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バカな男が残したもの ~私って悪役かもしれない~

お読み頂きましてありがとうございます。

「また・・・ですか。最近多いですね。」


 最近、ヴィオ国へ行くための『転移』魔法を希望する人間が後を絶たないのだ。王族に忠誠を誓っている貴族たちでさえも、子息たちだけでも逃がしたいと思うのだろう。


「『ダメだ。』というと大量に警護の人間を雇って城外に出ようとされるからね。困ったもんね。」


 エミリーがため息をついている。周囲にゴブリンが居ない夜間を狙って城外に出た人々の運命は一様にゴブリンたちに取り囲まれ戦闘の末に死んでいく。


 男も攫われて子作りをさせられるという情報は公開されていないから戦うしかないのかもしれない。まあそんな情報が公開されたらされたでパニックになるのは目に見えているから公開されないのだけど。


 仕方が無いので対価を貰って国境付近まで送り届けているのが現状だった。


「それにしても、対価が住んでいた屋敷だなんて、良かったの? 今、物凄くこの国の土地家屋の値段が下がっているのよ。」


「いいんですよ。あの辺り一帯が私の物になってしまえば『ファイアボム』魔法が唱えやすいんです。ゴブリンがあの辺りへ逃げられて、どれだけの人間が犠牲になったか。あんな悔しい思いはしたくないんです。」


 貴族たちの屋敷の周囲、巧妙に入り組んでいてゴブリンに『ファイアボール』魔法による攻撃を加えにくい。


 庶民たちなら数百人規模で退避しなければならないが、貴族の屋敷ならば数十人ほどなので何度となくこの辺りでの『ファイアボム』魔法の使用許可を将軍に取りに行って却下され、辺り一帯への退避命令さえ思うようにいかないのだ。


 何度、誤爆と偽りを言って、『ファイアボム』魔法を使おうと思ったか。


「そうだよね。あのあたりは貴族たちの物だったからね。」


 そして、大抵は使用人たちが犠牲になるのだ。


「その代わり、ヴィオ国の物価が跳ね上がっているらしいですよ。侯爵家が持っている低所得者向けアパートにも問い合わせが殺到しています。それも、使用人のみならず貴族たち本人たちからも・・・。」


 お父さまは、国から頂いた報奨金を元手に戦争で更地になった貧民街に高層アパートを次々と建てていき比較的所得者の少ない人々に貸していたのだ。


 これらの資産も私の手に戻ってきている。他にも、慰謝料としてオーディンが所有していた領地を頂いた。正式に侯爵として襲爵しようという話まで持ち上がっている。


 オーディンに取って私は王子としての施政者から失脚へ導き、悠々自適の隠遁生活から男娼に落としめ、働く喜びに目覚めたかどうか知らないけれどその場所からゴブリンたちに誘拐させ、資産まで奪い取った悪役なんだろうな。まあ自業自得なんだけど。


 高層アパートはオールド王子が斡旋してくれた商人に一任していたところ、所得制限を設定していたのに勝手にヴァディス王国の貴族や高給取りの貴族の使用人たちと契約を交わしていた。


 通貨は共通だったから、それなりに溜め込んでいる貴族や大商人たちはヴィオ国で中流の家を購入出来ているが資産を安く買い叩かれた貴族たちは見栄優先で使用人を使いつつ、できるかぎり安いアパートに住もうと考えていたようである。


 そんな輩を住まわせたら、元の住人たちとトラブルになるのが目に見えている。仕方が無いので、アパート一棟だけを切り離して他の住人の数倍の家賃で契約しているのが現状である。


 住まわせないとヴァディス王国を通してトラブルになりそうだし、ヴィオ国が好景気にわいていて低所得者層が減り続けていて、空室になっているという現実もあったりする。


ーーーお父さま。ごめんなさい。理想と現実は大きく違い過ぎて戸惑っています。


 お父さまの理想を貫くことは出来そうにも無いです。

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