第二章 第一話 猛る神々、最終戦争を告げるもの
「うわぁぁぁぁぁぁ――――ッ!」
私は、冷たい雨水が顔に滴り落ち、目を覚ました。
「……そっか、私――」
響き渡る雨の音、錆びかけた鉄格子、白い拘束衣、灰色の独房。
私は、『冥王』を見逃してしまった後、アレックスと共に軍隊に拘束された。理由は大量殺戮と反逆。
(……誰だろう)
あの青色のミスリルアーマー。私のことを知っているみたいだけど……私の故郷は消滅して――いや、『冥王』に破壊されつくして、存在すらしないし。私を知っている人なんて――。
ガシャンと、鉄格子の鍵が開け放たれた。私は『戦闘許可者』を構えようとするが、反応がない。どうやら取り外されて――保管されているようだ。破壊されているなら、あなたとの交信ができないからね。
鉄格子が開け放たれ、そこに青色の軍服を着た女性がいた。短めの髪を、カチューシャ状にしたリボンで飾り立てている。腰には東方の島国の剣を携えている。
「……『ヴァルキュリア隊』? 皇帝騎士の直属部隊が、なんでこんな僻地に――」
「あなたに話す権利は今現在与えられていないんです。黙ってついてきて下さい」
……あー、上から目線。流石エリート集団ね。
ちなみに『ヴァルキュリア隊』なるのは、今年度から皇帝騎士になった『御剣』と『柔剣』の『御剣』が管理する部隊だ。つまり、この土地に皇帝騎士が居る。そういうことになる。
「入ってください」
私が考えている内に、一つの扉の前に着いていた。開けられた扉の中へと入り、中を見渡す。何もない部屋に、机を持ってきただけの、取調室見たいなものだろうか?その机には、椅子が向かい合うように並べられていて、私が座らせられる椅子と、もう一つは……黒色の長髪と左目を隠す白い包帯が目立つ、皇帝騎士にのみ着用が許された白色の騎士服を着用した長身の青年が腰掛けていた。私は彼を見て思わず声を上げてしまった。
「――レン!」
私の声が聞こえたのか、黒髪の青年――レンは小さく視線を向けたが、私の視界が地面に変わる。同時に顔面に走る痛み。青色軍服の女性が私を床に叩きつけたの。耳に届く女性の声。
「失礼にも程があります。この御方は、皇帝直属騎士『守護騎士』の第五位、『御剣』レン・ハーヴェスター卿ですよ!?」
う、それは解っていたような気はしたんだけど……けど……。
「止めろ、ゼーレティラント少尉」
レンがそう言うと、私を押さえつけていた手が離され、私は解放された。そのまま立ち上がり、私を押さえつけていた少尉を睨みつける。
「……何ですか、その目は」
「そちらこそ、いきなり何よ!」
「止めろ、二人とも」
レンからの静止がかかり、私と少尉はにらみ合うのを止めた。レンは溜め息を一つ吐き、机を指で軽く叩いた。するともう一人、『ヴァルキュリア隊』の女性士官が白色の布に包まれた包みを持ってきた。……あの大きさ、あの形……明らかに手なんですけど。
「これは返却する」
そう言うと、女性士官が包みを解いた。すると顕になる銀色の腕、私の『戦闘許可者』。私は受け取ると、レンが愚痴をこぼしているのを見た。
「……全く……いつもいつもあの人たちは……」
「あの人?」
そんな疑問をレンが聞く前に、当の人物が扉を蹴飛ばした。
「アリスーッ!元気にしていた?」
その当人を見て、私は驚愕した。
「ク、クロエさん?本国に居たんじゃ……」
そこに居たのは、私の義母、クロエ・ルナ・ギルフォード中将だった。