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フタマタ男が好きらしい ~黙っていられないよ~

いつもお読み頂きましてありがとうございます。

「本当にエミリーって、シセイさんのこと好きだよね。」


 毎日、朝一番からエミリー王女の魔法の練習に付き合う。


 ここ1ヶ月ほど練習に付き合っているのだが、1度として『ファイア』魔法が成功していない。


 それもそのはず、『鑑定』魔法で確認したのだが、私が1回『ファイア』魔法を唱えるたびに魔力は100ずつ減っているのだが、エミリー王女の魔力は80くらいしかない。どうやら亜人の混血度合いにより、人族に近ければ近いほど魔力は多くなる傾向があるようである。


 これでは魔力の出し方を魔法書で勉強してもできるはずがない。


 毎度毎度のへこみように可哀想になって、魔力の使用量が少ない身体強化魔法をやってみようと言ってみても、ガンとして聞かない。魔法書に書いてあるから『ファイア』魔法からやるのだそうだ。


 1時間ほど練習するとその日は諦め、昼前までお喋りをして過ごすのが日課になっていた。


「だって若くていい男で女性には誠実で優しくて、お喋りしてても楽しくて最高じゃない。」


 このところの話題はシセイさんのことばかりだ。週に1回くらいデートをするらしく、エスコートの仕方が最高だったとか、美味しいレストランに連れて行ってくれたとか、惚気話を聞かされている。


 確かにイケメンで優しくて話題が豊富なのはわかる。だけど誠実かな。リュウキさんの話でも始終ナンパするような人間みたいだし、街に出掛けたときに女性と楽しそうに手を繋いで歩いているのを見たことがある。


 もちろん、エミリー王女とは違う女性で見掛ける度に違う女性だったから、複数の女性と付き合っているみたい。自分でも固いと思うけど、とても誠実な男性には見えない。本人が遊び人だというリュウキさんのほうが誠実と思う。


 偶に彼が王宮の外に出るときは、必ず私を誘ってくれるし、私が王宮の図書室で本を読んでいるといつの間にか隣に居たりする。


 彼は彼で漫画の設定の参考資料にするんだとか言って、本の内容を書き写したりしているけど、私の読んでいる魔法書と違い持ち出せる本ばかりだったから、傍で見守ってくれているんだと思う。


「いい男かなあ。彼って童顔じゃない?」


 エミリー王女にそんな話をできるはずもなく。遠まわしに王女に似合わないよと告げてみる。


「いいのよ。私の婚約者なんて40過ぎのオッサンなのよ。これでシセイさんの子供を産めれば重責から解放される。」


「ええっ。エミリーなら選び放題じゃないの?」


「違うのよ。そのオッサンは3代遡っても亜人の血が混ざってないというだけの男なのよ。これは内緒なんだけど、先代の国王の母方の祖父の遅く出来た子供に獣相が現れたらしくて大騒ぎになったことがあったの。」


「それで?」


「知っての通り、亜人の子供と子供を産んだ母親は殺されるから、一家でヴィオ国に亡命したらしいわ。ヴィオ国の王家はヴァディス王国の分家筋にあたるらしいんだけど、突然今の王家は王に相応しく無いって言い出したのよ。」


 ええっ。オーディンたちはエミリー王女の親戚なの?


「確かに時の国王に亜人の血が混じっているかもしれなかった訳だから、相手の言うことが正しいんだけど、簡単に明け渡すわけにもいかなかったから、戦争になったのよ。」


 下らない理由だ。余りにも下らない理由だけどヴァディス王国からすれば必然的と言えば必然的なのかも。


「ごめんなさい。どうしても黙っていられないや。あのね、『鑑定』魔法というのがあってね。それによるとエミリーは『亜人(混血43/256)』って出てきているの。」


 秘密を持つのは苦しい。思わず口をついて出てしまった。


 はあ、やっとひとつ解放された。


「それって、多いの少ないの?」


 やっぱり、食いつきが激しい。エミリー王女が私の両肩を掴んで離さない。痛いんだけど。


「エミリーは少ないほうよ。他の王子や王女に比べたらね。」


 王や王妃様と比べても低いほうなのよね。


「良かった。私の母親は亡くなっているんだけど余り素性がよろしくないところの出身だったらしくて王家の中でも亜人の混血度合いが高いと思われているのよ。だから、なるだけ亜人の混血度合いを薄くする必要があったわけよ。万が一、王女が獣相のある子供を産んだら王家が崩壊してしまうからね。」


 うっ。先を続けられなくなった。実は奴隷になっている亜人の中には、混血度合いが少ない人たちが居ると言おうとしたんだけど。言えない。言ってはダメだ。


 獣相の現れ方は混血度合いと比例しないみたい。元々、エルフやゴブリンのように殆ど獣相を持っていない種族もいれば、獣人のように全身に獣相を持つのが普通に種族もいるからだと思う。


ーーーお父さま。心の重荷はなかなか減らないものですね。


 教会で多くの人々の懺悔を聞くお父さまが凄いのだと改めて実感しました。

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