ネトリ女が危ない ~確かに受け取りました~
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結局、国境付近の簡易砦はオールド王子率いるヴィオ国の兵士たちたちがこちらに合流したため、なんとか落とされずに済んでいる状況である。
ゴブリンたちの大半はヴァディス王国の王都を取り囲んでいる。
「すまないが私と将軍たちをヴィオ国の首都まで『転移』魔法で運んでくれないか?」
私たちの今の仕事は輸送を担うことになっている。
勇者のスキルによる無限に近い容量を持つ『箱』を活用し、ゴブリンの襲撃を受けていない村々から王宮へ物資を運んでいる。他にも人間の輸送もおこなっているが一度に運べる人数に制限があるため、思うように進んで居ないのが現状である。
もちろん、エミリーは王宮に戻っており、この簡易砦の指揮官はヴィオ国が担っていた。
「この砦も捨てるつもりですか?」
「ああ、既に落とし穴も完成している。ゴブリンたちもこのルートは使えまい。私もここにそうくすぶっているわけにはイカンのだ。万が一、ヴィオ国がゴブリンに攻め込まれるならば、私は首都で籠城戦で挑むつもりなんだ。」
今のところ、ゴブリンたちがヴィオ国側に攻めいったという報告は入ってきていない。だが最悪、ヴァディス王国が攻め落とされたときのことを心配しているのだろう。
先の戦争においても常に先を見据えた戦術で敵を翻弄してきた。この王子の手腕がなければ早々に敗戦していたに違いない。
「わかりました。」
はっきり言ってヴィオ国に戻ることは怖い。処刑されそうになって以来、1度も戻っていないのだ。
処刑の前日まで人々の好奇に満ちた視線、見下した視線、憐れんだ視線に常にさらされていた。
決意して答えたものの、それを思い出すと身体が自然と震えてくる。
「大丈夫・・・じゃないよな。良し俺もついていく。いいだろうかオールド殿下。」
青い顔でもしていたのかもしれない。リュウキさんの手がそっと私の肩に置かれる。
「ああ是非ともお願いする。君たちを国賓として招待する。」
「私は行かないわよ!」
サキさんはエミリーが言ったヴィオ国の牢屋の件を思い出したのか激しく拒絶する。
「俺もここでサキちゃんのガードをしているよ。」
好奇に満ちた視線を受けているのはサキさんも同じだ。この簡易砦には私とサキさんの因縁を知っているヴィオ国の兵士も多いらしい。
私は『聖霊の滴』として扱われているためかここでは好意的に受け止められているようだが、サキさんにはあからさまに侮蔑の視線を送る人間も多いのだ。
そういう意味では決してひとりにしてはいけない人物であるため、常に集団で行動するようにしてきたのだ。
☆
「これは・・・なんですか?」
オールド王子たちをヴィオ国の王宮に送り届けると『渡すものがあるから』と言われ手渡されたものがあった。手紙のようである。
「フラウちゃんが結婚する前に渡して欲しいと侯爵に頼まれていたんだ。もう渡す機会が無いかもしれないから渡しておく。」
お父さまからの手紙らしい。
私はその手紙を『マジックボックス』の中にしまう。
「読まなくてもいいのかい?」
「まだ結婚しませんから。」
「そうじゃなくて、おそらく人生の転機にさしかかったら読めと言う意味だと思うが・・・。」
「では尚更、読めません。」
これから先、いくつもの人生の転機を迎える。まあ出来れば婚約破棄される前に読みたかったところだけど、遅すぎる。
「そうか。それから侯爵の邸宅は保全してあるから、鍵を渡しておく。邸宅と中にある物は全て君の物だから、好きにするがいい。」
「ありがとうございます。」
差し押さえられただけで処分はされていなかったらしい。
「すまなかった。あんなバカに君を与えた私が悪かったんだ。」
オールド王子が腰を折っている。
ーーーお父さま。こういうときはどう声を掛ければいいのでしょうか。




