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キレイなお姉さんが欲しいです ~疲れているようです~

お読み頂きましてありがとうございます。

 それからというもの、全く気の抜けない日々を送っている。


 日常的に城壁をゴブリンが這い登ろうとしてくるからだ。未だ『フライ』魔法を使ってくる様子は無い。彼らの前で使わなかったから習得していないらしい。


 夜間は襲撃が無いのでリュウキさんやシセイさんをゴブリンに襲われていない村に『転移』魔法で送り迎えを行う。


 昼間はサキさんとふたりで身体強化魔法を使い、城壁を周回しゴブリンが這い登って来ていたら、周囲に配置されている兵士たちと共に戦闘に参加している。


「大変です。西門付近の城壁が壊れてしまってゴブリンが雪崩込んで来ました。」


 お昼過ぎに王宮で休憩を取っていると兵士のひとりが走り込んできた。


 こんなのは日常茶飯事だ。早速、私の権限で3つの小隊を送り出す。私たちには大隊長クラスの権限が一時的に与えられている。


 もちろん、兵士から詳しい場所を聞き出してその場所に『転移』魔法で向かった。


 拙い西門が開けられている。城壁が崩れたところから入り込んだゴブリンが開けたのだろう。


 とにかく、私は半分雪崩込んで来ていたゴブリンたちを『ファイアボール』魔法で押し返し城壁の外に押し出すと『ファイアウォール』魔法で一時的に炎の壁を作り出して、城内に戻ると門を閉めさせた。


 崩れた壁付近には3つの小隊が到着して、人の壁を作りつつ復旧作業をしている。


 良かった。崩れたとはいえ、城壁の上の部分だけだ。これなら1日あれば夜の間に復旧できる。


「フラウさま。申し訳ありません。ゴブリンが十数匹市中に入り込みました。」


 西門の隊長から報告を受ける。まだ気が抜けないらしい。他の部隊にも情報の伝達をしてもらうように頼み、ゴブリンが向かったという方向に走り出した。


     ☆


 拙い拙い。この辺りは娼館街じゃない。


 周辺の村々の住人たちは混血度が高いせいか、それほど連れ去られたという報告は入ってきていない。


 『鑑定』魔法で見ても王都の中の人の方が大体混血度が低い。


 特に娼婦たちの混血度の低さは際立っている。ゴブリンも女衒もそういうのが本能的にわかるらしい。


 こんなときでも娼館街は開店している。


 レイティアさんがいるはずの娼館に向かうと詰所に居るという。


 娼館街の纏め役の仕事が忙しいらしい。


「これはこれはフラウさま。ようこそいらっしゃいました。」


 詰め所の厳つい顔の若い衆が挨拶をしてくれる。


 娼館街には娼館街の仁義があるため、国の兵士たちを派遣するわけにもいかなくて王都の親分衆から人員を派遣して貰っており、特別に私の権限の下に入って貰っている。


 それは本来法律上持ってはいけない武器を携帯できるようにしたかったからだ。


「纏め役はいらっしゃいますか?」


「ええ3階の執務室で書類と格闘中です。」


 もちろん、彼らとの間には纏め役であるレイティアさんがおり、直接の指揮官は彼女なので一言断っておく必要があるのだ。


 本来、夏場にあるという祭りのための詰め所なのだけど、レイティアさんが私やシセイさんと知り合いということもあり、王都の親分衆との渡し役を担う所為で随分と忙しいらしい。


 王都中で兵士たちと親分衆の若い衆が協力できていることが士気を落とさずにいられる秘訣なのである。


 だから、娼館街は特に重要だ。ここが落とされると親分衆が空中分解しかねない。


「レイティアさん! 大変なのっ。」


「どうしたの。フラウちゃん。そんなに慌てて。」


「西門からゴブリンが十数匹この付近に入り込んだみたいなの。警戒レベルを上げて欲しいの。できることなら、店も閉めさせて欲しいのよ。」


「おい聞いていたよね。伝令を頼むよっ。」


 レイティアさんが私と一緒に入ってきた若い衆に命令する。


「わかりました。レイティア姐さん。ですが・・・。」


「わかってるよ。店を閉めるのは無理だと言うんだろ。閉めない店からは余分に警備料金を取ると脅しておけ。それでも開けたいと言うなら、警戒レベルをさらに1段上げるんだ。それだけの料金を取ってね。払わないというところには、警戒レベルを下げることを通告しておきな。」


 レイティアさんがテキパキと指示を出すと若い衆が飛び出していく。


 こういう人が部下にいれば楽なんだけど、優秀な中隊長は女の下につくのが嫌らしく私の下には誰もついてくれないので仕方無く自分で小隊長に指示を出しているのだ。


「フラウちゃん。これでいいかい。」


「流石は、レイティア姐さんですね。」


「もう、姐さんは止めてちょうだいな。いつもの通り呼んでおくれよ。只でさえ、男勝りなところがあるのに娼婦が男にしか見えないんじゃ終わりじゃないか。」


「ごめんなさい。でも甘えたいんです。」


 そう言って私はレイティアさんに抱きつく。


「なに? 疲れたのかい。仕方が無いね。子守歌でも歌ってあげるよ。おい。私は娼館に戻るからね。最上級レベルの緊急事態でも無い限り、呼び出すんじゃないよ。」


 レイティアさんが近くにいた若い衆に声を掛ける。


「でも、私・・・。」


 まだゴブリンを排除してない。どこで住人たちが襲われているかわからないのに休むなんてできない。


「ダメだよ。フラウちゃんは今、王都でも最も重要な人間なんだから、疲れたならキチンと休まないと心も身体もね。たかだか十数匹のゴブリンでは王都はどうともならないって。」


ーーーお父さま。疲れたときに癒やしてくれる人がいることはとても幸せですね。


 私も将来、リュウキさんが疲れたことを察知して癒やしてあげれるといいなあ。

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