不器用
「あれが欲しい、これも欲しい。
どれか1つなんてとても選べない。
なら考えるまでもない、全部、私の物にしよう」
その欲深さはどうしようもなく人間臭く、果てなき渇望に身をやつす姿は酷く醜い。だがそれがいい。どこまでも純粋に、己が為だけに何かを欲し、それを手に入れんと死に物狂いになる。それは人間の本能と言っていいだろう。
しかし、そうしてあらゆる物に矢鱈と手を伸ばした先はどうする。それらを一切の無駄なく、一寸の狂いもなく、十二分に活かすことが可能か。私には到底できそうにない。器用貧乏と後ろ指を差されるくらいなら、いっそ私は不器用でいい。不器用なりに、狭く深く、専門家と豪語できるまでになってやろうじゃないか。