俺なりの童話4
低い椅子に座る老人は膝に孫を乗せて、絵本を読んでいた。孫はまだ三才と三か月。老人は自分では七十六といっていたが、本当は八十一才になる。
絵本は、桃太郎。三才と三か月の孫は、桃太郎が大のお気に入りの絵本だった。二か月ほど前に老人が読んであげて以来、毎週一度は孫にせがまれて読むことになったのだ。気に入っている個所は、桃太郎が鬼ヶ島で鬼と戦い始めるところだった。
かわいい孫のためとはいえ、桃太郎の読み聞かせに老人は飽きてきていた。老夫婦の元に桃太郎が来る場面や、幾つかの場面を端折って読もうとすると小さな孫はその小さな手で本に触れ、1ページ目に戻してちゃんと初めから始めるように老人に促す。初めからお供を連れて鬼と戦う桃太郎は絶対に孫には受け入れてもらうことはできなかった。
うんざりしながら絵本を読んでいると、膝の上の孫の様子が明らかにおかしいことに老人は気付いた。あんなに軽かったはずの孫の体が妙に重さを感じるのだ。そんなことは今まであったためしがないし、何かがおかしい。孫の背中に触れると、孫はそのまま床に落ちてしまった。いや。落ちていったのは孫などではなく、地蔵だった。
地蔵が乗っていたのか?気が動転する老人は思わずぎょっとして目を閉じた。絵本も落としてしまった。ゆっくりと目を開けると床には地蔵などなく、ただ桃太郎の絵本があるだけだった。
絵本を拾い上げると、誰かが老人の肩をたたいた。振り返ると、孫だった。そうか、これから読んであげるんだった。老人は孫を膝の上に乗せると、桃太郎を最初から読み始めた。
桃太郎を読み終えると気が付いたのは膝の上には誰もいないということだった。一人で絵本を声に出して読んでいたのかもしれない。何をしているのだろう?老人は苦笑した。
棚に本を戻すと、ふと窓の外を見た。孫はそもそも外で遊んでいたのだ。家にいると思っていたのは、ただの勘違いだったのだろう。背伸びをして両開きの窓を開けると、素足のまま老人は外に出た。
老人がいるのは病室の五階だったし、そのまま地面に叩きつけられた。




