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プロポーズされました ~無茶振りだそうです~

お読み頂きましてありがとうございます。

「分かっていたことだわ。昨日、シセイから休戦の条件を聞いて驚いたもの。あの父が頭を下げるのかってね。」


 王都で術式の回収を行なうというトムさんたちと別れて、リュウキさんとシセイさんを連れて『転移』魔法で侯爵領に戻ってきた。


 そしてエミリーに事の次第を報告した。


「えっ。怒ってないの? 私、貴女のお兄さんを殺したのよ。」


「どうでもいいわ。そんなことでフラウが心を痛めているのを見ているほうがツライわよ。忘れてちょうだい。親子の情の欠片も見せなかった父や常に上から目線だった兄のことなんて私も忘れることにするわ。」


 エミリーは庶民出身の母を持ち、王族の中では虐げられてきたようである。


「それよりも聞いて。お腹の赤ちゃんの心音が聞こえてきてるよ。トクントクンって、本当にシセイの子供が居るのね。」


 既にシセイさんはそのことを知っていたらしく何も言わない。エミリーと視線を交わしあい微笑んでいる。


「本当?」


「聞いてみる?」


 エミリーは私の頭を自分のお腹に抱きこんでくる。聞こえる。小さい音だけどエミリーの心音とは違う音が聞こえる。


「本当だあ。いいな。私も早く赤ちゃん欲しいな。」


 母親になるというのは強くなるみたい。いつのまにかエミリーが以前の何倍も頼りがいがある女性に変わっている。


「フラウはまず相手を見つけないとね。リュウキさんとかシセイとか手近なところで見繕わないで、向こうの世界には沢山の男性が居るんだから。トムさんとかどうなの? 戸籍だっけ、誰にも用意できないものを用意してくれているんでしょう。それって滅茶苦茶頼りがいがあるってことじゃない。」


 トムさんが気になるってバレているみたい。見透かされているなあ。私って、そんなにわかり易いかなあ。


「おい。」


 流石に黙っていられなくなったのかリュウキさんが口を挟んでくる。


「リュウキさんはフラウを幸せにする気が無いんだから、黙っていて。」


「決め付けんなよ。あるよ。フラウを幸せにする。」


「トムさんが居ないと結婚も出来ないのにどうやって幸せにするというの?」


「そ、それは・・・それは俺がフラウの代わりにトムさんに一生を掛けて恩返しをしていく。」


「へえ。意外と考えているのね。シセイなんて『大企業へ就職が決まった』って単純に喜んでいるみたいだったけど。」


 ああ、それは不安になるわ。道理でリュウキさんに冷たいことを言っていると思った。原因はシセイさんか。


「酷いな。俺だって考えているよ。それこそリュウキの何十倍もトムさんに貢献して、エミリーを迎えにくるよ。」


 全く調子いいんだからシセイさんって。そんなことを気軽に言っちゃうから信用されないって、分かって無いんだから。


 エミリーを迎えにくるということはエミリーとその子供の2人分の架空の戸籍を用意しなきゃいけない。私の場合はバレても元の国に戻されるだけ。でも彼女たちには帰る場所さえ無くなってしまうというのに。分かってないなあ。


 まあいいわ。私も頑張って彼女が日本に居られるように努力しよう。私に何ができるかわからないけど、トムさんに必要とされるような人間になってみせるわ。


     ☆


 その夜は領主の屋敷でエミリーとレイティアさんの3人で過ごした。


 余程、私のことが心配らしくていろんな話をしてくれた。そんなに頼りないかなあ。


 私は私でこの世界に残していくエミリーのことが心配だったけど、そんな思いを吹き飛ばしてくれるほど、エミリーは心強くて頼りがいがあった。


 この世界から離れることを告げると意外にもレイティアさんには泣かれてしまった。


「そんな話は聞いてないわ。しかもエミリーが次期侯爵の領主は分かるけどで私が補佐で伯爵だなんて無茶振りもいいところよ。」


 膨れっ面でレイティアさんが抗議してくる。


 ヴァディス王が死んだ後、オールド王子とトムさんに相談したところ、そういうふうにアドバイスを受けた。


「ごめん。エミリーには悪いけど、元ヴァディス王国の貴族たちは信用できないの。だから私の信頼できる人間を付けることにしたの。貴女たちの下で働きたいと言ってきても無闇に信用しちゃだめよ。まずは無位の役人からね。」


 生きている元ヴァディス王国の貴族たちは資産は取られないものの完全に無位となり、エミリーには見せかけだけのヴァディス王国の復興の旗頭になって貰い、不満を封じ込めるらしい。


「わかっているわよ。庶民出身の元王女と元娼婦の下で働きたいと言ってくるだけでもマシな部類の人間ということね。まあ居ないわね。うちの貴族には。まずはレイティアさんを引き摺り降ろそうと画策するだろうけど。それを踏み絵にすればわかり易いわよね。」


 エミリーはさらっと聞いただけで全てを理解してくれていた。これなら大丈夫よね。

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