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EP1

「影の薄いモブ」として生きるはずだった僕の日常は、あの日、彼女の涙を見た瞬間に壊れ始めた。

バンコクの技術専門学校。新入生のサンは、目立たず平穏な学生生活を望んでいた。しかし、クラスのマドンナ・フェスと、その彼氏で独占欲の強いウェーブの争いに巻き込まれてしまう。

傷ついたフェスを放っておけず、思わず手を差し伸べてしまったサン。そんな彼の前に現れたのは、謎めいた生徒会の先輩・パンチだった――。

タイを舞台に繰り広げられる、不器用な少年たちの愛と葛藤の物語。

午前8時30分

タイ、バンコク――アルンルン技術専門学校。

今日は入学式、そして俺にとっての初登校の日だ。

俺の名前はサン、16歳。今日からここでの新しい生活が始まる。

教室へ向かう前に、掲示板で自分のクラスを確認しておかないとな。

サン:「ええと、俺のクラスは……」

掲示板の端から名前を探していくと、意外な場所で見つけた。

サン:「あ、あった。……1/2組か」

(サン:成績はそんなに良くなかったはずなのに、なんで進学クラスみたいな前の方の組なんだ?)

フェス:「へぇー、君も1/2組なんだ」

不意に横から声をかけられ、心臓が跳ねた。

サン:「あ、すみません……っ」

//慌ててその場を立ち去る//

(サン:なんだ今の……。可愛すぎて直視できなかった。さっさと教室に行こう)

その時、背後でフェスが**サンの後ろ姿をじっと見つめていることには気づかなかった。

1/2組の教室

中学の頃から、俺の定位置はいつも窓際の一番後ろの席だ。ここなら外の景色が見えるし、何より目立たなくて落ち着く。

ネーン先生:「はい、皆さん静かに。担任のヴィモンシリです。名前が長いから、みんなからは『ネーン先生』って呼ばれてるわ。今日からよろしくね」

生徒一同:「先生、よろしくお願いします!」

ネーン先生:「じゃあ、自己紹介をしましょうか。一番左の窓際の席の子から始めて」

ウェーブ:「プーバディー・チャイレートナパードンです。ウェーブって呼んでください。これからよろしく!」

女子グループ:「うわ、カッコいい!」「ウェーブ君、私のタイプかも!」

クラスがいきなり色めき立つ。

(サン:……騒がしいな)

俺が頬杖をついて窓の外を眺めていると、聞き覚えのある声が教室に響いた。

フェス:「アンチャリカー・プリーチャートナーラットです。フェスって呼んでください。皆さん、仲良くしてくださいね」

(サン:あっ、今朝のあの子だ……。やっぱり可愛いな)

ネーン先生:「はい、じゃあ最後の一人」

ついに俺の番だ。

サン://立ち上がりながら// 「ええと……タナウィン・ウォーラタムウィシットです。サンって言います。……よろしく」

一瞬、教室が静まり返る。名前を噛んだわけでもないのに、なぜか気まずい沈黙。

その静寂を破ったのは、フェスの拍手だった。

フェス://パチパチと拍手をする//

それに釣られるように、クラス全員がパラパラと拍手を始めた。

サン://逃げるように席に座る//

昼休み

俺が一人で昼飯をどうしようか考えていると、目の前に影が落ちた。

フェス:「サン、だよね? よかったら、私たちと一緒にご飯食べない?」

(サン:えっ、俺みたいなモブを誘ってるのか?)

サン:「……誘ってくれてありがとう。でも、今日は遠慮しとくよ」

フェス:「えっ……」

サン:「ごめん。声かけてくれて嬉しかったよ」

俺は足早に教室を出ようとしたが、フェスに腕を掴まれた。

フェス://サンの腕を掴む// 「待って、行かないで! あの、本当は……」

その時、フェスのスマホが鳴り響く。画面には『ウェーブ』の文字。

フェス:「……はい。今行くところ、遅れてごめん」

電話の向こうから、ウェーブの怒鳴り声が漏れ聞こえる。

ウェーブ:『謝るならさっさと降りてこい!』

フェス://目に涙を浮かべながら// 「……わかったわ」

食堂の裏

ゴミを捨てに食堂の裏へ回ると、偶然にも修羅場を目撃してしまった。

ウェーブ://フェスを壁に押し付ける(壁ドン)//

ウェーブ:「さっきのメガネ野郎サンと何を話してたんだ、あぁ!?」

(サン://慌てて壁の陰に隠れる// あいつら……やっぱり知り合いだったのか)

フェス://ウェーブの頬を叩く// 「パチンッ!」

ウェーブ:「……てめぇ、俺を叩いたな。最近いい気になってると思ったら!」

ウェーブ://手を振り上げる//

フェス://ギュッと目を閉じる//

(サン:……体が勝手に動いていた)

サン://ウェーブの間に割り込み、突き飛ばされる// 「ぐふっ……!」

地面に倒れ込みながらも、俺はウェーブを睨みつけた。

サン:「……女の子に、手を出すなよ」

ウェーブ:「チッ、邪魔しやがって……この野郎!」

「そこまでよ!」

パンチ://生徒会の腕章を光らせて現れる// 「生徒会です。校内での喧嘩は禁止よ!」

ウェーブ:「……覚えてろよ、メガネ!」

//ウェーブは吐き捨てるようにして去っていく//

生徒会室

ビュー:「私は生徒会長のビュー。よろしくね」

パンチ:「さあ、起きたことを全部話しなさい、メガネ君」

サン://タジタジになりながら事情を説明する//

フェス:「……あの、ウェーブは私の『彼氏』なんです」

ビュー&パンチ:「えええっ!?」

校門前

サン:「はぁ……散々な初日だ」

//ため息をつきながら歩いていると、後ろから誰かに肩を叩かれる//

パンチ:「悩み事かな? 自己紹介が遅れたね、私はパンチ。よろしく」

サン:「パンチ先輩……」

パンチ://ニヤリと笑う// 「ちょっと、散歩でも付き合わない?」

第1話 完

第1話を読んでいただきありがとうございます!著者の**クラブ**です。

今回は僕の故郷であるタイの学校を舞台にした物語を書いてみました。

ヒーローになりきれないサンと、複雑な事情を抱えるフェス。そして最後に登場したパンチ先輩が、これからサンにどんな影響を与えるのか……。

面白いと思ったら、ぜひブックマークや評価をお願いします!次回の更新もお楽しみに!

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