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009

9話


◇ ◇ ◇


城塞都市ᚨ「アンスル」 国立魔導学院 第7演習場 レルネ・ラッフィーニ


◇ ◇ ◇


 目の前で気絶したマディを、カズヤさんが介抱をしている。


 無理もないと思う、いきなり初見で”チャクラの全開”状態を体感したのだから。

 正直”あれ”は2度目の私でもかなり精神的にきついと思う。


 それ以上にまずいのは、チャクラでの魔力蓄積チャージの感覚の内容が、マディにバレてしまった事だろう。


 ”あの”感覚は私だけなのかと思ってたのだが、マディのあの様子は、間違いなく私と同じ”状態”なのだろう。


(都合よく記憶も飛んでくれてる…なんてこと無いでしょうね。あ、起きた)


 意識を取り戻したマディはしばし呆然とした様子だったが、カズヤさんを認識すると、突然、両手で自分の体を抱き締めるようにして、彼から距離をとった。

 顔色は、まさしく火の出るように赤い。


 心配そうにマディの体調を問いかけるカズヤさんに、しどろもどろな受け答えをしていたが、やがて私のことを認識すると、ものすごい勢いで私のところに飛んできた。


(な、なんですの!! あれはー!!)

(…だから止めようとしたじゃない…)

(あんなおかしな踊りでは分かりませんわ!! どうして昨日の内に説明してくれませんの!?)

(い、言えるわけ無いでしょう! そんな恥ずかしいこと!! 

 あなたなら、さっきの体験を口に出せるの? さっきからカズヤさん様子を聞きたそうだけど?)

(む、無理ですわ!! そんなことしましたら、わたし恥ずかしさで死んでしまいますわ!)

(そうでしょ? 私も同じよ)

(と、とりあえず、この件のことは伏せて、今は口裏をうまく合わせてごまかしましょう!)

(そうね、とりあえずはそれしかないよね。この件はお互い内緒ということで。)


◇ ◇ ◇


城塞都市ᚨ「アンスル」 国立魔導学院 第7演習場 マディスン・セイレン


◇ ◇ ◇


 衝撃の体験だった。

 心の準備の出来ていない完全な不意打ちだったこともあったが、今まであまり自分に”縁の無かった方面”からの”攻撃”であったため、あっさり意識を飛ばしてしまった。


(情けない。お兄様たちに受けたシゴキ比べれば、あ、あんなこと…)


 実際、実家のセイレン家は武闘派に属する騎士の家系で、現在も近衛隊や騎士団に上の兄達も所属している。

 一番末の妹で唯一の女の兄妹である自分にも幼少から鍛錬を課すような家柄であったが、それでも自分にはそれに耐えてきた自負があった。

 そう、”あった”だ。遺憾ともしがたいが、既に過去系だ。

 ここ数年はすっかり頭脳労働の生活で鈍ったつもりは無かったが、それは勘違いだったようだ。


(あのシゴキで、痛みには強い耐性があったはずですが……”アレ”は違うのかしら…)


 将来に備えて人体の構造や各臓器の特性、もちろん生命の誕生にかかわる”生殖”関係の知識も習得済みだった。しかし、”経験”は無かった。


 孤高を気取ったつもりは無かったが、年上の兄達に接する機会が多かったことと、学院に入学した後は、レルネに対する周囲の少年達の振る舞いが、あまりに”幼稚”に思えてしまい、とても”経験”にいたるような”感情”を抱くことが出来なかった。


(それにしても、どうして”あんな感じ”になるのでしょう。

 カズヤさんの説明によれば魔力を集めただけでしょうに)


 その時、彼がチャクラへの魔力蓄積について語った”ある一節”が頭の中にひらめく。


『…ですので、その7つのチャクラへ魔力を蓄積することで、チャクラが存在する周辺部の血流、臓器、リンパの働きが活性化されるのです。』


(………まさか。)


 わたしは辿たどり着いた”ある仮説”の検証の為に彼に尋ねることにした。


「カズヤさん、質問がありますわ」

「え?、いえ、マディスンさん、もっと休んでいた方がいいですよ。あなたには副次効果が強く出すぎたみたいですから、かなり体が”重く”感じるでしょう?」


 その時、まだ私の体の中に”重く”残る”熱”を自覚して、また意識がクラリと傾きかけたが、気力で立て直す。


「……確かにあまり動き廻りたくない気分ですが、それよりもどうしてもお聞きしたいことがあるのですわ!!」

「ハッ!、なんでしょうか?」


 私の一喝で”直立不動”の姿勢をとったカズヤさんを見て少し気分がスッとした。

(どこか命令されることに慣れている反応ですわね。騎士隊のお兄様の姿を思い出しますわ。…と、そんなことよりも。)


「お聞きしたいことは、副次効果の肉体活性についてです。チャクラ周辺部の”臓器”を活性化するとのことですが、具体的には臓器はどのような”状態”になるんですの?」


「え?、はい、”臓器の活性”の場合は、その臓器が持つ”本来の機能”を最高の状態で”全力稼動”させます。

 胃なら消化機能、心臓なら血流促進、眼球なら視覚強化、肝臓ならば解毒・分解・代謝・造血機能などですね。もちろんその分のエネルギーは必要になりますが。


 仮説は”当り”だった。

 

 あの臓器が”本来の機能を全力稼動”すれば、それは”あんな感じ”にもなるだろう。


「……もう一つ質問です。このチャクラの運用をされている方は、どのくらい居られるのでしょうか?」


「…正直ほとんどいません。師匠が遺跡の情報を解読して理論を構築したのですが、実践できた人間は俺を含めて4人です」


「実践できる人が少ないのは、なにか理由でも?」


「実は思考が柔軟で肉体も未成熟な成長期でないと、上位のチャクラはうまく開かないようなんです。この時期を逃すと魔力の運用を”途中で変える”のは難しいみたいですね。

 ですので”チャクラの全開”状態まで持っていけるのは、まだ俺しかいません。

残りの3人も第1~3チャクラくらいまでですね」


「その中で、女性の方は居られるのでしょうか?」


「?? 女性は師匠と師匠の友人のエルフの方です。お二人とも第1チャクラしか開かれてません。

 師匠とエルフの方も最初はご自分で挑戦していましたが、途中から私に丸投げしてきました。

 残りの1人は私の冒険者の先輩の男性で第3チャクラまで開かれています」


「……やはりそうでしたか」

「なにか?」

「マディ?どうしたの?」


「あとで説明いたしますわ。…しかしそうなりますと、フィラエ先輩も構築した理論の検証が出来なくて手詰まりの状態ということでしょうか?」


「ええ、その通りです。比較検証をするには、被験者サンプラーが私だけでは足りないと嘆いてます」


「その被験者サンプラー、わたしたち2人ではいかがでしょうか?」


「ちょっ、ちょっとマディ! いきなり何を言うの!!」

「レルネさん、悪いようにはしませんので、少し黙っていてくださいな」

「ちょっと!!」


「それで、どうでしょうか?

 わたし達は二人とも成長期の真ん中で、正に適格者の条件にあたりますけど」


「…ご協力いただけるのはうれしいのですが、どうしてでしょうか?」


「無論、わたしにもメリットがあると判断したからですわ。レルネさんもよろしいですよね?」

「えっ! あ、あの私、その…サンプルラーとか、ちょっと怖いんですが…」


 尻込みするレルネさんにわたしは彼女の背中を押す言葉(悪魔の囁き)を呟く。


(この依頼が終わったら、お別れするんですの?)

(っ!!)

(サンプルラーになれば、いつでも彼に、”また一緒に…”がお願い出来ましてよ。)

(……きづいてた?)

(わからいでかっ! ですわー。)

(@@@@@)

(……心配しなくていいですわ。”また一緒に…”はレルネさんに譲りますから。)

(……うん。)


◇ ◇ ◇


城塞都市ᚨ「アンスル」 国立魔導学院 第7演習場 カズヤ


◇ ◇ ◇


(どうしてこうなった……)


 最初はレルネさんの”お願い”で”魔力同調”でのチャクラ連携のサポートを頼まれた。

 次にチャクラでの肉体活性を医療行為に利用したいと希望していたマディスンさんを誘った。神聖魔法に勝つことばかりを意識している彼女に”患者側”の視点を持ってもらいたかったという思いからだ。

 そして”魔力同調”のペンダントで”チャクラの全開放状態”魔力の永久機関”へと2人を導き、マディスンさんが倒れた。おそらくチャクラ運用での副作用、だろう。


 しかし、ここからが分からない。

 意識を取り戻したマディスンさんはチャクラ運用の被験者サンプラーを志願してきた。レルネさんも誘って。


 確かに被験者サンプラーは不足している。特に女性は師匠とエキドナ(ギルドマスター)さんが完全に放棄してから全くデータが集まっていない。

 そういう意味ではマディスンさんの申し出はありがたいと思う。


 しかし、マディスンさんは副作用が強く出る体質のようだ。

 とても継続的なチャクラ運用の必要な被験者サンプラーは体への負担が大きすぎるだろう。


 対してレルネさんの素質はかなり優秀だ。

 おそらく彼女なら女性で初めて”単独”でチャクラの全開放状態に至れるだろう。

 しかし、レルネさんは尻込みしている。無理も無いな、怪しい実験の手伝いに思えるだろうから。

 実際のところ、彼女を被験者サンプラーとして誘うことを考えなかったわけではないが、それは”今じゃない”とも思っていた。

 折角の”昇り調子”の今は、彼女には自由に力を伸ばしてほしい。

 うむ、ここはやはり、


「申し出はありがたいと思います。が、お断りします」


「……どうしてでしょうか? 条件的にこれ以上の適任者はいないと思いますが?」


「条件的にはそうですが、”心情的”にお二人にお願いするのは気が引けまして」

「……つまり、わたし達はあなたの”お気に召さない”、”好み”ではないと?」

「!! そ、そんな…」


 なぜか、マディスンさんの顔は静かな怒りをたたえ、レルネさんの表情は、親に見離された子供が見せるような絶望に染まっている。


(……どうして、そうなるの……)


「……!!」

「……」

「~~~~」

「……」

「…………」

「……………………」


 その後のことは、あまり語りたくない。

 とりあえず、俺は2人に平謝りし、言葉を尽くして、誤解を解くため必死に立ち回った。


 結論として、被験者サンプラーになるための個別指導を”定期的”に行う内容の個人契約を2人と結ぶことになった。


 あれだけ尻込みしていたはずのレルネさんは喜び、マディスンさんも満足そうな表情を見せている。


(本当にどうしてこうなった。)


◇ ◇ ◇


 二人のご機嫌が戻ったところで、俺は2週間後の期末試験の件について最終確認する。


「実際のところ、期末試験の課題については問題なさそうでしょうか?」


 俺がそう尋ねると2人は目を合わせ、破壊された標的の方を見ながらうなづきあう。


「それは…たぶん」

「十分ですわね、それどころか、この結果が広まれば大騒ぎになりますわよ。

 あれだけの速度で、詠唱破棄で呪文を連発できるのなんて、先生方の中にだっておられるかどうか」


「それは、良かった。俺も無事依頼がこなせそうで安心しました」

「!あ、あの、でもその、チャクラの連携の方は、まだまだですので、もうすこし……」

「レルネさん。最初の依頼の達成条件は既にカズヤさんは達成されておりますわ。これ以上この依頼の完了を伸ばしますのは不誠実ですわよ」

「…それは、そうなんだけど」


「それと一つご報告が、実は明日ギルドの昇格試験で少し街を離れることが考えられます」

「…あ、そうなんですか、それじゃあ、やっぱり完了報告しないとだめですね」


 そういうと、彼女は目に見えて沈んでしまう。自信を回復してもやはり試験は不安になるのだろうな。

 マディスンさんもそんな彼女を気にしながら、俺の方に視線を向けて、早くフォローをしろと促してくる。


「おそらく10日くらいで戻れると思いますので、今度は先程の個人契約の『サンプラー育成の個人指導』として参りますから」

「…え?あ、さっきの契約ってそういう内容になるわけですね」

「やはり、分かってなかったんですのね。

 私設教師見たいなものかしらね、特定技能の専門家を呼んで個人契約することはこの学院には良くありますわ」


「私もレルネさんが万全の状態で試験に望めるように、試験前の最終調整はお手伝いできると思います」

「はい、ありがとうございます。お帰り、お待ちしてます」


 レルネさんに、依頼完了のサインをもらい、学院をおいとますることにした。


◇ ◇ ◇ 


城塞都市ᚨ「アンスル」 国立魔導学院 女子寮 マディスン・セイレン


◇ ◇ ◇ 


 カズヤさんと別れ、レルネさんとわたしはふたりの私室プライベートルームに戻ってきた。

 レルネさんの機嫌はすこぶる良い。夕べから今朝の間の不安定な感じは、完全に消え失せてしまっている。

 うれしそうに、カズヤさんから貰ったチャクラ・クリスタルを眺めている。

確かに綺麗な造りで、見ていても楽しめるだろうが、レルネさんの場合は、彼のことを思い出すプレゼントだからだろう。

 わたしも”自分”のクリスタルを見ながら、レルネさんのような感情が湧いてくるか彼のことを考えてみた。


 カズヤ・フィラエ 19歳。(もうすぐ20……どう見ても15、6にしか見えないが。)

 国立魔導学院ウチの卒業生で在学中の当時から天才の名前をほしいままにした魔導師ルネット・フィラエの弟子ながら、職業クラスは魔工技師らしい。

 確かに魔法の技量は未知数のため、魔工技師ということもありえるが、その知識は計り知れない。

 正直わたしが同年代の人間に医学関係のことで教えを受けることがあるとは考えもしなかった。それ以外にも、


『”ただの水”でもなおってしまう人がいるからです』


 あの言葉は衝撃的だった。真実かどうかは分からないが、現実に『聖水』を求める信者が絶えないのも確かなのだ。


『”この水は神が与えてくれた「聖水」。飲めば治らないはずがない”

そう強く信じることが、自らの回復力を活性化させて病気を治してしまうんです。

…逆に言えば、人から信用されない手段は、どんな優秀な効果があっても助からない人が出てくるということです』


 あれは、厳密には医学の知識というものではないかもしれないが、医療にかかわろうとする者としては無視できない言葉だったと思う。


(私の医術が、知識が、薬が、”ただの水”に負ける?)


 もし、そんなことになったら、わたしは耐えられるだろうか?


(そうならないための”患者”との信頼関係か…)


『直す手段は神聖魔法でも医療魔術でも、”なおれば”どちらでもいいんです。

 まず患者との信頼関係を結ぶことから始めることが私は最善だと思います』


 確かに教会を嫌うあまり、神聖魔法のことも無視してきたと思う。

 しかし、彼のあの言葉を聴いて、自分の医療に役に立つ内容があったとすれば、素直に神聖魔法も取り入れてもいいと思えるようになった


『むしろ、神聖魔法の良いところを使って、新しい医療魔術を生み出せたら、教会に一泡吹かせられるかもしれませんね』


(もし、それが実現したならば、”アイツ”がどんな顔をするか・・・)


「マディ?、楽しそうだけど、なにかいいことあったの?」

「ん、ちょっとー教会を叩き潰す方法をですねー」

「ちょっと、物騒な冗談を言うのはやめてよね」


 わたしの彼に対する感情は、どうもレルネさんのような”可愛らしい”ものではないようだ。

 でも、自然に笑うきっかけを作ってくれたことには感謝してもいいと思う。


(それには、彼に協力するのもやぶさかではないですね。色々わたしにも有効な”効果”がありそうですから。)


「レルネさん。お話ししておきたいことがありますの」

「何ですか、悪巧みなら加担しません!」


「ちがいますわ」

「では、何の話ですか?」

魔力蓄積チャージの”あの”感覚のことですわ。原因がおそらく分かりましたの」

「!! ホントなの?!」


「ええ、おそらくですが、今日のカズヤさんの説明で大体予想がつきましたわ」

「教えて! 解決できれば彼にバレなくてすむわ!」


「それは……」

「それは!?」


「ムリです。解決は出来ませんわー。少なくとも今は」

「な、そんなー、嘘でしょー!!」


「嘘ではありません。今から説明いたしますわ」

「…分かったわ、一応教えて。私も対策を考えてみるから」


「はい、では、レルネさんもおかしいと思いませんでした?。

 ”あの”感覚をカズヤさんは”自覚してない”ということですわ」

「…それは、確かにそんな様子はなさそうですけど、”うまく抑えてる”ということじゃないのかな?」


「それなら、わたし達にも希望がありますけどねー。

 でも、カズヤさんなら”そういう事”をきちんとフォローしてくださると思いません?」

「そ、それは、カズヤさんも恥ずかしくて話せない、とか…」

「それはありませんねー。

  今日話した限り、彼の考えは医者が患者に接するような態度に共通するものを感じましたわ。

 そういう考え方が出来る人はたとえ内面で恥ずかしいと思っても、わたし達にきちんと説明してくれますわ。もちろん言葉も適切に選んで、ですわ」

「……ずいぶんカズヤさんのこと理解してるみたいね。いったいいつの間にそんなに仲良くなったのよ!」

「秘密ですわ」

「……」

「…そんな顔しなくても、大丈夫ですわ。わたしは”レルネさんのように”彼のことを思ってるわけではないですから、……まだ」

「まだ!? 今まだって言ったー!!」


 いけないレルネさんで遊ぶのが楽しくて、話が進まないですわ。修正しないと。


「まあ、冗談はおいて置きまして、カズヤさんが説明しなかった理由は、彼があの”感覚”を自覚できないからですわ」

「そ、そんな、あんなにはっきり”感じる”のに。私がおかしいの?」

「それなら、わたしもおかしいことになりますわ。それは違いますわ」

「なら、どうして!!」

「カズヤさんが”男の方”ですからですわ」

「え?…どういうこと?」


「第1チャクラと、第2チャクラ、わたし達の体の”どこ”にあるか分かりますわね?」

「…それは、わかってるわ」

「そこに、何があるかも以前説明して、分かってますね?」

「……ええ」

「なら分かりますわね。”それ”は男の方にはありませんもの」

「!! あ、あ、まさか、そういうこと?」

「そうですわー。さすがに”ないモノ”の感覚を自覚することは出来ないでしょう?だから、彼は説明できなかったとおもいますの」


「そして、チャクラに魔力蓄積チャージをすると、その周辺の臓器が活性化されますわ。そして彼はこう説明しました」


『”臓器の活性”の場合は、その臓器が持つ”本来の機能”を最高の状態で”全力稼動”させます。』


「あ、あ、あ…そんなー」

「そうですわ、わたし達の体は、”生殖機能”を”全力稼動”してた訳ですわ」

「ちょ、っと、そんな直接的な…こと」

「え~、では。”子作り”の機能?」

「おんなじ!!」

「”赤ちゃんを作る”機能?」

「もういい、わかったから!!」

「分かりましたでしょ、だから”ムリです”って言ったんですの」

「/(@_@)\」


がっくりと肩を落とすレルネさん。


(いいんですの? そんなことでくじけてて?)


被験者サンプラーの契約、やっぱりやめますの?」

「!!!」


「たぶん正直に話せば彼も納得してくれると思いますけど…、むしろ”あの”感覚も折込済みで、契約したのではないんですか?」

「……」

被験者サンプラーの契約する前。一度、彼に断られましたわねー。理由はわたし達のことを気遣ってくれたからですけど」

「……」

「あの時どう思いました?」

「嫌われた…かと思った。…それで、足元から地面が崩れて行くみたいだった」


「誤解だったと分かって、契約できて、どうでした?」

「…すごくほっとした、うれしかった」


「結論出てますわね」

「…うん。そうだね」


(まだですよ、レルネさん。もう一つ見落としてますわー。

 しっかり自覚してくださらないと。この先、決意が揺らぎますわよ。)


「それに、わたし達が断ってしまいますと、カズヤさん、きっと別の人を探しますわよ」

「!!!!」


「それも、わたし達と同じくらいの女の子、聞く限り被験者サンプラーで足りないのは若い女性のデータでしょうから」

「そ、そうよね…か、考えてなかった…、よかった、契約できてて」


「想像して見て下さいー、断ってたら、カズヤさんがー、別の女の子に声をかけて、”魔力同調”しますわー」

「ムリ、絶対ムリ!!!」


「どうです? ”悪いようにはしません”でしたでしょ?」

「マディ、ありがとう!!!」


◇ ◇ ◇ 


「問題はですねー。いかにして第2チャクラを”なるべく”使わないかです。

 説明を聞く限り第1チャクラは使わざるを得ませんので、もう、あきらめます」

「…そうね。今でも魔力蓄積チャージ量を抑えれば、第1はなんとか我慢できてるし」

「そうですか、ならレルネさん、自力ソロでどこまでチャクラ連携が使えますの?」

「まだ、第2がちょっと動かせるくらい…かな」

「…なるほど、ある意味一番(つら)い時期だともいえますね」

「第3以上が使えるようになれば、負担減らせるかな?」

「分かりませんが、今のところはそれしか対策案が無いですからねー」

「がんばって、早く第3まで使えるようにするしかないか…」

「そうなると、”毎日”の練習しかないですけど……どうしましょうか?」

「……」

「とりあえず……、”毎日”のお風呂の時間、レルネさんとはズラしましょうか?

…1時間くらいは私室ココ帰ってこないようにしますので、いいですか?」

「……ウン。お願い」

「しっかりカギかけておくんですわよ♪」

「わかってるわ! そんなこと!!」


◇ ◇ ◇ 


第3(みぞおち)が早く使えるようになれば、たぶんイイコトがありますわー」

「なにそれ?」

「肝臓が活性化されますから、代謝が上がって、食べても太らない体にー」

「一刻も早く、第3をつかえるようにするわ!!!」


◇ ◇ ◇ 


第4(しんぞう)が使えるようになれば、レルネさんにはもっとイイコトがありますわー」

「なにそれ?」

「乳腺が活性化されますから、長年の”絶壁”が解決しますわ!!」

「っ大きなお世話よ!! ………ガンバロゥ」


◇ ◇ ◇ 


「でも、第2を使い続けて鍛えておけばれば、将来子宝に困りませんわよ」

「巨大なお世話よ!!」


◇ ◇ ◇ 


●”チャクラ・クリスタル”

……単なるチャクラ連携の練習用具……のはず。

今回予備のクリスタルもマディスンに接収された。

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