第一章 第五話 蒼空の刃、戦いへと誘うもの
さて、私たちは扉の中に入る。すると、そこはこれまた小さなエレベーターだった。
「これはまた……ずいぶんと小さいエレベーターだ」
アレックスの呟き。それには同意するが、我慢しろとしか言うしかない。
このエレベーターはおそらく、水下都市に繋がるものだろう。これは私の経験だけど、大規模な爆発のあるところは、おおよそ五十パーセントくらい水下か地下に繋がる所になる。やはり今回は貧困層を狙ったものだったらしい。
テロといっても二種類あり、開放レジスタンスによる主要施設を狙ったものと、今回のように貧困層を狙ったものの二種類がある。今回のように貧困層を狙ったものは、貴族階級の人間が行うため、大それたことはしない。だから水上都市と水下都市を繋ぐパイプエレベーターを破壊に来るのだ。
「はぁぁぁ……」
え? こっちの方が楽そうだって? 案外そうじゃないんだよ……。
「アリス姉ぇ!! 伏せろっ!」
あー……。やっぱり。
言われたように私は伏せると、私の頭の会った位置に巨大な剣が突き刺さった。そして右へ一閃へと切り裂くと、まるで缶詰のようにこじ開けた。そこに見えたものは、左手に美しい青紫の刃を持ち、右手はエレベーターのワイヤーを持った、黒と銀の体を持つミスリルアーマーだった。
「そこの二人、手を上げろ!」
私とアレックスは言われたとおりに手を上げる。
(……あれを使おっかなぁ)
私には、まだ使っていない力がある。人の理に外れた力だ。あなたと交信できる能力の一端。
「……覚醒して、『戦闘許可者』っ!!」
私が叫ぶと、私の左手が光に包まれる。アレックスは驚きを、ミスリルアーマーは困惑を見せる。
「なっ……なんだ!」
「ア、アリス姉ぇ?」
私は掲げていた左手の袖口からワイヤー付きのナイフをミスリルアーマーめがけて打ち出す。
「私は、キミの戦闘を許可しないっ!!」
すると、ミスリルアーマーはまるで痙攣でもしたかのようにその動きを止める。
「アレックス、今のうちよっ!」
そして私はワイヤーを巻き上げる。すると私の体が浮き上がり、同時にアレックスが私の足につかまる。それを確認すると最大限にスピードを上げ、完全に巻き切るとそのワイヤーを緩める。すると、止まろうとしていた力が緩まり、進もうとする力が上回る。そのようにして、まるで逆さのブランコのようにして相手の裏側に回りこむと、最大限までワイヤーを緩め、そのまま下へと降りていく。
「くっ……待てっ!! お前、まさか……」
私は、そんな声を聞いたような気がした。しかし、私はその声を無視してそのまま降りていく。
――まるで、都合が悪い過去を忘れるかのように。