3.Oneself New
説明回...?
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ランヤが目を開けると、そこは鬱蒼と茂った針葉樹の森だった。
格好は、変わらない制服で、手には愛刀もある。
新たな肉体は人間の形はとっているようだな、と思いつつ、周囲を警戒しながらも、とりあえずそのスペックを知ろうと試みる。
(...【ステータス】)
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《名前》Ranya Lindwulm
《年齢》16
《種族》龍鬼族
《天職》???
《職業》──
《称号》【近接戦地球最強】【絶対理性】【サヴァン症候群】【異世界からの来訪者】【創造神の最高傑作】
《レベル》1
《能力値》
生命:1833
魔力:1500
筋力:2068
耐久:1954
器用:2047
敏捷:2211
知能:8056
精神:7432
知恵:7710
魅力:9609
《スキル》
【威圧】Lv.10
【魅了】Lv.10
【気品】Lv.10
【剣術:刀】Lv.7
【抜刀術】Lv.6
【暗器術:ex】Lv.6
【投擲術】Lv.6
【二刀流】Lv.6
【立体機動】Lv.6
【状態異常耐性:ex】Lv.6
【体術:ex】Lv.5
【気配察知】Lv.5
【隠密】Lv.5
【視線誘導】Lv.5
【薬品取扱】Lv.5
【薬品調合】Lv.4
【偽証】Lv.4
【武器鑑定】Lv.4
【野営】Lv.3
《特殊スキル》
【成長補正:超】【思考加速:上】【並列思考:中】【瞬間記憶】【瞬間暗算】
《固有スキル》
【全能の才能】
【全知の双神眼】
《種族スキル》
【天を翔ける龍、地を制す鬼】
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(ステータスが大幅に上昇しているな......種族値が変わったからか。天職は固有スキルの影響で???表示になっているわけだな)
ランヤは、称号は後回しにして先に新たに得た固有スキルから詳しく見ることにする。
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【全能の才能】
全てのスキル、魔法に対する適正。
(Lv.10まで到達できる)
【全知の双神眼】
ありとあらゆる眼系スキル、魔眼系特殊スキル、神眼系固有スキルの統合スキル。
未習得、未発現のスキルについてはそのスキルの効果を確認すれば習得できる。
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ランヤは、【全知の双神眼】のうちすでに習得しているスキルを一つずつ確認していく。
(これは...)
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【神書庫の鑑定眼】
神の知識から対象物の情報、記録を引き出す。
この鑑定を阻むには固有スキル相当の情報隠蔽が必要。
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ランヤは、早速【アーカイヴ】を使って自分を鑑定してみる。
(【神書庫の鑑定眼】)
とその途端、圧倒的な情報量が脳内に流れ込み、酷い頭痛に見舞われる。
「ぐっ、ぅ」
思わず呻いたランヤは、半ば無意識で、【思考加速】と【並列思考】を発動させる。
スキルによってなんとか情報を裁いたランヤは、深く考えずに使ってしまったことを反省する。
(確かにすごい情報量だ...まさしく細胞レベルだな)
非常に優秀なスキルであることには変わりないので、ランヤは頭痛を伴いながらもスキル使用の調整をしていく。
少しすると、頭痛も思考力の低下も起きない程度に、しかしそれなりの情報も確保できるように、うまく発動できるようになった。
今度はこのスキルを使いながらステータスを見ていく。
スキル群は、概ね字面通りだった。
(龍鬼族か...)
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【龍鬼族】
この世界の生命の頂点に立つ種族。どの種族より、力強く、誇り高く、賢い。
創造神自らの身を削って造られた種。
すでに絶滅していた。
【天を翔ける龍、地を制す鬼】
龍鬼族の種族スキル。一人前になった龍鬼が得るスキル。以下の特殊スキルが使えるようになる。
【龍化】【龍人化】【鬼化】【龍鬼化】【人化】【咆哮】【吸血】【飛翔】【神速】【天歩】【超肉体】
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絶滅した理由が、【神書庫の鑑定眼】をもってしても判明しないことに若干の疑問を持ちつつ、厄介な種族に転生したかもしれないという事実を受け止める。
とはいえ、今更どうしようもない。
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【生命】
生物の残りの生命力。傷や病で値が減少する。
0になると死亡する。
過度の疲れでも減ることがある。
【魔力】
生物の残りの魔力。魔法の使用で値が減少する。
0になると気絶する。
【筋力】
物理攻撃力。転じて、純粋な筋力。
【耐久】
物理防御力。転じて、身体の丈夫さ。スタミナ。
【器用】
物理攻撃命中力。転じて、手先の器用さ。
【敏捷】
素早さ。転じて、反射神経。
【知能】
魔法攻撃力。転じて、頭脳の賢さ。
【精神】
魔法防御力。転じて、精神の丈夫さ。冷静さ。
【知恵】
魔法攻撃命中度。転じて、知恵の有無。教養の深さ。
【魅力】
影響力の高さ。転じて、個人としての魅力。
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能力値の詳しい説明は輪廻転生の女神にもしてもらったが、改めて確認する。
魅力が他の能力値に比べてさらに大幅に上がったのは、龍鬼族への転生のおかげだろう。
特殊スキルの確認をする。
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【成長補正】
能力値の上がり方、スキルの取得や熟練の早さに補正がかかる。
熟練度は、下、中、上、特、超、の5段階。
【思考加速】
レベル1で知能が500を突破すると取得。思考の加速。
熟練度は、下、中、上、特、超、の5段階。
下2倍、中10倍、上100倍、特500倍、超1000倍、になる。
【並列思考】
レベル1で知能が1000を突破すると取得。思考を連立できる。
熟練度は、下、中、上、特、超、の5段階。
下2個、中10個、上20個、特50個、超100個、になる。
【瞬間記憶】【瞬間暗算】
一度見たものは絶対に忘れない。理解の及ぶ範囲の数式を一瞬で暗算する。
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ランヤは自分の頭の回転の早さなどの理由を改めて知る。
成長補正をなぜ初めからもっていたのか甚だ疑問だが、これのおかげで今まで生きてこれたのだ、と割り切ることにする。
そして、最後に称号の確認をする。
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【近接戦地球最強】
近接戦地球最強の証。
近接戦において、全ステータスが5%UPする。
【絶対理性】
感情と欲望を捨てたものに与えられる称号。
精神の上昇に大幅補正。
【サヴァン症候群】
一部の分野において、並外れた能力を発揮する先天性知的障害の一つ。人によって取得できる特殊スキルが違う。
知能の上昇に大幅補正。
特殊スキル【瞬間記憶】【瞬間演算】取得する。
【異世界からの来訪者】
異世界からアーラスフィアに来た存在であることの証。
特殊スキル【成長補正】が2段階UPする。
【大陸語】が使えるようになる。
【創造神の最高傑作】
正統な龍鬼族の証。種族スキルの取得と同時に与えられる。
スキル【威圧】【魅了】【気品】をLv.10で取得する。
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(【近接戦地球最強】と【絶対理性】の効果は概ね予想通りだな。【成長補正】が上がっていたのは【異世界からの来訪者】の効果か)
サヴァン症候群──知的障害の一種であるそれは、実はランヤもそうではないかと診断されたこともある。
が、ランヤの場合その特定分野以外も非常に優秀で生活が困難になるようなことは無かったことと、彼の感情の欠如はそれ以前の問題であったこともあり、彼自身あまり気にかけていなかった。
これで自分のステータスについては一通り見たことになるランヤは、続いて自分の持ち物を鑑定する。
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学生服
地球の学生服。ブレザー。アーラスフィア基準だと生地は上質な部類に入る。
清潔度:高。
"銘無し"(太刀)【神鍛】
名も、刀匠も知られない秘伝の太刀。地球における最上位の価値を有する。
地鉄が緻密になっている刀身は白く輝き、乱れるように波打つ波紋が見るものを魅了させる。
しかし美しさよりも斬れ味を追究したその刃は鋭く、達人が使えば空気や魔法さえ斬り裂く。
【神鍛】とは神が鍛えた武器である証。以前より鋭さを増したその刃は、さらに空間や精神、呪いごと斬ることが可能。
属性:【斬】【無】【神鍛】【破壊不可】【魔纏】
等級:伝説級(特質級)
p.s.この刀の【神鍛】っていうのは私からの餞別だよ!これからきっと、厄介事に巻き込まれると思うから(笑)
by次元と輪廻転生の女神
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ランヤは女神からの追伸を見るが、特に反応を示さない。厄介事が起きるかもしれない、ということだけ頭に入れておく。
とはいえ、ランヤにとってこの餞別は非常に有難いし、特に【破壊不可】は、本来かなり大変なはずの手入れが、随分楽になる。
また、等級も2段階ほど上がっていた。等級というのは武器やマジックアイテム(魔法やスキルが付与された道具)の性能を表すものであり、下から順に、粗級、並級、上質級、希少級、特質級、魔造級、伝説級の7つに分かれている。このうち、特に特質級より上は数が少なく、所持しているだけでもかなり有名になる。伝説級はまさに人知を超えた力が働いて造られたといわれていて、そのほとんどが各国に管理されている。
とりあえず、愛刀が無事だったどころか、さらにパワーアップされていたという事実を受け止めるランヤだった。
そうしているうちに、彼は森の中の違和感に気づく。すでにここに来てから10分以上経っているにも関わらず、気配察知にまともな生き物が感知されない。
と、己の中から何かが漏れ出しているような感覚を感じたランヤは、スキル【魔力視の魔眼】を使う。【魔力視の魔眼】とは、魔力そのものを可視化するスキルであり、その正確さはスキル【魔力感知】を上回る。
「やっぱりな」
ランヤの予想通り、彼の身体からは魔力が溢れ出し、周囲を覆っていた。
概ね、野生動物は彼の魔力を察知して逃げ出したのだろう。
ランヤはその溢れ出た魔力を体内に抑え込む要領で、意識を向ける。
──スキル【魔力操作】を取得しました──
ステータスの機能である通知が頭の中に浮かんだ途端、少しづつ溢れた魔力が彼の体内に戻っていく。
そしてその速度は段階的に上がって、やがて全ての魔力が彼の体内に戻った。
【魔力操作】Lv.1→Lv.4
(これくらいでいきなりここまで上がるのか...【成長補正:超】はやはり伊達じゃないな)
【魔力操作】というスキルは、魔法を使うのに必ず必要というわけではない。魔法を使うのが円滑になり、コントロールなどが上がるだけである。
本来の使い方はランヤがやった通り、漏れ出る魔力を抑えて実力を隠す、というものである。
漏れ出た自分の魔力を全て抑えたランヤは、次いで空間中の魔力──緑色と茶色のそれが最も多い──も操作できないか試してみる。
が、なかなか上手くいかない。
そこで、直接操作するのではなく、自分の魔力を腕代わりにしてその魔力を掴むイメージで試してみる。
──特殊スキル【魔力支配】を取得しました──
どうやらこれが正しかったようだ、と脳内に浮かんだそのメッセージを見てランヤは考える。
このスキル、ランヤは何でもないように取得したが、これは【魔力操作】と違って非常に強力かつ希少なスキルなのである。
このスキルはつまり、「その空間の魔力が枯渇しない限り永遠に魔法を使える」というとんでもないもので、持っているだけで超一流の魔法使いの扱いを受ける。普通ならばこんなに簡単には取得できない。これも一重に、【全能の才能】と【成長補正:超】のおかげだった。
ランヤはそのことにうすうす気づきつつも、とりあえずはまあいいか、と思考を放棄する。
「まずは水場探しと食料の調達、だな」
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ランヤが【神書庫の鑑定眼】で食べられる葉や実を採取しつつ、川に向かって緩やかな下り坂を歩いている時だった。
(...何かいるな)
ランヤはそこから少し先に何かの気配を捉えた。
【透視の魔眼】と【遠見】スキルを使ってその辺りを見てみる。
【透視の魔眼】とはその名の通り、万物を透視する魔眼である。結界などが張ってあれば使うことはできないが。
【遠見】は視界に入ったものをズームして見ることができるスキルだ。
そこには、緑色をした小柄な人間サイズのモンスターが6匹いた。
(...【神書庫の鑑定眼】)
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ホブゴブリン 26レベル
生命:208
魔力:1
筋力:285
耐久:214
器用:143
敏捷:186
知能:11
精神:84
知恵:79
魅力:6
【棒術】Lv.3
【悪食】Lv.4
【超繁殖】Lv.4
ランクEモンスター。ゴブリンの上位種。
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残りの5匹もおおよそこのようなステータスだった。
アーラスフィアの生き物(アンデッド系も含めて)は、大きく3つに分けられる。
一つは、人間や普通の動物など、魔核──もう一つの心臓のようなもの──を持たない種族。人間はもちろん、獣人族やエルフ族、ドワーフ族などの亜人、牛、馬などの普通の動物もこれに当てはまる。
二つ目は、魔族と呼ばれる、太古から存在するいわゆる人外である。ランヤの龍鬼族であったり、龍族、吸血鬼族などがこれにあたる。魔核を持っているが、他種族に対する敵性はなく、中には人間社会に溶け込んでいる者もいる。
そして最後は、モンスター、魔物と呼ばれる存在である。これは魔核と他種族に対する敵性や攻撃性を持つもののことであり、総じて知能が低いことが多い。魔族の亜種であったり、あるいは魔力溜まりに何らかの外的要因が働くと発生する。ゴブリンは魔族の一つ妖鬼族の亜種だと言われている。ゴブリンたちのステータスの表示が人や魔族のそれより劣化版になっているのは、この違いが原因である。
(左前方約80mか。この程度の強さならなんとかなるな)
ゴブリンたちは未だランヤを察知していない。肉体が変わってしまったこともあるし、この世界の異形相手にどれほど戦えるか試すいい機会だろう、と思ったランヤは、足音をたてないようにしつつ目標に向かって一気に駆け出す。
70m、60m、50m、距離は次第に縮まっていく。40、30、20、ゴブリンたちはそれでもランヤに気づかない。
残り10m...1匹のゴブリンがランヤに気づく。残りの距離を一気に詰めたランヤは腰に構えていた太刀を抜刀で一閃して、近くにいたゴブリン2匹の首を同時に撥ね飛ばす。事態を飲み込めず混乱する残りのゴブリンたちも、正確に首を狙って一撃で屠る。
結局、ランヤがゴブリンたちと接触してから全滅するまで僅か3秒ほどしかかからなかった。
(思ったよりも楽に勝てたな。もう少し抵抗されると思ったんだが。それに、肉体が変わって違和感があるかと思ったが、全くなかったな、なにか補正でもされているのか?)
実際、ランヤは急激にスペックの上がったその肉体をちゃんと使いこなせていた。能力値を無理矢理上げたのではなく、種族変更によって結果的に数値が上がっただけなので、違和感は全くない。
(ランクEだからそれほど強くはない方なのだろうがな。俺が強くなりすぎたのか)
傲慢ともとれるその思考を、特に驕りもなくただ事実として受け止めるランヤだった。
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それからは特に何かに遭遇することもなく、無事に川に着いた。およそ1日を過ごせるだろう食べ物(鞄はないのでポケットに詰めた)はあるので、とりあえず問題はない。
それとランヤは、金になるかと思って一応ホブゴブリンの魔核(魔石ともいう)も取っておいた。茶色っぽい濁った色をしていて、あまり綺麗だとは思えない。強力なモンスターの魔石ほど、美しいと言われている。
川は、見た所きれいに澄んでいて飲用できそうだ。
そういえばまだ自分の容姿を確認できていなかったなと思い、水質の確認も兼ねてランヤは水面を覗き込む。
──澄んだ水面に映り込んでいたのは、美しく輝く銀髪と、ワインレッドの左瞳とエメラルドグリーンの右瞳を持った、この世のものとは思えないほどに美しい男の顔だった。
次回の投稿時間は明日の午前7:00頃にします。