みんな、私を守るために死んでいく。唯一の光を繋げるために、命の灯火を消さない為に。
しかし、私には希望なんてなかった。灯火を継ぐこともできないかもしれなかった。
殺意を感じた。氷が体に刺さり、動けなかった。
尖兵に見つかった。私を殺そうと剣を振りかざす。
思わず泣きたくなった。しかし泣くことさえ赦されない。
私は、何のために生きてきたの?
ただ殺される為だけに?
いやだ――そんなのはいやだ。
生きたい……。
生きたいよ、レン……。