キレイなお姉さんたちの戦い ~誰も欠けて欲しく無いです~
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「いよいよですね。リュウキさん。」
「ああ。ようやく戦える。」
いよいよゴブリンたちとの決戦のときがきたのである。
ゴブリンたちは城壁の周囲を取り囲んでいると思われたのだけど、よくよく空から観察するとゴブリンの巣方向の南側が圧倒的に多い。
そこでワザと南門を開放しゴブリンを城内に引き込み、北門から国民たちを逃がす作戦がとられることになった。目指す行き先はヴィオ国の侯爵家の領地、慰謝料として頂いた土地に3日かけてたどり着く予定になっている。
元々、王都南側の迷路のような貴族の邸宅が立ち並ぶ一角を完全に迷路として活用し、時間稼ぎをすることになっている。
貴族たちや大商人たちの邸宅を放置する代償にリュウキさんとシセイさんはここ数週間はあらゆる物品を『箱』スキルに入れるという作業に追われてうんざりしていたので余計に張り切っているみたいである。
送り届けてる役目は若い兵士たち。私たちは北門からゴブリンたちを城壁外へ出さないのが仕事である。
今回は『ファイアボム』魔法他広域範囲魔法も撃ち放題。王都中央にある王宮を守っている兵士たちにさえ影響しなければいいだけである。
この作戦の成功の鍵はタイミングである。南門を開けてどれだけゴブリンたちを引き込んでから、北門を開くかである。あまり早くても城壁外を回り込まれてしまっては意味がない。だが遅すぎて北門を出る前に国民たちに被害が出てしまっても意味がないのである。
総指揮はエミリー王女が担当する。北門を開けるタイミングは彼女の仕事であり、その後王宮内へ『転移』魔法で送り届けて、そこから外に向かって広域範囲魔法を使って撃って出る予定である。
☆
「かいもーん!」
エミリーの力強い声が響きわたる。真っ先に出て行くのは兵士たちである。そしてレイティアさんが指揮する親分衆の若い衆が国民の誘導を担当している。
「フラウちゃん! 怪我しないでね。」
レイティアさん親分衆が私たちに挨拶を交わしていく。シセイさんの真似なのかハイタッチをしていく人々や拳を交わしていく人々。そして私とレイティアさんは抱擁を交わした。
「レイティアさんこそ!」
実は逃げる人々と王宮に残る人々が居る。その人選は混血度が低ければ王宮に入り、混血度が高ければ逃げる一団に入っている。
「ジーナさんも早く行ってください。」
混血度の低いジーナさんは囮の役目を買って出てくれた。王宮に残る人々の殿である。できる限りゴブリンたちの目を王宮に向かわせる必要があるからだ。
「わかったわ。フラウさん。頑張ってね。」
ジーナさん共抱擁を交わした。
「ジーナさんも!」
あれから、すっかり仲良くなったレイティアさんとジーナさんも抱擁を交わしている。
「ジーナ、先に行って待っているわね。」
この作戦が成功した後にジーナさんは『転移』魔法で侯爵家の領地へ送り届けることになっている。
「レイティア! 勝負はお預けよ。ヴィオ国の娼館で1年でどちらかがトップをとりつづけるかよ。わかっているわね。」
娼館主たちや大商人たちの資本家は既に領地に送り届けて、領民を使って建物を建て続けている。
国民の大部分が難民になることは避けられないが、少しでも働くところが増えればその分難民生活から解放されるはずである。
「わかっているわよ。」
領地にたどり着いたレイティアさんたちに待ち受けているのは安穏とした生活では無い。そこで兵士たちは領地の騎士団に組み入れられ、親分衆は難民たちの自治のための役人代わりをお願いすることになっている。
レイティアさんはさらに娼婦としても活動するつもりらしい。そこは何度となく説得したのだが、辞めてくれない。
なんとか1年と期限を決められただけである。初めの1年で難民を減らせれば、領地運営も任せたいと思っている。なんと言っても私の大切なブレーンの一人なのだから。
ーーーお父さま。ここからが正念場です。誰一人として欠けることが無いように天国から見守り下さい。




