おねだりお姫様
「ユウ?」
「……うっ、うん。何?」
「先程から、私の顔をずっと見詰めておりましたので、如何致したのかと」
君に見蕩れていた、なんて言える訳ないだろ。そんなセリフ言う奴居るのかよ。
居たとしても、それは断じて僕じゃない。
「ううん、ちょっと考え事」
「そうでしたか。差し支えなければ聞いてもよろしいですか?」
「うん。どうして僕なのかな、って」
「ええと、上手く説明できないのですけれど、あえて言うのなら、勘、なのでしょう」
「勘?」
あまりに予想外すぎてアホみたいに聞き返していた。
「ええ、ユウならなんとかしてくれる。そんな予感を感じたんです」
「は、はあ。そうは言ってもねぇ……」
体力も身体能力も平均男子高校生並みの僕が魔物と戦うとか、どう考えても無謀でしょ。疑問に思わずにはいられない。
小学生の頃なら、きっと喜んで行ったんだろうな。誰もが悪者を倒すヒーローに憧れる年頃だし。
けれど、高校生ともなれば自分がヒーローになれないことを自覚し、その思いを胸の奥に仕舞いこむのが普通。
駄目だ、考えても仕方ない。何か別の事したほうがいいな。
でも、何をしたらいいんだろう?
「あの……」
自分の考えに没頭する前にメリルが申し訳なさそうに口を開いた。
「よろしかったら、街を案内してもらいたいのですけれど」
「理由を聞いてもいい?」
「王族の一人として、他の文化に触れ見識を深めたいのです」
ああ、つまりは観光したいって事ですね。
さっきから妙に落ち着かないと思ったら好奇心を抑えられなかっただけですか。
ため息を一つついてから答えた。
「分かった。けど、暗くなる前には戻ってくるよ。それでもいい?」
「是非っ!」
あーもう、分かったからそんなに瞳を輝かせないで下さい。
貴女は仮にもお姫様なんでしょうに。
「それじゃ出かける準備しようか」
「準備は出来てます!」
いや、貴女ね。そんなドレス姿で街を歩いて、何処のパーティーに向かうんですか、って話ですよ。
残念ながら、女性物の衣類を所持している特殊な人間ではないので、着替えてもらう訳にはいかない。
それでも、男物のパーカーを羽織れば何とかなりそうかな。
僕自身も変に着飾るよりはこのままの方が良さそうだな。
「メリル。悪いけどコレ羽織って」
物珍しそうにパーカーを受け取るメリル。
一応、僕が持っている中では一番高いヤツを渡した。勝負服と言ってもいい。考えると哀しくなるので今は考えない事にする。
メリルの方を見る。
うん、スカートは隠しようがないけど、ワンピースと言い張れなくは無い。
それでも目立つ事には変わりないけどさ。なんとかなるでしょ。
さて、出かける事にしますか。
少しだけ、誇らしい気持ちで玄関へと向かう。
美少女と出かけるだけで、ご機嫌になれるお手軽な僕であった。
いよいよお姫様とお出かけ。
新キャラも登場する予定です。
ユウとメリルはどうなるんでしょうね?