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フタマタ現場を押さえました ~私が一番罪深い~

お読み頂きましてありがとうございます。

「フラウ。どうしたの? ぼーっとして。」


 今日はエミリー王女とお出掛けです。エミリー王女は気の許せる友達が居ないそうで私とお出掛けするのも楽しいと言ってくれます。


 でも、彼女の恋人であるシセイさんのことが頭をついて離れないのです。こうやって出掛けているときでも、前にあの店に居たなあとか思うとついついそちらに視線を向けてしまいます。


「ううん。本当にリュウキさんの恋人が私で良かったのかなって。」


 晴れて恋人となったんだけど、前にも増してリュウキさんは私を守ることに固執するようになったみたい。


 訓練に明け暮れ、前は嫌がっていた魔物を弱ったところを殺すことについても積極的にいくようになっている。


「フラウはエラいよ。あんなに酷いことを言われたのに許せるなんて。私の親友に何を言っているのって、思わず強権を発動して罰を与えてしまうところだったわ。」


「嬉しいけど、それは止めて。止めてください。」


 親友なんて言って貰える資格なんてないのに・・・。でも、それを出来る立場に居るんだから、シャレにならなさすぎる。


「わかっているわよ。そんなことはしたことがないからね。何が不安なの? ちゃんと話してみて。」


「だって、デートもしたことがないのにいいのかなって。その点、エミリーはいいよね。シセイさんとデートできて。」


 ほかにもデートしている女性がいるよなんて・・・。


 本当のことを知ったらエミリー王女がどういった反応を示すだろうか。


 きっと怒るよね。凄く嫌なはずだわ。


 どうするんだろう・・・別れるのかなぁ。


 私なら嫌だ。今はオーディンと別れて良かったと思っている。


「いいでしょ。それなら、フラウから誘ってみればいいじゃない。例えばさっきフラウが見ていた店なんて、2階に個室があって恋人同士でくるのにピッタリだって噂よ。どんな店がいいかわからないんだったら、今から下見しましょ。気に入ったら、リュウキさんを連れてくればいいじゃない。そうしましょ。」


「ええっ。いいよ。」


 そんな万が一、シセイさんがこの店を使っていたら、修羅場になってしまう。ダメ、それだけは絶対にダメ。


「遠慮しないで・・・。」


 ダメなのに・・・。でも、ダメなんて言えない。訳も話せない。そうしている間にもエミリー王女が私を引っ張っていってしまう。そうよ。この店をシセイさんが使っていると決まってないんだし、使っていても個室だったら、バッタリ会うなんて危険性も少ないはずよ。


 そう思っていたのに・・・。


「シセイ!」


 2階に通じる階段でバッタリなんて、どうしてっ。


 そこには女性の肩を抱いて降りてくるシセイさんの姿があった。明らかにデートだ。2階には個室しか無いという話だし、単なる友達には見えない。


 私がそこに視線を向けなければ良かったのよ。


「お楽しみだったみたいね。シセイは私のものよ。わかっているわよね。ツェッペラー伯爵令嬢。」


「これは、殿下。ひらに・・・ひらに・・・。」


 相手の女性が階段を駆け降りてくると私達の前で床に顔をこすりつけている。酷く震えている。


 どこかで見た女性だと思ったら、お披露目の席でエミリー王女に紹介してもらった貴族が連れていた女性だった。寄りによって、そんなひとと交際しているなんて、どういう神経をしているのよ。


「さあ行きましょフラウ。シセイもよ。」


 エミリー王女が平然とした顔で右手で私を左手で呆然とするシセイさんの手を取ると2階に上がっていき店員さんが案内する個室に入り込んだ。



















 気まずい。気まずいなんてものじゃない雰囲気の中、それぞれが飲み物を頼む。


 てっきり修羅場が始まるものだと思ったのに、そこにあったのは氷の国だった。外は暖かい陽気で部屋の中も寒い筈がないのに暖かい飲み物を頼んでしまった。


「フラウ。どういい雰囲気でしょ。ここならリュウキさんと2人っきりラブラブできるわよ。」


 エミリー王女が何も無かったかのように喋り出す。


 あ・・・ああ、私に話しかけているのよね。なんと返せばいいの。頭の中がパニック状態で上手く纏まらない。


「シセイさん。あの女性は何?」


 パニックになった私の頭はとんでもない返答をしてしまう。


 ヤダヤダ。なんておバカなの、私の頭。


「ごめんなさい。フラウ飛んでもないことに巻き込んでしまったね。」


 しかも一番ショックを受けているであろうエミリー王女に気を使わせている。


「でも知っておいて。彼女は死ぬ。私が何もしなくても自決するの。自分たちが担いでいるものを汚してしまったからね。彼女の死が無駄になってしまうから、シセイが異世界に帰るまで別れてあげられないよ。」


 エミリー王女は誰に向かうでもなく呟く。


 シセイさんは驚いた顔をして口だけがパクパクと動いている。


 声が出なくなっているところをみると彼の常識では考えられない結末なのだろう。


 だけどそうなることを私は知っていた。知っていたのに、こんなところにエミリー王女を連れてきてしまった。異世界人のシセイさんにとっては青天の霹靂だろうけど、ヴィオ国で王族に囲まれていた私はわかっていたはずよ。この中で、私が一番罪深いに違いない。


ーーーお父さま。私は犯した罪を悔いながら、告白する勇気も見いだせずにいます。


 私はなんて罪深い女なんでしょう。

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