ハダカを見せません ~男に間違われました~
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「この火傷の痕はどうしたんですか?」
顔を合わせたときには気付かなかったが、裸になってもらい。うつ伏せの体勢になると、背中に点々と火傷の痕が見えた。以前、魔法を使って治療したときは見られなかったものだ。
見える場所のキズ痕は薄くなったという程度に留めておいたけど、見えないところには綺麗に治したはずだったのに、どういうことだろう。
「これは人気が出て有頂天になって他人に対して気遣いが出来ていなかったんだろうね。お姉さん方に焼きを入れられたんだよ。格好悪いだろう。」
「酷い。でも火傷痕の特効薬があるんですよ。ちょっと痛いけど我慢してくださいね。」
火傷痕を削ぎ落とすようにナイフを入れる。
「つっぅ・・・痛い痛い痛い。痛いって。」
私はそのまま油壺から薬を塗りつける振りをしながら、『治癒』魔法を唱える。
「痛かったですか? すみません。」
戦場でも治したことがあるんだけど、屈強な兵士でも逃げ惑うから。レイティアさんは相当痛みに強いんだろう。
「フラウちゃんって手加減無しだからなあ。マッサージも効くけど痛いから、覚悟していたけど。ここまで痛いとは思わなかったわ。」
「見てください。今は真皮の状態で柔らかいけど、1週間もたてば元通りになりますから。」
背中が見えるように手近にあった鏡を移動する。
「本当だわ。綺麗になっている。」
パァっと表情が明るくなる。あんなことを言っても女性だもの、こんな火傷痕は嫌だよね。
「じゃあ、後5つも治しちゃいましょうね。」
「ちょっと待った! こんなに痛いんだったら、1週間に1個のペースにして。お願いっ。」
「そうですか? 一度に治したほうが痛くないですよ。」
痛みの度合いは変わらないけど、痛覚が麻痺してくると兵士たちも恨みがましい目で見られるだけで声も出せなくなるんだよね。そして皆さん、装備をキッチリ付けて火傷だけはしないように頑張ってくれた。
間を空ければ空けるほど、痛みに弱くなっていくみたい。痛い痛いって想像のほうが大きくなってしまうのかもしれない。
仕方がないのでいつもの通り、温石を『マジックボックス』から取り出して背中に乗せていく。
はっきり言ってマッサージは本職に負けるので、あらかじめ温石を置いて凝りを取っておく。温石は河原の石を纏めて『ファイア』魔法で熱してマジックボックスに入れている。
あとはゴリゴリに凝っている部分に少しだけ『治癒』魔法を施す。その際にバレないようにキツ目にマッサージするのがコツだ。そうするとその部分だけ再生されるので一気に凝りを血流に乗せていくと僅かな力だけで凝りが解れるらしい。
「はぁー。イイっ!! スンゴグ気持ちイイ。痛いけど気持ちイイっ。もっと強くてもイイわ。」
レイティアさんって、声が大きいんだよね。部屋の外まで聞こえるんじゃないかと思うくらいの声量がでているんじゃないかな。
何故かここの部屋の壁が厚くなっているから、外には聞こえないと思うけど、村では施術の度に何事かと覗きにくる輩までいた。部屋の前にはシセイさんがいるから大丈夫だと思うけど、押し入って来られたときには相手から裸が見えないようにフォローする癖がついている。
「じゃあ。仰向けになってください。」
レイティアさんの迫力満点のボディーがさらけ出した。流石は娼館で人気が出る娼婦さんだ。仰向けに寝ても胸の形が崩れていない。くびれたウエストからヒップまでのラインが素晴らしい。
それに比べて私ったら・・・止めておこう。泣きたくなってきた。
「なに?」
私がジッと見ていたから不思議に思ったのか聞き返してくる。
「綺麗です。私もこんなふうに生まれたかった。」
こんなふうに生まれていたら、違う人生が待っていたかもしれない。
「嬉しいこと言ってくれるじゃない。」
「はぁー。ここまで完璧だと、手を入れるところが無さそうですね。」
「そうでも無いのよ。この内股部分が不自然に広がっているでしょ。」
内股の付け根から膝にかけた曲線が微妙にへっこんでいるのである。
「本当だ。何故だろう。不自然に筋肉がついているみたいですね。」
その部分をなぞってみると変な方向に筋肉がついている。なんでだろう。
「はぅっ。そこは感じやすいところだから優しくね。」
「ごめんなさい。」
「いいのよ。フラウちゃんはまだ処女みたいね。」
ああそういうことか。エッチをするときに酷使をするところなんだ。思わず顔が赤くなる。
そのときだった。突然、大きな音で扉が開き、男がなだれ込んできた。
私はとっさに自分の身体でレイティアさんの身体を隠す。
「誰だ! その男はっ。」
酷いっ。いくら貧弱な身体だからって男は無いんじゃない?