1.Welcome to East Horn!
日間16位達成!PVももう少しで30000!!!
ありがとうございます!
やっぱり評価されると嬉しいですね。
メェル王国編です。
今回はちょっと短め。
***
森を抜け、しばらく草地を歩いていくと、街の外壁らしきものが目に入ってきた。
メェル王国の西の端、【イストホルン】。
西の端なのにEastなのは、ようは【ホルン大山脈】【ホルン大森林】の東の街だからだろう。
メェル王国は豊穣な土地の上、北部は海にも面しているためか非常に豊かな国であり、治安も良い。
今代の王もこれまた優秀な人らしく、まさしく理想の国である。
そしてこの国の西にあるこの街は人口こそ決して多くはないが、のどかな雰囲気をもつ小綺麗な街である。
ちなみに、国の果てにあっても宿場町や商業都市としての役割は果たしていない。
というのも、メェル王国の西隣には【ホルン大森林】とさらにその西には険しい【ホルン大山脈】があるので、商人や旅人はこの国に入るのにはここを通らず、南の関所から入ってくるのが普通だった。
ここを通る馬車といえば、【ホルン大山脈】の麓かあるいは越えたところに集落のある少数民族に、関係するものくらいだった。
そんなわけで、お決まりのような「街に入る人の順番待ちで門が混雑している」ということは起きるはずも無く、ランヤは退屈そうに欠伸をしている門番に話しかけるのだった。
「街に入りたいんだが」
「ん?見ない顔だな。ハンターじゃなさそうだな。身分証になるものはあるか?」
この世界には身分証があるのか、進んでいるなと思いつつ、ランヤは考えていた言い訳を話す。
「実は俺は山の麓の集落から出てきた人間でな、身分証は持っていないんだ」
「んん、そうか。でもさすがに身分証もなくてそんな怪しい仮面つけてるやつは入れらんねえなあ」
「ああ、これは別に素性を隠しているわけではない。俺の容姿は目立つからと集落を出るときにもらったものだ」
そう言ってマスクをとる。
「うぉっ、なんだよすげえ色男じゃねえか。確かにこれは目立つな」
「というわけなんだ。通行料程度なら払える金はあるから入れてもらえないだろうか」
「おぅ、別にいいぜ、兄ちゃん悪いやつじゃなさそうだしな。今日はもう遅いから明日にでもギルドに行って身分証発行してきて見せな。通行料は2000クレーだぜ」
賄賂でも払う必要があろうかと考えていたランヤは、そのあまりのあっけなさに少々拍子抜けする。
(存外ゆるい警備だな。それにしてもギルドか。中世ヨーロッパにあったあれか?)
「ギルドの場所はどこだ?」
硬貨を渡しながら尋ねる。
「中央広場の真正面だ、行きゃあ分かるさ。オレはウルド。一応この街の警備隊長やってる」
「そうか。俺はランヤ・リンドヴルムだ」
「おう、なんかあったら頼っていいぜ、ランヤ。ようこそ、【イストホルン】の街へ!」
そういってニカッと笑顔を見せる。
「ああ、そうだ、一つ聞きたいことがあるんだが」
「なんだ?」
「この街の領主、またはこのあたりの地方を治める領主の家系に、10代半ばの少女はいるか?」
「はあ?いや、この街の領主様はまだ若くて結婚もしていないはずだ。で、この地方を治める辺境伯には...どうだったか。確かまだ幼い息子がいたとかそんな感じじゃねえか?」
「そうか、じゃあこの国の王族──王家だったらどうだ?」
「おう、クラリス第一王女のことか?えれえべっぴんさんで民思いだって有名だぜ。確か今年で15だったかな。それがどうかしたか?」
「ああ、いや、分かった。変なこと訊いて悪かったな」
(ではあれは第一王女の可能性が高いか...しまったな、【神書庫の鑑定眼】をちゃんと使っておけばよかった)
そんなことを考えながらランヤは門をくぐり、街へと足を踏み入れた。
***
ランヤが街に入ったころはすでに西日が沈み始めていたため、情報収集とギルドへ行くのは諦め、宿をとるために街を見て回ることにした。
【イーストホルン】の市場はいまだ活気付いていて、宿も特に問題なく見つかった。
ランヤが泊まることにした宿【不死鳥の止まり木】は実はこの街1番の高級宿で一泊大銀貨2枚──2万クレーと非常に高く、普通はランヤのような旅人が泊まるような宿ではなく貴族御用達のような宿だったのだが、ランヤの身形がいいことと若干【気品】スキルを使ったことにより特に渋られることなく宿泊できた。
ランヤがこの宿を選んだのはもちろん彼の自尊心を満たすため、では無く。
ひとえに鏡が必要だったからだ。
当然、ランヤがオシャレさんというわけではなく──別にセンスがダサいわけではないが──単純にある「能力」を確認するためだ。
***
久しぶりに暖かいお湯で身体を清めたランヤは、服を着なおしたあと鏡の前に立つ。
ランヤが確かめたい能力──それは【龍人化】と【鬼化】だった。
本当は【龍化】も確かめたいのだが、下手に変身して巨大化する、なんて失態は犯せない。
単に身体能力を確認するだけなら鏡を使う必要は無いのだが、ランヤにとって重要なのは「人前で使っても問題ないか」だった。
そのためには姿形の確認が必要なのだ。
この世界──というかこの国では、亜人は人間と同等の権利を持っているのは街を歩いていて分かったが、いかんせんいまだランヤの持っている情報は少なすぎるし、そもそも亜人はともかく魔族が人間と同じ扱いかどうかさえ怪しかった。
少なくとも、街中を出歩いているような異形──【神書庫の鑑定眼】で確認していたのだが──はいなかった。
もちろん、仮に魔族の扱いが正当なものでも、あるいはランヤの変身後の姿が人とほとんど差異がなくとも、彼がこの能力をホイホイ使うわけでないが。
とりあえず、能力を使う前に【ステータス】で内容を確認する。
**
【龍人化】
龍の力を持った状態での人の姿。
【咆哮】【飛翔】が使用できる。
生命値、筋力値、耐久値、器用値が4倍、それ以外の能力値が2倍になる。
姿形は亜人の竜人族に近似している。
【鬼化】
鬼の力を持った状態での姿。
【吸血】【神速】が使用できる。
魔力値、敏捷値、知能値、知恵値が4倍、それ以外の能力値が2倍になる。
姿形は魔族の妖鬼族と吸血鬼族の中間である。
【龍鬼化】
龍と鬼の力を持った状態での鬼の姿。
【咆哮】【飛翔】【吸血】【神速】【天歩】が使用できる。
【超肉体】状態。(状態異常無効、生命値魔力値自然回復スピード大幅上昇)
全能力値が5倍になる。
姿形は【龍人化】と【鬼化】の中間である。
**
(その竜人族とか吸血鬼族とかの姿が分かんないんだけどな)
鏡は現代日本に流通していたものに比べると表面に歪みがあるのが分かるが、姿を確認するくらいなら問題ない。
(...【龍人化】)
ランヤがそう念じた途端、鏡の中の自分が姿を変える。
耳にかかる程度だった銀髪は肩を過ぎるくらいの黒銀の髪になり、オッドアイだった両瞳が金色に輝く。そして、目立つのはその肌と...額の左右から生えた2本のねじれた角だった。肌は以前より褐色になり、何より所々に鱗ができていた。ねじれた角は漆黒に煌めき、心なしかガタイもよくなっている気がする。
「...」
ランヤは変貌した自分の姿を見て、これはあまり人前では使えないな、と嘆息する。
それから、自分の服──【無色の天衣】もその色を変えていた。
黒を基調として帯などが銀色だったのが、基調が黒なのは変わっていないが帯が瞳と同じ金色になっていた。
(?色の変化は使用者の精神状態や周囲の環境に左右されるんじゃないのか?ああ、肉体の変化も環境の変化扱いってことか...)
**
【無色の天衣】
現在の色:黒 帯の色:金
属性:【無色】【温度調整】【魔法耐性】【物理耐性】【破壊不可】【不穢】+【闇魔法耐性(超)】【闇魔法強化】【雷魔法耐性(超)】【雷魔法強化】【筋力アップ】【知能アップ】
**
(銀が氷属性で、金が雷属性、か。残りの属性の色も大体想像できるな。【氷魔法】は覚えたが【雷魔法】はまだ覚えていないから、今のところは銀色の方が有難いんだがな)
この調子なら、きっと【鬼化】も同様だろう、と思いつつ試す。
(【鬼化】)
すると、黒銀の髪は白に近い白銀になり、2本あった角が引っ込んで、代わりに額の中央に一本のまっすぐな白い角が伸びる。
褐色の肌は雪のような白に変わり、金色だった瞳が妖しく紅く輝く。
そして、【無色の天衣】は黒だったのが純白に変わり、帯は紅く染まった。
**
【無色の天衣】
現在の色:白 帯の色:赤
属性:【無色】【温度調整】【魔法耐性】【物理耐性】【破壊不可】【不穢】+【光魔法耐性(超)】【光魔法強化】【火魔法耐性(超)】【火魔法強化】【筋力アップ】【知能アップ】
**
(ああ、まあこんなものか。しかし【龍人化】とは大分姿形が違うな)
ランヤは鏡の中の自分を見て再び嘆息。美貌の少年が物憂げな表情を作った。
(それにしても...【無色の天衣】のこの属性はどういう基準で変化しているんだ?)
その疑問は少し考えるだけで推測できた。そもそも、この【無色の天衣】(もともとは【無色の衣】だが)は戦闘用の装備ではなく、あくまで衣服、衣装としての役割を持って作られたものである。つまり、戦闘面での機能より、デザイン性を優先して配色される。使用者の才能によってそれぞれの色が出るのではなく、先に使用者に合う配色がきて、その結果能力が付与されるのである。
デザイン性より機能性を優先し、事実この服も装備だと考えていたランヤは、この事実に気づき【無色の天衣】の認識を改めざるを得なかった。
***
【龍鬼化】は試すまでもないか、とランヤが考えていた時だった。
何やら、宿の入り口の方が騒がしい。
ランヤは【透視】を使ってドアや壁をすり抜けてそちらの方を観察する。
そこには、先程森で見かけた一団があった。
とはいえ、これはランヤの想定内だ。
この高級宿に泊まったのもこの事態を予想して、というのもある。
ランヤは、先程は急いでいたため確認できなかった高貴な少女の「力」の内容を確かめようとしていた。
一団の中に少女の姿を認めると、【神書庫の鑑定眼】を使う。
**
《名前》Claris diamond
《年齢》14
《種族》人間族
《天職》魔法使い(光)
《職業》メェル王国第一王女
《称号》【心優しき王女】【メェルの聖女】【愛されし者】【高貴なる者の務め】
《レベル》17
《能力値》
生命:187
魔力:480
筋力:147
耐久:152
器用:206
敏捷:211
知能:308
精神:301
知恵:275
魅力:397
《スキル》
【魅了】Lv.6
【気品】Lv.6
【駆け引き】Lv.4
【光魔法】Lv.4
【回復魔法】Lv.4
【杖術】Lv.3
【商品鑑定】Lv.3
【障壁魔法】Lv.2
【負けん気】Lv.2
《特殊スキル》
──
《固有スキル》
【比類無き幸運】
**
【比類無き幸運】
能力値には関係ないところで最高レベルの「幸運」状態にある。
**
やはり王族だったか、とランヤは納得する。
そして、彼女の固有スキル。
固有スキルにしてはあまりにも短く、不可解なものだった。
(幸運...?それが彼女の能力...?それがさっきのにどう関係が...まさか!?)
ランヤは一つの可能性に行き着く。
それはあまりにも突拍子もなく、異常な結論だった。
もしこの推測が正しいのならば...
「相当に頭のぶっ飛んでいるお姫様だな。関わらない方が身のためか...」
大体一話に何字くらいがいいんでしょうか。
この作品の場合は5000〜7000くらいを目安に書いているのですが...
この文字数だと毎日更新は少し大変です。。
なので今日からは隔日で更新していきたいと思います。
これからもよろしくお願いしますm(__)m
次回の投稿は12/24午前7:00頃です。