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ハダカで抱き合ってました ~妄想してしまいました~

お読み頂きましてありがとうございます。

「ああ気持ちよかった。背中のキズと内股だから、これくらいかな?」


 レイティアさんは冒険者ギルドに貼ってあったマッサージの日当の何倍ものチップをはずんでくれた。


「多過ぎます。」


 余りの金額の大きさに返そうとするのだけど受け取ってくれない。


「何度も言うけど、そんなことないのよ。背中のキズが無いだけでどれだけ、私の価値が上がると思っているの? それに内股のへこみは職業病だから、仕方が無いと諦めていたけど。これで借金を返したら、堂々と辞められるわ。」


 レイティアさんを含め、こういったところへ多くの女性が借金を背負わされて売られて来ているのは知っている。嘆かわしいことだと思うけど、餓死するよりはずいぶんマシなはず。それを拒否するということは自ら死を選ぶということに他ならないことで聖霊の神はお認めにならない。


 それでも皆さんは、借金を返せば今まで通りに生きていけるものだと思っていたけど違うの?


「えっ。どういうことですか?」


「あのね。娼婦を辞めるには、お客さんに身請けしてもらうか。自力で借金を返済するしか無いの。それはわかるよね。」


 借金を返さずに出て行かれたら、借金をされた側に取っては丸損だもの。どんなことをしてでも連れ戻すよね。


「ええまあ。」


「でも多くの娼婦がなかなか辞められないのは、何故だと思う? 見る人が見れば、この内股のへこみ具合で娼婦をしていたことが一発でバレることなの。つまり、このへこみがなければ、いつでも辞められるということなの。他の街に行けば、新しい旦那を見つけて結婚することも夢じゃないじゃないね。」


 なるほど、娼婦をしていたことを旦那さんに黙って結婚することには異論があるけど、理解ある旦那さんを見つけても周囲の人たちにバレたら、旦那さんもツラい思いをするものね。


 だから生涯、娼婦で生活をする女性がいるのか。なるほどね。


「わかりました。これはありがたく頂戴しておきますね。」


「皆のマッサージが終わったら、もう一度寄って頂戴ね。皆に宣伝しておくから、女子会しましょ。」













 部屋を出るとシセイさんが待っていた。


「お待たせいたしました。」


 次にマッサージを受ける女性のところへ連れて行ってくれるらしい。


「フラウちゃん・・・あのさ。あの男って、フラウちゃんの何?」


 シセイさんが歩きながら聞いてくる。


 私は元婚約者と告げようとして思いとどまる。そういえば、私も異世界から召喚されたことになっているんだった。まるで昔付き合っていたかのようなことを言ってしまったし、物凄く矛盾してないかな。


「話すのが嫌ならいいよ。俺たちが来たばっかりのころ、訓練ばかりで放っておいたときに何かあったんだよね。」


 私が黙り込んでしまったのをどう誤解したのか。そうフォローしてくれる。


 異世界の人たちって、何故いつもこうやって先に話を考えてくれるんだろう。


「そうなんです。」


 そしていつも言葉尻に乗せてもらうことになっている。


 ひとつの嘘を隠すために多くの嘘を吐くことになってしまっている。


 もういい加減に止めたいんだけど、言ったが最後自分の命に関わってくるとなれば、イヤでも嘘を突き通すことになっている。


 エミリー王女には悪いけど、そろそろ彼らを異世界に帰すことを考えたほうがいいのかもしれない。


 実は夜中に『転移』魔法で祠に戻り、術式の本を読みながら召喚の術式を読み解いていたんだけど、面白いことがわかったの。


 あの術式は、召喚と送還がワンセットになっているらしい。召喚後1時間のあいだに出てきたところを戻ったら、元の世界に戻れたらしい。道理で召喚された3人のうちひとりが消えてしまったわけだわ。あの人が意図的に戻ったのか偶然戻れたのかはわからないけど。


 召喚では普通3人と人数まで決まっているが魔力を投入する人間の意志に従って、ひとりに人物を指定することもできるらしい。


 例えばワザと失敗するような指定の仕方をして召喚したあと、あの場所に彼らを押し込んで送り返してしまえばいいと思っている。


「そっかぁ。大変だったね。これからはもっと頼って欲しいな。・・・ここだ。ここだ。今日はこのお姉さんで終わりだって。俺はレイティアさんの部屋の前で待っているね。」


     ☆


 そのお姉さんには散々遅いと文句を言われて、お客様の予約があるからとほんの少しマッサージしただけで終わってしまった。


「あれっ。居ないなあ。」


 シセイさんはレイティアさんの部屋の前で待っていると言っていたよね。厠かな。


 待っていても仕方ないから扉に手を掛けた時だった。


「シセイ。痛い。この下手くそ。」


 中からレイティアさんがシセイさんを罵倒する声が聞こえてきた。なんだぁ、シセイさんったら中に入っているんだ。


 扉をそっとあけると裸の男女が絡み合っていた。そのまま気付かれないように扉を閉めた。


ーーーお父さま。何故私はこんな光景ばかり目にすることになるのでしょうか?


 あのまま知らずに踏み込んでいったら、どうなっていたんでしょうか。


 これ見よがしに仲が良いところを見せつけられるところだったのでしょうか。


 破廉恥だと思うのは、私が処女だからでしょうか。私が堅すぎるだけなのでしょうか。


 レイティアさんはエッチの大事さを私に教えようとしてくれているのかもしれない。


 聖霊の神よりももっと大事なのだと教えてくれているのかもしれない。


『お祈りする暇があったら、エッチの勉強でもすれば?』


 どこからか、サキさんに言われた言葉が頭の中でリフレインする。


 エッチの勉強なんてどうすればいいというのでしょう。


 この部屋に入れば誰かが・・誰か・・・シセイさんが、教えてくれるというのでしょうか。


 きっと、そうなんだ。


 この部屋に入った途端、いきなり服を脱がされて、押し倒されるんだわ。


「フラウちゃん・・・フラウちゃん。」


「私、シセイさん私、やっぱりダメ!」


 突然、目の前に現れたシセイさんの顔に全力で拒絶してしまった。


 ヤバい。想像と現実がごっちゃになったよ。どうすればいいの!

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