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キレイなお姉さんは大好きです ~心暖まる出会い~

お読み頂きましてありがとうございます。

「へえ。君がマッサージね。本当に出来るの?」


 娼館の受け付けで男性に張り紙を見せる。この依頼は冒険者ギルドだけでは受け付け出来ない。


 街の中でする仕事の場合、大抵こうやって仕事の現場で受け付けが必要なことが多い。掃除婦なんかもその類である。


 男は私の全身を舐め回すような視線を向けてくる。娼婦の応募に来たんじゃ無いんだけど。


「ええ。教会でやっていましたから。」


「そっか。なら大丈夫だな。そっちの男もマッサージをするのかい。男のマッサージは女たちが嫌がるから、娼館の裏にある旧館で男たちにやってもらおうかな。」


 そういえば男娼の館って、この近くだった。もしかして・・・。


「違います。シセイさんは付き添いです。」


 シセイさんはマッサージが出来ないから断っておいたほうが無難よね。


 それに良い言い訳も考えてある。


「時折、こういったところのお客様にマッサージを所望されるんですけれど、そういったマッサージはやっていませんので、事前に説明をお願いしますね。今日だけはこの男が断りますから。」


 ヴァディス王国の貴族とかが強引にマッサージを強要してきたら、身分証であるギルドカードを見せるしか無いけど、出来ることならば穏便に引いて頂きたい。


 そういうときには、間に男性が入って貰ったほうが交渉しやすい。


「なるほど、今日も昼からお忍びのお客様がいらっしゃるから、粗相の無いようにな。しかし、惜しいな。この兄ちゃんなら、常連客がわんさか付きそうなのに・・・。」


 やっぱり、私の勘は正しかったらしい。















「まずは、この部屋の女だ。ここのお姉さんは昼からお客様が付いているから、それまでゆっくりとマッサージするんだ。」


 ここまで連れてきてくれた男性が居なくなったあとで私は、扉の近くにシセイさんを座らせると、扉をノックして中にスルリと入り込む。


 しどけない姿でもしていて、襲いはしないだろうけど口説きだしたら困るからね。


「フラウと申します。よろしくお願いします。」


 扉のすぐ内側に正座をして頭を下げた体勢で言葉を紡ぐ。


「フラウちゃん・・・本当にフラウちゃんだ。」


 頭を上げるとそこには知っている顔があった。


「レイティアさん。」


 彼女は祠の近くにある村の女性である。農地を沢山もつ農民の娘さんでその村でマッサージをさせて頂く際に場所を貸して頂いたのである。


 だけど彼女も農民の娘、大凶作にみまわれたある年に売られて行ってしまったのである。


「フラウちゃんとこんなところで会えるとは思わなかったわ。元気そうね。相変わらず、お金に汲々としているの?」


 私って、そんなふうに見られていたんだ。確かに着るものだけは贅沢していたから一生懸命にお金を貯めていたかな。


「まあね。レイティアさんもお元気そうですね。」


「フラウちゃんのお陰よ。フラウちゃんが私をピカピカに磨き上げてくれたから、人気が出てこの館でも良い暮らしをさせてもらっているのよ。」


 レイティアさんが売られて行く前日に少しでも高い値段が付くように磨き上げて欲しいと依頼されて、少しばかり『治癒』魔法を使ったのである。


 秘技と偽り、日に焼けた彼女の肌にオイルを塗り、元の真っ白な綺麗な素肌に蘇らせたり、農作業で痕が残ったキズを治したりした。


「あれが私の仕事だもの。それに沢山親切にしてくれたレイティアさんに少しでも恩返しができたなら嬉しいです。」


「でも、全然お金にならなかったでしょう?」


 もちろん、村でマッサージしていたときのひとり分の値段と一緒だ。


「ううん。そんなこと無かったよ。レイティアさんが行ってしまってから少しだけ余分に頂いたから。」


 本当のことを言って、今から払うと言い出されても困るから、そう言って置くことにした。


 どう考えても今の私の方が彼女よりも恵まれている。


「嘘ね。すぐそうやって優しい嘘をつくんだから、フラウちゃんったら、本当に変わらないのね。代金の代わりに農作物を持ってきた人が居たじゃない。あのときも、笑って『大好物なんです。』って言っていたじゃない。」


「本当ですってば。」


「だって私見たのよ。あの後、市場で買い取って貰ったら二束三文にしかならなくてため息をついている姿を・・・。」


「ええっ。見たんですか。やっぱり、違う村に売りに行くべきだったかな。」


「そうね。あのときのお礼は、この娼館界隈で評判を広めておく・・・じゃあ足らないなあ。そんなことをしなくても勝手に評判は上がっていくだろうし・・・何か考えておくね。」


 なんかどんどんと話が大きくなって収拾がつかなくなってしまった。あまり近付かないほうがいいのかなぁ。


「それといつでもいいから1週間に1回は、ここに来て私をマッサージすること。チップ弾むからね。」


 はは。前に凄く良かった良かったと仰るお婆さんに沢山チップを貰って喜んでいたことまで覚えているみたい。恥ずかしいなぁ。


ーーーお父さま。見返りを期待せずに行ったことが自分に素敵な出会いとして返ってきました。


 なんか久し振りに心が暖まり気持ち良く寝られそうな気がします。

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