バカな男が競り落とされるそうです ~雁字搦めになっていたようです~
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「ごめんなさい。不幸自慢をするつもりは無かったの。」
私もシセイさんも言葉を失っていました。
「でも私は戦ったのよ。せっかくフラウちゃんが綺麗にしてくれた身体に火傷痕をつけられたことがあまりにも悔しくて、その日のうちに王都を仕切っている大親分さんのモノになりにいったの。後援者になりたいと言われていたからね。」
「凄すぎです。レイティアさん。怖くは無かったんですか?」
「大親分さんは気のいいお爺ちゃんで怖くは無いけど、周囲の人間たちが怖かった。でもその親分さんたちの前で切った啖呵を気に入ってくれたらしくて、この娼館街の辺り一帯を締める纏め役に祭り上げられてしまったのよ。だから、頼ってくれても大丈夫なんだよ。」
良くわからないけど、権力をもっているらしい。
「すっげー。女親分じゃん。そうすると他の親分さんを娼館街に出入り禁止にするって脅して言うことを聞かすなんてことも出来るんだ。」
なんか私以上にシセイさんが興奮している。また異世界の話なのだろうか。あまりにも具体的すぎる。
「ええまあ出来ると思うわよ。そうね。そう考えると凄い権力よね。いざとなった時に使ってみるわ。」
「ちょっとちょっとシセイさん。唆さないで。シセイさんに取っては空想の話でもレイティアさんに取っては現実なのよ。そんなことをすればレイティアさんの身に何が降りかかるか。わかって言っているの?」
リュウキさんが時々エミリー王女や侍女たちに、この手の空想の質問をすることがあるのだ。問題は出来るか出来ないかであるようで、それを行ったことで今後どのような影響が出るかは全く考慮しなくていいらしい。
「それは最終手段でしょ。しないわよそんな悪手。それよりもシセイを行方不明にさせるくらいは出来るわよ。忘れないでね。」
シセイさんは良く考えてみると言って帰っていった。
☆
「フラウです。よろしくお願いします。」
娼館は夜9時過ぎがピークでそれまではほとんど、お客さんが入らないらしい。夕方に彼女たちは軽めの夕食を取るというので、その輪の中に入れてもらっている。
話題は、やはり内股の隙間のことらしい。
レイティアさんが彼女たちに見せると騒然とした。
彼女たちは朝にお風呂に入るらしく。結構、他の女性の身体を観察しているらしい。
「彼女の日当は館が払ってくれるけど、この施術をうけたらチップをはずんであげてね。さらに親しくなれば、イロイロと秘技を見せてくれるかもしれないけど他言無用よ。わかっているわね。」
「今日も施術されていたんですよね。マッサージだけでも受けてみたかったわ。」
レイティアさんの隣に座っている女性がそう仰ってくれる。
「レイティアさんの次にジーナさんと仰るかたのところへお伺いしたのですけど、『遅い』と怒られてしまいました。何故か今日はそれで終わりということになりました。」
なんだか中途半端な時間に終わったんだけど。もう1人や2人は施術できそうだった。
「ああ、あの方ね。じゃあ仕方が無いわね。」
「フラウ。申し訳ない無いけど、早い時間に『終わり』と言われたら私のところへ来てくれないかな。手配し直してみるから。」
早く終わろうが日当は同じなので気にしなかったけど、仕事の邪魔をされてしまったみたい。
そのせいで私の正体がバレたと思うとちょっと悔しい。
「あの方はどういった方なのですか?」
「館の主人の寵愛が一番深い方なの。だから、なんでも1番じゃないと気が済まないのね。でも私が娼館街の纏め役という立場上、館の主人よりも上の立場に居るもんだから、気に入らないのね。細かい嫌がらせをしてくるのよ。」
仲良くすればいいのにと思うのは自分勝手な考えなのよね。私みたいに嫉妬という感情を出せずにモンモンとして最悪の事態を招くよりは、よっぽど健全なのかもしれない。
「そういえば、あのオーディンいう男のオークションが行われることが決定したわよ。フラウも見にくる?」
「えっ。何故ですか?」
「いや、あの男の顔が恐怖に歪んでいるところや屈辱に歪んでいるところを見たら、胸がスッとするかなと思っったんだけど・・・思っても見なかったという顔ね。」
「ええ。もう終わったことですから。」
私がこの国に居るとバレるのがイヤだっただけで、もうなんとも思っていない。どんな顔であろうと二度と見たくない顔のひとつである。もうひとつのサキさんの顔は毎日みているけど。
---お父さま。正体がバレたおかげで雁字搦めになっていた自分を解放できているようです。




