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ゴブリンは中国人みたいです ~思わず庇ってしまいました~ 

お読み頂きましてありがとうございます。


すみません遅くなりました。

「フラウ・・・お前・・・。」


「オーディン。何でそんなところに座っているのよ。」


 ヴァディス王国側の簡易砦からほど近い場所に王宮の縮小版みたいな建物が現れた。


 ヴァディス王国の王宮とヴィオ国の王宮のどちらにも似ていて驚いたのだが、謁見の間らしき部屋に入ってその理由に思い当たった。


 オーディンが居た。それも王妃が座る場所にである。


「ゴブゴブゴブ。ゴーブゴブ。ゴブゴブゴーブ。」


(異世界の『勇者』たちよ。ようこそいらっしゃいました。ジャイア王国のアロウ一世です。)


 王が座る位置に居たのは女性だった。骨格は間違いなくゴブリンだったが長い赤い髪に白いドレスにつつまれた日に焼けた素肌の身体が非常に扇情的に見えるのは大きくV字に開いたドレスの胸元から、こぼれ落ちそうなくらい大きな胸だからだろうか。


 ウエストも決して太くない。ゴブリンの骨格が太いからわかりにくいがかなりくびれていることは間違いは無い。


 顔は間違いなくゴブリンだったが非常に人族に近い。『鑑定』スキルを使ってみても、人族の混血度が低いオーディンとほとんど同じ亜人だった。


 これで顔も人族に近ければ少し大柄な絶世の美女・・・いや、きっとゴブリン基準では美女なのかもしれない。


「トムだ。昨日『勇者召喚』により、この世界に渡ってきたが別の異世界のただの亜人だ。少し魔族の血が混ざっている。」


 トムさんが自己紹介をする。元国王という話はしないみたい。


「渚佑子です。昨日『勇者召喚』により、この世界に渡ってきた『勇者』です。」


「フラウです。10年前『勇者召喚』により、この世界に渡ってきた『勇者』です。こに世界では『聖霊の滴』と呼ばれています。」


 渚佑子さんに促されて私も自己紹介を行う。


「ゴブゴブ。ゴブゴブゴブ。」


(貴女が『聖霊の滴』なのですか。)


 女王がオーディンの方をチラリと見る。オーディンから何かを聞いている・・・どうやって、伝えたのだろう。身振り手振りか。それって正しく伝わっているのだろうか。


「この男はあなた方が占領したヴァディス王国の隣国にあるヴィオ国の王子です。俺がこの世界を去ったあとの人族側の交渉役として連れてきた。そちらの男性のことをお聞きしてもよろしいでしょうか?」


 オーディンはオールド王子の方をジッと見ている。


「ゴブゴブ、・・・ゴブゴブ。ゴブゴブゴーブ。」


(この男は、・・・そうですね。ただの種馬兼アドバイザーです。)


 そうだよね。いきなり王配とか言われたら、どうしようかと思ったわ。


「そうなんですね。この世界ではそこに座られるのは王の伴侶なのですが違うようですね。」


「ゴブ。ゴブゴブゴーブ。ゴブゴブゴブゴブ。」


(なんですって! 思い上がるのもいい加減にしなさい。貴方はただの種馬です。)


 女王が立ち上がるとオーディンを殴り倒す。


 オーディンは椅子から転げ落ち、怯えた表情を女王に向けている。


「止めてください。」


 さらにオーディンを蹴ろうとしたところで勝手に身体が動いた。オーディンを庇うように2人の間に入る。


「ゴブゴブ・・・ゴブゴブゴブゴブゴーブ。」


(貴女は・・・この男を憎くは無いの?)


「何故、それを。」


 どういうことだろう。何故か女王はオーディンが私にしたことを知っているようだ。


「ゴ、ゴブゴーブ。・・・ゴブ、ゴブゴブゴーブゴブゴブゴーブ。」


(ちっ、しまった。・・・それは私が身体を重ねた男の記憶を読み取れるのよ。)


 女王の話では、ヴァディス王国から連れてきたオーディンを献上された女王は身体を重ねることでその記憶を読み取り、この王宮を築き王族の暮らしぶりを真似て来たるべき人族との交渉に備えていたそうだ。


「では、俺が居なくなったあとの交渉役は彼に担わせるつもりだったのですか?」


 改めてトムさんが質問する。


「ゴーブ。ゴーブゴブゴブゴーブゴブゴブゴーブゴブゴブゴブゴブゴーブ。」


(そうだ。こんな酷い男でも王族としての知識だけは使い道があったわけだ。)


 交渉の場に同席させることで全てを記憶させて身体を重ねたあと何らかの手段で返答をするわけだ。


「その役目は不要だ。この男はそこの男の兄だが出来は月とスッポンだ。この男に言葉を交わせる魔道具を渡しておいた。今後はお互いに通訳者を育てていくだけでいい。」


「ゴブゴブ。ゴブゴブゴーブゴブゴブー。」


(そうか。ならばこの男は臣下に払い下げるとしようか。)


「そ、そんなぁ。」


 女王の言葉はわからないのだろうが、オーディンは自分が不要だと烙印を押されたことだけはわかったようだ。


「本当に通訳者を育てられるでしょうか。先程から聞いていても、『ゴブ』としか聞こえないんですが。」


 オールド王子が頭を抱えていた。決してオーディンに対する救済というわけでもなさそうだった。


「ん。わからぬのか。比較的簡単そうだぞ。もっとあるのかも知れないが『ゴブ』と『ゴ』と『ゴーブ』と『ゴブー』のそれぞれに俺が聞き分けられただけでも10の発音があるようだ。これで40の言葉が言い表せる。さらにそれぞれの組合せによって意味が変わってくるといったところじゃないかな。」


 なるほど祖国の近くにある中国の言葉と一緒だわ。


 中国人はウルサイと思っている人間も多いがそれは間違いで4つの発音のひとつに大きな声で強い調子に発声するものがある。これを強い調子で発音しないと全く別の意味になってしまうのである。


「ゴブゴーブ。ゴブゴーブゴ。」


(すごい。その通りよ。)

中国語の発音は単なる事実です。

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