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深夜3時の明るいラジオ  作者: ちな
2/2

~テーマ2 失恋~

とある都市伝説がある。

土曜日の深夜3時にラジオが流れないはずの周波数のノイズの中からラジオ放送が開始される。

そのパーソナリティーの女の子は人間ではないと言うのだ。






今週もまた土曜日の深夜がやってきた。

いつものように古いラジオブースにいる理世はどこか不満そうだ。

「毎回こうだけど失恋がテーマの時ってなんでこんなに投稿多いの・・・」

理世の目の前に山積みにされているのは投稿されてきた資料だ。

そんな理世をまぁまぁ、となだめる空も仕方ない、という雰囲気。

「そら、失恋はやっぱりつらいものだからな。死にたくなるほどの思いだって抱えるだろ。」

大体・・と続ける。

「投稿してくれる人達もほとんどが若い人だし・・な。」

死者を相手にするラジオの投稿者とはつまりお亡くなりになた方々だ。

若い、しかも自殺者となれば言いたいこともいっぱいあるだろう。

それをこのラジオを通して何かしら伝えたいのだろう。


「ほーら、今日も始まるぞ・・あぁそうだ。理世。今日のゲストは男だ。」

…マジか。という顔で固まる理世。

失恋でのゲスト・・てっきり女の子だと思ってた。

そういえばこのテーマで男は初めてだ。どう対処しよう。

そんなことを悩んでるうちにラジオの時間はやってくる。




「深夜3時です。らじお理世がお送りする深夜3時の明るいラジオー」

いつもの口上から放送が始まった。

空はいつものようにラジオブースの外で機器を操作しながら放送を見守る。


理世の様子は少しだけ困惑してるようだ。

「はい。今日のテーマはですね。毎回好評のある『失恋』です。

 いやね。理世はまだまだ恋愛は初心者なんですがー。いつか上級者になれるんですかね、耳年増にだけなっていく気がします。」

などと話してるとあたりの空気がかわり…ゲストがやってきた。

理世は少しだけ考え込むそぶりをした後、一つうなずいて。

「今日のゲストさんはこのテーマでは初!男性の方です。

 いらっしゃいませ、このテーマでよく来てくれましてありがとうございます。」

ぎぃぃ、となる椅子に姿を現したの高校生くらいの男の子。

うつむきがちな表情でこちらをあまり見ない。

「えぇと・・失恋、ということで・・どのような状況だったのかな?話してもらっていい?」

扱い方に少し困るな。と思いながらも話を進める。

「・・はい。好きな女の子・・というか彼女がいたんですが。浮気されてまして・・・」

ふむふむ・・とうなずく理世の表情が真剣な表情から少し変化していく。

「・・ぼくがいるにもかかわるほかの男に電話したり、他の奴とあったり。」

発言内容が少しおかしくなっていく、空の表情も厳しいものだ。

…理世は何かを握りしめる。

「それだけならまだしも他の男を家に上げたり・・守らなきゃ、と思って家の周りを見てたら家に来るな、といわれてしまって…」

理世の表情が明らかに怒りとあきれの表情に変わった。

おもむろに立ち上がり『何か』をふりかぶっておもいっきり殴りつけた。


『スパーン!!!!』


「それはストーカーやんか!失恋と違う!あんたがわるい!」

・・・理世が手にしてるものそれは『ハリセン(対霊用)』だ。

それでおもいっきり目の前の男を殴りつけたのだ。

「いたっ!!!ぼく・・ストーカーですか!?そんなつもりは・・・」

心外だ、と涙目で見上げる少年に理世は仁王立ちする。

「じゃあ聞くけどちゃんと女の子に告白したの?それでOKもらった?どうして電話したのしってるの?あそびにいったことも?」

もはや公開説教。・・・いつものことだ。

「そ・・それは・・ぼくがこんなに好きなんだから向こうも嫌いなわけないし。態度はツンデレなんだろうって。」

おどおどと答える彼に理世は容赦ない。

「あんたバカ?自分が好きだから相手も好きってそんな都合のいい話あるわけないじゃん。好きでもない男に付きまとわれて彼女だって怖かったと思うよ。逆に考えてみて?

 もしあんたのことを好きな女の子がいて、あんた別にその子好きじゃなくて。でも執拗に追い掛け回されたらいやでしょ?」

まったく・・という感じで理世は椅子に座りなおす。

「・・今回はもう死んじゃったからやり直せないけど。次そういうことがあったらちゃんと考えるんだよ?」

うつむいた彼に理世は優しく語り掛ける。


「・・人を好きなることは、すごく奇跡的なことなんだよ。

 何億といる人がいるこの世界で、偶然同じ時代に生きて、偶然一緒に過ごす機会があって、そしてたった一人に惹かれる。

・・・だからこそ一生懸命になるし失敗だってする。でもね。いつか・・過ちを過ちだと認められたらそれは自分にとっていい恋だと思うの。」

それが独りよがりの恋愛であったとしても・・と続ける。

「あなたが犯したことは間違いだったと思う。でも誰かを好きになったことは間違いではない。次の生では間違えないで。伝え方を・・・そして幸せな恋愛、するんだよ。」

うつむいた彼に理世は優しく語り掛ける。


さて・・と気を取り直して次のコーナーへ進む。

いつも通りギャグなんだかよくわからない投稿コーナーは笑いに包まれる。

「次のお便りです『こっちに来るときほかの人を好きになった』おぉぅ!まさかの心変わり!

『死ぬときに両思いだって知った』まって!告白してなかったんか!

『こっちくる瞬間そういやあんまり好きじゃないって思った』ちょっ!気づくの遅い!残念なやつ!

『こっちで好きになった人に振られたー!』うん、生まれ変わったらがんばろー!

『りーちゃんだいすきー!』はーいありがとーございまーす!」


どんなに暗いテーマでも最後には明るくしてなってしまうのが理世のラジオで理世の性格のなせる業だろう。

「まぁ、失恋というつらい経験を乗り越えて次のステップにみなさんいきましょう。

来世ではきっといい恋愛をしてくれるって理世は信じてます。」

こうしてラジオは終わっていく。

「ゲストさんもきっと幸せになるんだよ、来世はちゃんと相手の気持ちを優先させてね?」

もう少年はうつむいてはいなかった。

穏やかに微笑んでうなずく。

つたない理世の言葉に何かを思い・・そして決めたんだろう。

「・・ありがとうございます。次こそは・・間違えない。」

うん、と理世はうなずいてラジオをおわらす。



「さてっ一時間という短い間でしたがお付きあいありがとうございましたっ。お相手は理世でした。皆さんまた来週会いましょう!」


こうして今日も深夜のラジオは終わっていく。

少年も笑顔を残して去っていった。




オンエアーがおわって一息つくと、空がお茶を持って入ってきた。

「お疲れ・・はい、今日はチーズスフレだ。」

ラジオが終わった後のお茶がなによりの理世の楽しみでだ。

「わーい。相変わらず空のケーキおいしいなぁ・・また腕あげたね。」

幸せそうにケーキを食べる理世を見る空の瞳はどこか優しい。

「そりゃ毎週つくってればな・・。」

太るぞ、といえばむっとした表情を受かべる理世に笑みを浮かべる。

「まぁ多少お前はもう少し食え、相変わらず細すぎだ。

 それはおいとて次回は『死んでから知ったこと』だ。」

またさらりとそういうことを言う・・と頬を膨らます理世の表情はどこか幼い。

「死んでから知ったことか・・もはや生きてるうちに知らないこといっぱい知ってる気がする。」

たしかにこんなことやってれば知識はどんどん増えていく。

まさに経験者の『生の声』を否応にも聞いてるから。

「まぁそういうな、明るい話題の方がやりやすいだろ?」

明るい・・・ねぇ。

相手が相手だけに明るいも何もないのだが。

「まぁそうだけど・・・ね。」

こうして二人の夜は今宵も更けていく。


いつものようにたくさんの投稿はネットにつながっていないパソコンに送られてくる。

もはやなれた、いつもの心霊現象だ。




とある都市伝説になっている深夜のラジオ。

次回の放送テーマは『死んでから知ったこと』です。

どんな投稿、ゲストが来るのかおたのしみに?

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