ドレス姿が似合う女性は誰でしょう ~領地運営だそうです~
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「これはいったいどういうことなんでしょうか。罠だとバレたということ?」
北門と王宮の中間辺りで待ち受けていたがゴブリンたちがやってこないのである。思ったほどの数では無かったが南門から入り込んできていることは確認している。
「それならば、城壁外を回り込んで襲ってくるはずよね。」
リュウキさんとシセイさん、サキさんは既に国民の守護者として北門を出てしまっている。城壁外でゴブリンたちが襲ってくれば伝令の兵士が走ってくることになっているが、それらしい兆しもないらしい。
ハッキリ言って不気味である。動くに動けない。エミリーを王宮に置いてきて、南門に向かえばいいのかもしれない。だが万が一、城壁外でゴブリンたちが襲ってきた場合に対処出来なくなってします。
今回の作戦は、国民を逃がすことが優先である。同時に王宮の人々を囮にしてゴブリンたちを叩くのが大前提である。
☆
作戦を開始して1時間後、定期報告が入ってきた。やはり逃げ出した国民を襲ってくる様子は無いらしい。それどころか城壁を取り囲んでいたゴブリンたちも行く道を開けて遠巻きにみているのだという。
また南門から入り込んできたゴブリンたちは想定の10分の1程度で主に貴族たちや大商人たちの屋敷を襲っては、リュウキさんたちに預けきれなかった家財道具類を運び出している。
良くわからないことに、その中にはバスタブやベッド、それにドレスなどの衣服類まで入っているのだという。既に誘拐されている女性たちが居るのだろうか?
周辺の村々でも食糧などが強奪されることはあっても女性たちが誘拐されたという報告は入ってきていない。
とにかく、このままこの場所に居ても仕方が無いのでエミリーを王宮に送り届け、リュウキさんたちに合流するしか無いらしい。
想定では王宮に1ヶ月間籠城可能で城壁を取り囲んでいたゴブリンたちが王宮に殺到しても1週間は持たせられるだけの軍備を備えてあるから、問題ないはずである。
☆
「着いたぞ!」
「着きましたね。」
結局、逃げ出した国民をゴブリンたちは襲って来なかったのである。途中、何度も襲ってくる前提で到着日数を計算に入れていたから、僅か1日半で到着してしまったのである。
その間何度も『転移』魔法で往復していたので、神経が擦り切れてしまった。
途中ヴィオ国軍が合流し、領地に入ったところで歓声があがった。このまま領主の屋敷で寝てしまいたいところだがそういうわけにもいかないのがツラいとこである。
ヴァディス王国の王宮に戻り、無事到着したことを報告し王宮に滞在することになるはずである。
「ではすみませんが領地運営をお願いしますね。」
「おう任せておけ。といいたいところだが、素人の俺たちが口を出すよりは役人たちの判断を見守る見映えのいい案山子に徹するよ。」
リュウキさんの言葉に安心する。大概、私もそれ程変わらない案山子役である。頂点に安心できる人物が座っているだけで領民たちは安心するものなのだという。
その案山子が『勇者』なのだから、安定感抜群である。
「そうそう。当分力仕事が多いさ。」
ーーーお父さま。領地運営という課題が増えました。
何も知らない私たちはいったいどうしたらいいのでしょう。




