第二章 第三話 『虹彩剣』レナスという名の大型ハリケーン
「はじめまして。私の名前はレナスと申します」
レナスと名乗った少女は会釈をする。その動きで絹糸のような金糸は小さく揺れる。随分と可愛らしい印象を持つ子だなぁ。
「レナス……まさか、貴女は『虹彩剣』のレナス殿下ですか?」
ハンスの驚きの声。……って、『虹彩剣』?
「はい。私は帝国第二皇女、レナス・セラ・グローバレーです。この度、第三軍区総督を勤めさせていただきます」
驚いた。こんな僻地に帝国第二皇女、レナス殿下がいらっしゃるなんて……。
けど、これによって全てが繋がった。いつもと違う雰囲気は、皇女がやってくるとなれば当然そちらが何事よりも優先される。皇帝は帝国の全てであるので、皇女はそれに順ずる扱いを受けるのは当然。時期皇帝候補でもある皇子、皇女たちが道中何事もないように、内容は伝えられずとも護衛の仕事に従事することになるから。そして、帝国の剣『守護騎士』であるレンがいる事も、その直属部隊『ヴァルキュリア隊』がいるのも当然。おそらく皇帝陛下からの命令でレナス殿下の護衛に着いたのだろう。
そして、クロエさんの早期帰国。クロエさんは皇帝陛下からの信頼も高いので、護衛の総指揮官を任されたのだろう。
「あ、私のことはレナスと普通に呼んでください。堅苦しいのは肩がこるので嫌いなんです」
そんなんでいいのかな、帝国第二皇女。まあ、そういうなら、レナスちゃんと呼ばせてもらおうかな?けど、不敬罪にはならないよね?
「さーて!そんな感じで、やってきたついでに第六世代ミスリルアーマーっていう名の化け物を見せてもらおうじゃないの。クロエ! 今すぐに連れて行ってちょうだい!」
そんな声を上げながら、大型ハリケーンが去っていく。なんか、クロエさん、ユリア、アレックス、ハンスはその被害に逢って巻き込まれていったみたい。
どれだけ規模の大きいハリケーンなのよ、全く。
――そして、私と、レンだけが。
過去の私の全てをを知るものだけが、この場に残された。