ネトラレ男は大迷惑 ~恐いひとのようです~
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「ほら。居たぜ。こんな所に居た。」
シセイさんが示す方向に『鑑定』スキルを使うと確かにサキさんの名前が見えている。
そうなんだ。このスキルって、幽霊も見えるんだ。便利過ぎる。何も無いところで使うのは止めよう。見なくてもいいものまでみてしまいそうよね。
「本当ね。」
「本当だな。」
「サキちゃん俺たちを助けてくれないかな。好感度を上げるチャンスだぜ。ここには結界があって出られないみたいなんだ。君ならきっと出られる。本当の身体に戻ってここの責任者を呼んできてくれよ。報酬はそうだな。リュウキのキスでどうだ。」
シセイさんがそう言うとサキさんの魂は目の前からスーッと消えていった。
「おい。シセイ。お前勝手に約束なんかしやがって。どうするんだよ。」
「いいじゃないか。手の甲でもほっぺたでもキスくらいしてやれよ。」
それって、殆ど詐欺じゃ無いだろうか。
「それくらいなら、フラウちゃんもいいよね。」
いいわけがない。あの女にリュウキさんのひとかけらでも渡すものですか。
「嫌です。リュウキさんは私のものなんです。勝手に約束したシセイさんの責任ですからね。八つ当たりでも何でもされてください。」
「フラウちゃん・・・言うようになったね。」
「鍛えられましたから。」
特にシセイさんの言動に散々振り回されましたから、嫌でも強くなりましたよーだ。
「なんだ? 随分と仲良しだな。俺の知らないところで何があったんだ。」
「な、なにも無いです。」
リュウキさんには、娼館でシセイさんとレイティアさんに対して妄想した事実は伝えていない。
誤解するとは思えないが娼館で働いていたことで嫌な思いをする必要は無いと思っていたから。
「凄くわかり易いな。何があったんだシセイ。」
そういえば挙動不審だとエミリーにも言われたよね。
この私がよくもあれだけ嘘を塗り重ねられたよね。幸運にも助けられたのかもしれない。
「もちろん、内緒さ。」
いつものようにシセイさんが挑発する。全くこの2人って、仲良しさんね。
「ちっ。くそっ。殴ってやりたい。」
リュウキさんが動揺を隠さずに拳を握り締めている。珍しいこともあるものね。
「へえ。俺、嫉妬されているのか。あの雑誌で抱かれたいナンバーワンにもなった男に・・・ちょっと気分いいな。」
「ちょっとシセイさん。挑発し過ぎです。ごめんなさい娼館で娼婦相手にマッサージの仕事をしていたんです。そのとき裸で抱き合っていたレイティアさんとシセイさんにちょっと妄想してしまって。」
「なんだ。そのことか。それならレイティアさんに聞いたよ。」
事の顛末をレイティアさんに聞いていたらしい。助かった。
「なあシセイ。サキは何日くらい掛かってここにたどり着くと思う?」
リュウキさんは沈黙に耐えられなかったのか再びシセイさんと話しだす。
「さあ、3ヶ月くらいじゃないか。病院のベッドで目を覚ましてどれだけ懸命にリハビリしても家に帰り着けるには1ヶ月くらい掛かるだろう。次の1ヶ月は彼女が何を言っても信じてくれないわ。妄想していると思われるわ。もちろん監視されているわで動けないと思う。やっと自由に動けるようになっても彼女の機動力じゃ1ヶ月は掛かるんじゃないか?」
ここで3ヶ月間、共同生活。いっそのこと、リュウキさんとラブラブになってシセイさんに見せつけてやりたい。そんなスキルが無いけど。
「それまでメシ。どうするんだ?」
意外と現実的なリュウキさんが居た。
「リュウキ。お前、まさか何も持っていないとか?」
「当たり前じゃないか。このまま飢え死にか?」
リュウキさんの『箱』スキルの中には食べ物は入っていないらしい。私なんていつ放浪生活に戻るかもと『マジックボックス』に多種多様の食べ物が入っているのに。何の用意もせずに世界を渡ってくるなんて、意外とおバカさんなのか、豪胆なのか。
「不真面目だなあ。どうせサキとデートしていたときでもレストランとか利用していたんだろう。外で買い食いくらいしろよ。王都に沢山美味しいもの売っていたぞ。」
本当に不真面目だな。幸いシセイさんは沢山の食べ物が『箱』スキルに入っているらしい。
そのときだった。
開けっ放しの扉に人が立っていた。
「すみません。お待たせいたしました。今、女性が此処に居たはずなんですが、皆さん理由をご存知ですよね。」
今度は『鑑定』スキルを初めから使う。情報は先取りしないといけない。山田取無さんと仰るらしい。でも亜人だ。何故? こちらの世界には人族しか居ないって聞いていたのに。
言葉は丁寧だけど、有無を言わさない雰囲気が漂ってきた。
「す、すみません。『召喚』の術式に魔力を投入したら、この場所に出て来ました。ここは、何処なんでしょうか?」
恐いけれど、できるだけ正直に話す。
「ここは・・・、日本と言われる島国で、あなた方の世界から見て異世界にあたります。」
間違った場所に来たわけじゃないらしい。リュウキさんとシセイさんから息を吐き出す気配が漂ってきた。万が一の可能性も考えていたみたい。
それにしてはサキさんを送り出したのは何故なんだろうか。まあいいや。あの女のことを心配しても仕方がない。
「それで、あなた方が使ったという『召喚』の術式というものを詳しく聞かせてもらえないだろうか。」
何かを押し殺すようにズバリ真実をついてくる。この人は何者だろう。『勇者』でもない魔法使いみたいだけど只の人族のようなのに・・・。
この話から拙作「ネトラレ男のすべらない商売」にクロスリンクします。
同時進行で主人公たちそれぞれの視点で話が進んでいきます。
http://ncode.syosetu.com/n4920cb/
既に2話ほど先行させていますが、上記小説は週1回更新なので余裕で抜かしていきます。
尚、この小説が完結してもキャラが現れる可能性があります。ご了承お願いします。




