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バカな男だけど ~簀巻きはあんまりですよね~

お読み頂きましてありがとうございます。

「あら。今日は早かったのね。」


 どうやら、昼から来る予定のお客様だったようである。


「だから、その男は何だ。1日に1人しか客を取らなかったんじゃ無かったのか。」


 この声は、まさか・・・。


「フラウちゃんは女の子なのよ。失礼でしょ。」


 後ろを振り向くと、そこにはオーディンが居た。何故? どうして、この国にオーディンが居るのよ。


「フラウ・・・お前、なんでここに・・・。」


 オーディンが私の腕を掴むと無理やり引き寄せる。


「何をするんですか。レイティアさんが気を悪くしますよ。」


「そうなんだよな。やきもち焼きで我が儘で・・・フラウは困らせるようなことをしなかったよな。」


「『いい子』でしたから。清く正しいのはウンザリなんでしょ。」


「悪かったよ。バカなことをしたと思っている。まさか、お前が『聖霊の「今ここでそれを言ってもいいの?」」


 まさか、この男は私のことを『聖霊の滴』と知らなかったのか?


 確かに戦争中は後宮に引き籠もり気味だと聞いていたし、王太子の前で『聖霊の滴』として挨拶したときには居なかったけど、大部分の王族は知っていたのに・・・。


 なるほど只の婚約者と思っていたなら、私を殺そうとするはずだわ。


 しかも、こんな敵国で『聖霊の滴』に話をしようものなら、どんな目に合わされるか想像がつかないわけ?


 本当にバカだったんだ。


「今度は大事にするから、俺たちやり直さないか? 約束しただろ「止めて。自分がどんなに都合がいいことを言っているか、わかっているの?」」


 この男、私をヴィオ国に連れて行けば、権力にしがみつけると本気で思っているんだ。


「だから、謝っているじゃないか。悔い改めたら許して貰えるんだろ。聖霊の神は寛大な方だからな。」


 何を言っているんだろうこの人。悔い改めるくらいで許して貰えると本気で思っているの?


 人を殺そうとしておいて、許して貰えるはずがないでしょ。


「私はそんなに寛大じゃないわ!」
























「ゴメン。フラウちゃん。そのお客様は入れて、別の女性のところへ行って欲しいって。」


 静まり返った部屋にシセイさんの声が響きわたる。


 場の雰囲気くらい読んで欲しかったな。


 私はシセイさんに駆け寄って抱きついた。


 どさくさに紛れてひと目見ようと入り込んで来たんだろうけど残念でした。既にレイティアさんは寝間着がわりの浴衣を着込んでいるよーだ。


 丁度いいや。シセイさんなら、こういった修羅場は沢山潜り抜けていそうだし、適当に話を合わせてくれそう。


「私。この人と一緒に住んでいるの。だから、やり直さない!」


 一応、隣の部屋だけど・・・王宮に用意された一室だけど・・・一緒に住んでいるよね。


「へえ。フラウがね。やるもんだ。しかも、相手は女衒と来てる。」


 オーディンは連れ戻すのを諦めたのか軽蔑した視線を送ってくる。別にこの男に娼婦と誤解されてもどう思われようと構わないから、訂正するのもバカらしい。


「最低だね。この男。」


「いいの。私、この男に感謝しているの。あんなことが無かったら、私は変われなかった。あの頃の私は大嫌いよ。今は自分の意志で自分を信じて頑張っているの。この男が運命の人じゃなかったと教えてくれた神様にも感謝します。」


「今に見てろよ。絶対に後悔するんだからな。」


 ヤバい。この男、ヴィオ国に私がここに居るって通報する気だ。


「ほら、お客様がお帰りだよ。やきもち焼きで我が儘な私は必要無いんだろ。もうこれっきりにしておくれ。そうだ、今ここでこれまでのツケも払って貰ってね。随分、貯まっているから。」


「そんな・・・今、そんな大金を持っているはずがないだろ。」


 オーディンが後ろに下がっていくと、受け付けで会った男がオーディンをガッシリと捕まえる。


 私を次の女性のところへ連れて行こうとしにきたところだったらしい。


「何をするんだ。離せよ。」


「決まっているじゃないか。有り金吐き出しても足りなければ、簀巻きにしてドボンが相場ってもんだ。誰でも知っているだろ。」


 失脚したからといって、こんなところで自国の王子が殺されたりしたら、また戦争が始まってしまう。


「ちょっと、それは止めてあげて。」


「フラウちゃんって、やっぱり優しいのね。あんな強烈なイヤミを言うほどの相手なのに。」


 イヤミって・・・本気で言ったのに、まさに魂の叫びだったのに。


「えっ。私本気で言ったんですけど。」


 レイティアさんどころか、シセイさんも驚いた顔をしている。何故なんだろう?


「凄いね。あれを本気で言えるの。神様に仕えているひとは、どこか違うんだね。まあいいわ。番頭さん、その男だったら、裏の店で働けるんじゃないかな。自分で使った金は自分で働いて払うのがスジだよね。」


「ああ。高貴そうな顔をしているし、これだけプライドが高けりゃー調教したい奴もゴマンと居るだろうよ。そうなれば、高い値段もつきそうだぜ。さあ来な。」


 番頭さんが腕を引くがオーディンは必死に抵抗している。


「どこへ連れて行くつもりなんだ。離せよ。」


 番頭さんの話をしっかりと聞いていればわかるだろうに、そこまでバカなんだ。


「簀巻きでドボンがいいか? 働くのがいいか? 選ばせてやるよ。」


「行くよ。行きます。こんなところで殺されるなんて真っ平だ。」


「全く初めからそう言やあいいのに。ダメだこりゃ。2回目以降は自ら腰振っていそうだな。まあ一生働けや。」


 番頭さんの見立てでは一生涯働いても返せない金額みたい。いったいツケがいくら貯まっていたんだか。


ーーーお父さま。あんなに憎んでいたオーディンだけど、簀巻きはあんまりなので助けてあげました。


 これで良かったのですよね。

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