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バカな男を寝取られました ~プロローグ~

手に取って頂きましてありがとうございます。



 聖霊は 理想の形に人間を おつくりになられた

 そして 祝福し 愛するために 地上に降ろされた


 人々は 産まれる前から

 聖霊に 愛されている のだから


 きみは しあわせに なるために

 愛されるために 聖霊が わたしたちのところに

 おつかわしになった 使徒なのさ





 フラウ・・・

 きみは しあわせに なるために

 生まれてきたんだよ。
















 そう聖霊教会の神官だった父はいつも私に言っていたけど・・・


 これは、聖霊が私に与えた 試練って ことなのだろうか?



 それとも、この男が私の運命の人じゃないと


 聖霊が 私に 教えてくれているのだろうか?



 

 目の前では、私の婚約者が見知らぬ女を押し倒していた。


 超ロングの黒髪に黒い瞳とこの国では珍しい外見をしているのに、薄化粧が上品で綺麗とされているこの国では下品過ぎるくらいの厚化粧。


 バサバサと音がしそうな付け睫毛に太目のアイライン、しかも青いアイシャドウが映える白い肌に毛穴を埋めるほどのファンデーション。細く長い眉毛に血が付いているのかと思うほどの真っ赤な口紅をしていた。


 綺麗だがあまりにくっきりとしている容姿が私の瞳に焼き付いてしまった。




ーーー聖霊さま


 

 この男は、オーディンはこの国の王子で『聖霊の滴』である私にピッタリと聖霊教会の像の前で今は亡き父である大神官が将来を誓いあわせてくださった。


 なのに何故知らない女性をベッドに押し倒しているのでしょう。


「フラウ・・・お前、帰ったんじゃなかったのか。」


「そうだけど・・・忘れ物があって戻ってきたの。」


ーーーこんなときに何を言えばいいのでしょう


「これオーディンが好きだと言っていた果物。隣国に行った侍女が買ってきてくれたの。」


 私は渡し忘れていた果物を取り出して彼に見せる。隣国ヴァディスとは休戦状態なので毒殺が怖くて食べたくても食べられないと言っていた果物。


「いいよ。」


「だって!」


「いらねえよ。なんで、この状況を見て果物なんだよ! 他に言うことがあるだろ! 俺はエッチしようとしてたんだぜ。」


「だって、なんて言えばいいの。」


「清く正しく美しい関係なんてウンザリなんだよ。」


「エッチなんて夫婦になってからするものでしょう?」


 少なくとも私はそう習ったし、聖霊さまがお残しになった言葉のなかにも、そう書かれている。


「それが嫌なんだよ。俺は王子だぞ。この国の王子だ。エッチひとつままにならねえんだよ。近隣諸国ではハーレムを持つのが普通だってのによ。」


 あまりの剣幕に涙があふれて止まらない。


「なんで、オーディンが・・・怒るの?」


 私が何かしたの・・・。


「エッチもさせてくれない婚約者なんて最悪ね。」


 突然、オーディンが押し倒していた女性が話に割り込んでくる。


「キララ。帰るのか?」


 その女性は下に脱ぎ散らかしていた服をつけはじめる。


 想像通り、胸元が開いた服に短いスカート。派手にキラキラしたイヤリングに真っ黒な何か動物の皮で作ったと思われる鞄。動物の皮に手を入れるなんて、聖霊さまが禁じていることを平然としている。


「仕方無いでしょ。修羅場に立ち会うほど酔狂じゃないし、また明日来るわ。それまでに整理しておいてね。その女。」


「わかった。明日は帰さないぞ!」


「聖霊さまも役立たずね。それとも可愛い人間には試練なのかしらね。私なら、いらないわ。そんな神さま。」


 その女性は聖霊さまを侮辱する言葉を吐き捨てると、さっさ部屋を出て行った。

 

「おい待てよ。送って行くよ。」


 彼が慌てて服を着るとその後を追って出て行った。









ーーー聖霊さま


 貴方は仰いましたよね。人を憎むなと。



 家に帰り着くと泣いて泣いて、泣きながら眠ってしまった。


 もう優しく包み込んでくれる父はいない。


 朝、起きても頭の中で昨日、オーディンやキララという女が言った言葉がリフレインされて落ち着かなくなり、聖霊教会の像の前でお祈りしている。


 ここは清浄な空気が流れていて落ち着く。さらに聖霊さまに向かって祈っていると、スッと心が軽くなってくる。


「ねえ。貴女? ここに5歳くらいの女の子が居ないか知らない。もしかすると『聖霊の滴』と呼ばれているかもしれないんだけど・・・。」


 後ろから声が掛かった。


 私は振り向くともう少しで声を上げてしまうところだった。


 昨夜、オーディンがキララと呼んでいた女がそこにいた。


「お祈りする暇があったら、エッチの勉強でもすれば? もう遅いか。聖霊さまに縋るよりも効率がいいと思うんだけどなあ。」


 相手も一瞬驚いた顔をするが、すぐに立ち直って酷い言葉を吐き捨てるように言うと教会を出て行った。















 いったい、どれだけ呆然としていたのだろう。


「お嬢さま。大変です。屋敷に近衛兵が押し掛けてきて、お嬢さまを出せと言うなり、屋敷の中を捜がしだしました。」


 視界に親しくしている侍女が入ってきて、凄く興奮した口調でまくしたててくる。


 その後は、悪夢の連続だった。


 オーディンからの一方的な婚約破棄。


 父が当代限りの名誉侯爵と聞かされた後、お家取り潰し家財没収。


 そしてオーディンに口答えをした罪での公開処刑が明日と決まり、私は牢獄に入れられていた。




 フラウ・・・


 どんな出来事や 出会いも


 聖霊からの プレゼントなのさ


 大事に しなきゃ いけないね




「お父さま・・・。婚約破棄も家財没収も公開処刑も 聖霊さまのプレゼントなの?」


 イケナイことだと思いながら、亡き父の姿を思い浮かべて口答えをしてみるが、どこからも答えが返ってこない。







「ふえっ・・・ふえぇん。あぁーん。もうヤダ。なんでこんな目に遭うのよぉ。」


ーーー聖霊さま 居るんだったら 助けてよ


ーーー殺されたくないよ


ーーーお父さまとの思い出の詰まった屋敷や家財道具も返してよ


ーーーオーディンなんか要らないよ


ーーー毎日お祈りもしたし 清く正しく生きてきたじゃないの


ーーーもういやっ 聖霊さまなんて居ないんだわ


ーーー期待しない 我慢しない いい子でなんか居たくない


ーーー聖霊さまなんて 絶対に 信じないっ

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