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天空の覇者  作者: 炎 立見
14/24

13 寄生虫は病気の元

 鑑定の魔法が無いから、当てずっぽうに何でもかんでも治癒魔法を使ってたんだな。

 じゃ、オレにも使えそうにないか。

 エリカが知らない魔法をオレに付与出来るわけないしな。

 でも、なんでこの大司教はこんなに瘦せたんだ。

 痩せるってことは栄養が摂取できてないか、何処かに吸い取られてるかだな。

 消化器系の病気か、或いは悪性腫瘍ってとこか。

 ガンだったら難しいだろうな、治療法が確立してないのが多いらしいし。

 はぁ、こんなのオレにどうしろと。

 専門家の医者でも匙を投げるレベルじゃねぇのか、この病状。

 見えたらなぁ、こいつの体の中。

 そしたら、もう少し何とか出来るかも知れないってのに。

 医者って、こういう病状の患者前にした時、みんなこんな感情抱くのかな。

 だったら、もっと普通に接してやれば良かったかな。

 オレ、偏見の塊だったからな。

 ごめんよ、地球のお医者さん。

 でも、何も出来ないってこんなに悔しいんだ。

 くそっ。

 何とか出来ないのかよ。

 そう思って大司教の痩せ細った体を睨みつけていると、なんか見えて来た。

 なんなんだ、これは。

 人体の構造なんて小学校の理科室に置いてあった人体模型クン程度にしか知らないっての。

 んん。

 これは…。

「アリス、大司教は何か変なもの食べなかったか」

「変なものとおっしゃいますと」

「生の肉とか、生の魚とか」

「さぁ、大司教様の個人的な嗜好までは存じませんが」

 そうか、そりゃそうだな。

 女房でもない限りそんなことは知ってるはずがないよな。

 アリスとそんなことを話していると、またも蚊の鳴くような声が聞こえて来た。

「教義としては禁じられているのですが、私は生の肉を酒の肴にするのが好きでしてね。塩を利かせると結構旨いのですよ」

 なんだ、破戒僧ってわけかよ。

 困ったオッサンだぜ。

 でも、コイツの体の中の異分子の正体が分かったってもんだ。

 そりゃ、治癒魔法使ったって良くなるはずがないわな。

 体の中に居る寄生虫まで元気にしてしまうんだから。

 毎日みんなで寄ってたかって病気の元凶に活力を与えてたって聞いたら、こいつらみんなどんな顔するだろうな。

 ちょっと想像したら。

 いかん、爆笑しそうだ。

 じゃ、ちょっくらこのオッサンを元気にしてやろうかね。

 えっと、腸内にいるサナダムシか回虫みたいなのを体外に排出させるには…。

 どうすりゃいいんだ。

 こいつらって、体の一部でも人間の体内に残っていたらいくらでも再生するんだっけな。

 ということは、そっくりそのまま全部きれいに外に出さなきゃいけないってことだから…。

 オレは振り返ってアリスに問いかけた。

「なぁ、取り寄せの魔法ってあるのか」

「アポーツのことですか」

「あるんだな」

「少し高度な魔法ですけど、転移魔法や収納魔法ほどじゃないですよ」

「で、アリスは使えるのか」

「あまり遠くのものは無理ですけど、この部屋の中ぐらいなら」

「そりゃ凄いな。で、どうやるんだ」

「それが何か関係あるんでしょうか」

「大ありだ。オレがアリスの魔法を見たいってことだよ」

「何なんですか、それ」

「で、見せてくれるのか見せてくれないのか」

「なんか、服を脱げと言わてるような」

「ははははは、そう聞こえなくもないな。でも、それは後だ」

「後、ですか。そうですか。約束しましたからね」

「あぁ、なんでもいい。アポーツって魔法見せてくれ」

「じゃ、あの壁際の小さな一輪挿しを見てて下さいね」

 そう言うと、アリスは何か呪文を口にして一輪挿しにそれをぶつけるような感覚で魔法を行使した。

 すると、次の瞬間、壁際にあった一輪挿しがアリスの手元に現れた。

 へぇ、魔法はイメージだと言ったのはまったくその通りだな。

 明確にイメージ出来ればちゃんと使えるってことだ。

「へぇ。上手いもんだな」

 おれは取り敢えずアリスに誉め言葉を与えてから、自分でもやってみることにした。

 オレは何を目標にするかな。

 おっと、あの窓際の花瓶にするか。

 あの花が活けてあるヤツ。

 じゃ、手元に来い!

 おいおい、胸元が水浸しだぜ。

 安定しなかったのか。

 で、窓際には花だけが残ってるじゃねーか。

 花ごと持ってくるには花瓶と念じたんじゃダメってことか。

 じゃ、もう一度だ。

 オレは、手元に取り寄せた花瓶をもう一度窓際に置いて、散らばった花を挿し直した。

 で、元の場所に戻って、もう一度念じた。

 今度は活けた花ごと中の水ごと花瓶を取り寄せようと。

 そして、今度は…。

 成功だ。

「なんでそれだけで成功しちゃうんですか」

 アリスが何か文句言ってるぞ。

「普通は何年もかかって練習しないと出来るようにならないんですよ、この魔法は」

「そうは言ってもなぁ。出来たものは仕方ないだろう」

「反則です」

「ズルイです」

「えっと、かっこいいですよ、ご主人様」

 三人娘もなんか言ってる。

 成功したところで、やってみましょうかね。

 毎日元気を与えられてた寄生虫のお取り寄せ。

 あまりやりたかないけど、仕方ないか。

 さっき見えたのは五メートルはあろうかという長い長い寄生虫だった。

 サナダムシだったのかな。

 だからアリスに大きな瓶を用意してもらうことにした。

 外に出て誰かに頼んだんだろう。

 暫くすると下男のような男たちが三人掛かりで大きな瓶を担いで部屋に入って来た。

 準備完了だ。

 さて、覚悟しろサナダムシ。

 もう一度大司教の体を凝視して、所在を確かめると強く念じた。

 今度は周りの何かを一緒に取り寄せるわけにはいかない。

 強くイメージすると、対象のサナダムシだけが浮き上がってきた。

 今だ。

 来い、サナダムシ。

 で、次に瞬間、オレの手の中には六メートル近い長さのうねうね動くサナダムシがいた。

 オレはそれを素早く用意した瓶の中に突っ込んだ。

 申し訳ないが、大司教が掛けていた毛布を剝ぎ取って瓶に蓋をして口を縛り上げた。

 何を使って縛ったかって。

 アリスの着ていた衣装の腰紐だ。

 戦闘服を着たままきゃーきゃー言ってるが、今は我慢しろ。

 大司教のこと心配なんだろ。

「大胆です、ご主人様」

「やる時はやる男だったです」

「わたしもどうぞ」

 いや、間に合ってるから。

 こいつを焼却処分してしまえば一件落着だろう。

「きゃーきゃー言ってないで、大司教に治癒魔法を掛けろ、アリス」

「あ…はい」

「後は、これを瓶ごと焼けばいいんだが、ここでやるわけにはいかないからな」

「外へ運び出せばいいですか、これ」

「そうなんだが、何が入ってるかと中を見たら、今度はそいつが大司教と同じ目に遭うことになる」

「ひゃ~、イヤです、そんなの」

「だから命令を忠実に熟せるヤツを呼び出して処分させろ、いいな」

 三年掛けてゆっくりと衰弱していった大司教の体は、一回二回治癒魔法を受けたくらいでは回復しないだろうから、ゆっくり静養してもらうしかない。

 後は、大聖堂にたくさんいる戦闘服の集団の仕事だ。

 さて、帰ろうか。

「待って下さい、勇者さま」

 なんだ、アリスの後ろにも勝負服のシスターがいっぱいいるな。

 何事だ。

「お待ちください、勇者さま」

 弾む息を堪えながらアリスの後ろから出て来たのは、大司教の部屋にいた落ち着いた感じのシスターだ。

 アリスと違って艶があるな、女として。

 サナダムシを見ても騒がなかったし。

 いい女だ。

 自己主張が強すぎないのが特にいい。

 いや、胸の主張は結構強いみたいだけど。

「これから、何に気を付けて大司教様を看病していけばいいのでしょうか」

「もう病気の元凶は取り除いたから、毎日治癒魔法をかけて体力を回復させてあげればいいんじゃないか」

「それでは…」

「もうこれ以上悪くはならないだろ。また生肉食わない限りは」

「そうですか、良かった」

「人望があるんだな、あの大司教は」

「えぇ、誰に対しても分け隔てなく接して下さいますし、なによりお優しいので」

「そうか、では大事にしてやらないとな」

「はい」

 ほら、こんな顔で男の心配してみろよ、アリス。

 胸の主張だけで男が靡くなんて思うな。

 ま、魅力が無いわけじゃないけどな。

「それで、あのぉ、私たちの仕事を見て行って下さると伺っていたんですけど」

「そうだったな。いきなり仕事させられて今日の分は終わりだと思ってたよ」

「ちゃんと見て行って下さいましね」

「あぁ、分かった。でも、目立たないところにしてくれよ。鼻の下伸ばしたヤツらの邪魔はしたくないからな」

「まぁ、そんなことおっしゃって。彼らはご浄財の寄贈を通じて教会に大きな貢献をなさっていらっしゃいますのよ」

「ま、捉え方の違いだな」

「そうとも言いますかしら」

「じゃ、行こうか。オレも勉強になることがあるだろうしな」

「はい。こちらへどうぞ」

 おいおい、主張の激しい胸を腕に押し付けてると、ほら。

 アリスが睨んでるってば。


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