第二章 第四話 『薔薇十字』と『賢者の魔眼』
何もない静寂。静寂だからこそ音は響き、私が後ずさる音がよく聞こえた。
「……『戦闘許可者』、銀髪銀目」
話し始めたのはレンだった。私はレンを見つめ続ける。
「……無事、だったんだな」
「何のつもり?」
私がすぐさま返答する。おそらく威嚇しているのだろう、私は。
「『黒薔薇事件』から五年たった今、もう私は六大公爵ではないの。あなたとの関わりはもう、無いのよ」
「アリエス……ッ!」
「私はアリスよ。元の私……アリエス・ホワイト・ローゼンクロイツは……もう、死んだのよ……」
『黒薔薇事件』、ローゼンクロイツ、六大公爵って何かって?
あなたには、まだ言っていなかったっけ……。
アリスって言うのは昔からの私の愛称で、本名は、アリエス・ホワイト・ローゼンクロイツ。300年ほど前にグローバレー帝国を、グローバレー皇族と一緒に作り上げた六賢者の末裔、それが六大公爵です。レンの生家である『収穫者』、『天空使』、『戦女神』、『狂王』、そして私の生家、『薔薇十字』の六家。
ここ第三軍区は元々『薔薇十字』が支配する地域、ローゼンクロイツ公国で、現在は五年前に起きた『黒薔薇事件』のせいでローゼンクロイツ公国は多大な被害を受け、『薔薇十字』家は私を除いて殺され、『薔薇十字』家は没落。
そして私は、『黒薔薇事件』を起こした張本人『冥王』を殺して、古い人間である私自身も、死ぬ。
私はその行動の記録者として『接続者』たる私の能力を使い、あなたを呼んだ。私たちの世界とは異なる世界の住人――『記録者』としての力を持つ、あなたを。
このことは、ルインズの皆には言っていないし、レンにも言うつもりは無い。あなただけにこのことを知って欲しいし、他の人には心配かけたくは無い。
「アリス……強がるな」
「強がる? 一体何を……」
レンの言葉が、あなたに言っていた言葉と重なり、私は動揺する。そして、さらに驚くモノを、私は見せられた。
「俺には、見えている。アリス、君が自らの死を望んでいることを」
そう言いながら、レンは目を覆っている包帯を解いた。そこに見える銀色の光沢。
機械で作られたレンの左目が、顕になった。