第一章 第一話 光は入り、朝は訪れる
私は今、何かが崩れ落ちるような音で眼が覚めた。
少し驚いたので、一通り回りを見渡して、私の使っているホテルの部屋であることを確認した。とりあえず夜寝たときと変わらない。
「うん。少なくとも私の部屋じゃなさそうね」
とりあえず安心して、横で寝ているユリアを起こす。
「ユリア、起きて」
「……お姉ちゃん? おはよ」
とりあえず、状況確認が先決。私服に着替えて、眼をこすっているユリアを連れて行こうと考える。
だけど、なんか行く前に来ちゃったみたい。小さいノックの音が私の耳に届いた。
「アリス姉ぇ、ユリア、起きてる?」
声の主は、金髪の少年だった。私とは腐れ縁の関係とまで言える人だけど、あなたは知らないから紹介しておきます。
彼はアレックス。私の弟で十八歳。で、ユリアと彼の後ろにいるハンスのお兄ちゃん。
「アレックス、ハンス、どうしたの?」
状況はおおよそ理解してるけど、私はあえて聞いてみる。あっちのほうがいい情報あるかもしれないし。
「今から屋上に向かいます。話はそれからで」
私はユリアを見る。ユリアはまだ十一歳。まだ朝の四時みたいだし、まだ寝かしておきたいけど……。
「お姉ちゃん。私、付いてく」
「だそうだよ、アリス姉さん。ともかく、いいですが?」
ハンスの言葉に、私はうなずく。
「後で行くから、先に行ってて」
「はい」
「それじゃあまた後で」
「ちゃんと来いよ」
それであなたにも見てほしいんだけど、一緒に来てくれる?
――ていうか。
私の日記を読んでいるなら、あなたに拒否権は無いんだけどね。