観光?デート?
さてと、出かけるという結論に問題はないのだけれど。逆に、密室でメリルと二人きりの方が問題がありすぎる。
ただまあ、メリルに何かをしてしまったら色々終わりそうだ。なんとなくだけど、そんな気がする。
「そういえば、メリル。今更な質問なんだけど、急いで戻らなくても平気なの?」
「本当はあまりゆっくりはしていられないのですけれど……。でも、元々すぐに見つけられるとは思っていなかったので、少しくらいなら」
お城から出るのも初めてですし、と目を輝かせながら微笑む。僅かに見せた難しい顔が気になったけれど。
そんな風に言われたら、楽しませたくなるに決まっている、誰だって。
でもなあ、はっきり言って僕の住んでるところは田舎だ。ドが付くほどの田舎と言ってもいい。
若者が遊べるような場所は無くて、あるのは山と海といった自然ばかり。
電車で一時間ほど移動すれば大きな市がある事にはあるが、人が集まる場所はトラブルも多くなるわけで。メリルの所為ではないのだけれど、トラブルの方から舞い込んできそうだ。
必然的に条件は厳しくなる。人が少なくて、けれど何かが特別な場所。そんな都合のいい場所なんて……そっか、あそこがあったか。
「メリル、滝って見た事ある?」
「タキ、とはなんですか?」
「それは見てのお楽しみって事で」
そう悪戯っぽく笑ってみた。
20分程バスに揺られて、着いた先は山の麓。ここから徒歩で10分くらいで滝が見れる場所に行ける。
予想はしていたが、それ以上にメリルは目立っていた。バスを待っている間、ずっと視線が集まっていたのだ。
だから、バスに乗り込んだ時、他に乗客がいなくて助かった。逃げ場の無い空間で目立っていては気が休まらない。
本当に、今だけはここが田舎であることに感謝したいくらいだった。
バスから降り、砂利で舗装された山道を二人で歩く。特に会話は無いのだけれど気まずい沈黙ではなく、気持ちの良い静寂というか、興味津々に付いて来るメリルを見てるだけで何故だか楽しかった。
しばらくすると遠くから音が聞こえる。目的地に近づいている証でもある。
ほら、見えてきた。
木々が途切れ、開けた場所に出る。轟々と流れ落ち、舞い散る水しぶきが光を受け、小さな虹を作り出す。
隣でメリルが感嘆の声をあげる。
「これが、タキ……」
素直に感激され、誇らしいような、気恥ずかしいような複雑な気分を味わう。
「ここから下に下りて行けるけれど、行ってみる?」
感極まって言葉が出てこないみたいで、大げさに、何度も首を縦に振る。そんなメリルに思わず噴出してしまい、途端に顔を赤らめそっぽを向いてしまう。
機嫌損ねちゃったかな。そう思いつつメリルを盗み見ると、目を輝かせながら滝を見詰めている。どうやら先程の行動の照れ隠しのようだ。
そんなこんなで階段を下り、間近で滝を見る。ひんやりとした空気を思いっきり深呼吸する。
景色に見蕩れているメリルをそのままにして、滝から少し下流の岩場まで行き、ズボンの裾を捲くり、靴を脱いで素足を水に入れる。山歩きで火照った体に心地よい。
あまり誉められた行為ではないけれど、僕達の他には誰もいないので少し位問題ないだろう。
そんな僕の様子に気付いたメリルがこちらに向かってくる。
隣まで来て、僕の真似をして足を浸す。たくし上げられたスカートから見える白く綺麗な足が目に入り、いけない事をしている気分になり目を逸らす。
何を話していたか覚えていないのだけれど、体が冷えてきたので帰ることにした。山の気温は下がりやすいのだ。ましてや、滝の近くともなれば夏でも天然の冷蔵庫だ。
名残りを惜しみつつ帰り道を歩き、バス停近くの商店で二人分のアイスを買ってバスが来るまで時間を潰す。
僕の記憶には滝より綺麗な映像がいつまでも残り続けていた。
大変お待たせして申し訳ありませんでした。
もう、何も言っても言い訳です。
ちゃんと完結しますので、気長にお付き合いして頂けたら、と思います。
あ、大幅に修正する可能性もあったりします。
重ねて申し訳ありません。






