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PON-Z:マイ・カラフル・スクールライフ

掲載日:2026/04/05

※スタンドマイクからマイクを取り出して手持ちマイクにするスタイル(本人発案)



 少し駆け足で会釈しながらマイク前に立つ。



 スタンドマイクのマイクをとると素早くも深く一礼。



「チェッチェッチェック! マイク渡しな。ポンズは私だ。マイクテストで少しラップかました。今日は歌いませんが、喋らせて貰います! お願いします!」



 またも素早くも深い一礼。会場からの拍手は意図して取りにきている。



「えぇ~皆様は私のことをどのようにご存知かわかりかねますが、ヴィベックス所属で歌手と女優と色々やらせて貰っています。ポンズと申します。今日は歌うことは禁止って言われているので歌うことはせずに最後まで喋りたいなぁと思うものです。この世界に入ってきて数年、私達にとって恩師であります華崎CEOからスカウトを受けまして。彫鯉高校での高校生活に励みながら歌とお芝居あと人前でのお喋りの仕方など学んでおりました。私は福岡の中州で生まれ育ったのですが、皆さんも恐れているアレの娘です。放送コードにひっかかってはいかんと思うのでアレとしましょう。そんな私でありましたが、憧れのテレビの画面に映るぞという事で日々努力を重ねていました。部活は演劇部をやっていまして。彫恋高校と言えば学年のほとんどが演劇部か放送部あるいは軽音部。まぁそんな学校なんですよ」



 会場から笑い声が。ただまだこれは序の口。



「一部、サッカー部や野球部の生徒なんかいましたけども、我々のほとんどが今言った部活のメンバーですからね。掛け持ちで頑張るとか、他の学校のチームに入ってやるとか大変だったようで。それで私は競争率の高い演劇部で学園祭舞台を目指して頑張っておりました。ここで光ればテレビドラマに抜擢されるほどのことがあって……が、ダメでした。私は街ですれ違うエキストラでダンスの場面で主役のコの真後ろで踊るぐらいの出番でした。それもわずか数分。でも、その私の姿をみて役者の世界へ拾ってくださった恩人がいました。そのひとのことは言えないのですけど、しーっね、しーっ。だけど私はそれがキッカケで前田朋子としてテレビドラマ『やまとなでしこちゃん!』の主演に抜擢されました!」



 ここで拍手。予想外だったのか照れ笑いをしながら「ありがとう!」と一礼。



「そこからあっという間に高校卒業の時が来ました。薔薇色ってワケじゃ決してなかったけど、青春っていう青春を思い残すことなく過ごしたと思います。ただ、卒業式のその日、友達とパーッと騒じゃって……。友だちは大丈夫だったのですが、私は思いきり寝坊してしまったのですね!」



 笑い声が少しあがる。



 ただ彼女の真骨頂はここから。



「でも、幸い全力で走っていけば間に合う時間。そう。まだ間に合うのです」



 ここで何かが始まる。ここまでが前座だったのだ。



「あれぇ? ここじゃなかったかぁ~腰が痛いわぁ~お嬢ちゃん、山手線ってどこから乗ったらいい?」



 ポンズはここで道に迷うお婆ちゃんを演じる。



「おばあちゃん……まずい。今ここで道案内をしたら、きっとヒーローになれるかもしれないけど、遅刻の言い訳にならない。こんなときは数学の先生から伝授された!」



 クルッとまわって必殺!!!



「迷ったら無視するクールビューティッ!!!」



 ドーン!!!



「ネーチャン! 卒業式なんてもう間に合わないよ! そんなことよりもオレと今からドライブどう? ねぇ聞いているぅ? チョット待てよぉ? 挨拶にチューしようぜ! チュー!」



 いかにもチャラ男な男を演ずるポンズ。



「うげっ……卒業式に間に合わない女子をひっかけようとするセンスのないクズ男が出現。でも、こんなときは国語の先生から伝授された!」



 クルッとまわって必殺!!!



「グサッと強烈な『キモイ』の一撃!!!」



 ドーン!!!



「おい! そんなに急いでどこへいく! そこのスーパーで万引きしたなぁ!」



 これは真面目そうな男? だが、ポンズのひと言で片付く。



「やばい! ここでまさかの警察! でも、こんなときは華崎社長から伝授された!」



 クルッとまわって必殺!!!



「わたし、ヴィベクッスの所属タレントです!!! で社員証!!!」



 ドーン!!!



「はぁ……はぁ……あと5分……校門近くまできた。何とか間に合いそうだっていうところでまさかの踏切に電車が通ります!!!」



 ポンズはめちゃめちゃ項垂れる。



「うわぁぁぁぁぁぁ……ヴィベックスの社員証でポリ撒けたあたりで何とかなると思ったのに……こうなるのだったら、お婆ちゃんを助けてあげた方がよかったぁぁぁぁぁぁ……」



 バタッと倒れる。



 どよめく会場。いくら何でもここまでのことをするだろうか? と。



 顔をゆっくりとあげるポンズ。



「あなたは……なんと純白で神々しい……神様……?」



 いや、まさかすぎる展開。



「真っ白な天使のようなその人は神様でも天使でもありません。病院の看護士さん。私は校門前で失神して倒れてしまったみたいです。そんな私を見舞いにさきほどの武骨な警察官のオッサンから顔面からして中身のないチャラ男、山手線の入り口を探しに永遠と彷徨っていたお婆ちゃんまで来てくれていました。私は後日、特別に卒業式を開いて貰いました。での、そんなことがあったなんて恥ずかしくって誰にも話しておりません。今日はスタンドアップ・スピーチヒーロっていう特別な舞台だから本当のことを話します…………嘘です。ごめんなさい。結構序盤から私のフィクションがはいっていました。彫恋学園の生徒はそもそも部活をしておりません。する暇なんてない」



 いつの間にか彼女は立ってマイクを持ち悠々とスピーチ。



「でも、今の寸劇をみせてドラマの仕事を勝ち獲ったのは本当の話」



 スタンドマイクにマイクを戻す。



「信じるか信じないかはあなた次第です。それでは審査員の皆様、あとは宜しくおねがいします。会場の皆様、画面の向こう側の皆様、私がヴィベックスの本田恩逗、ポンズです。以後お見知りおきを」



 深々とゆっくり一礼して終幕。



 おれの妹がこんなに怪物だったなんておもってみなかった――






STAND UP SPEECH HERO+の1作として書かせて頂きました。


「芸能界になろう」の第4章を読んだ人のほうがより楽しめるかもです。


フリートークとお芝居の混合技で戦ったポンちゃんでした(#^.^#)

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― 新着の感想 ―
ポンズさんの芸達者ぶりが光るスピーチですね(*´ω`*) くるっと回って……のところが好きです。 迷ったら無視する、は確かに要領よく生きるために必要なのかも笑。 いでっちさん、ありがとうございました。
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