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ずっとここにいる

作者: 浅黄

暗い……です。


「死ぬ」とかそういうのがムリな方は注意してください!


ある夏の日、たかくんは言いました。

「ぼく、セミきらい」

たかくんは地面に列を成すアリを見ながら、あみちゃんに言いました。

「どうしてきらいなの?」

「だって、死ぬもん」

たかくんはありに運ばれるセミのなきがらをじぃっと見つめました。

「たかくん、むしはみんな死んじゃうんだよ」

「じゃあ、むしぜんぶきらい」





ある秋の日、たかくんはあみちゃんに言いました。

「ぼく、きんぎょきらい」

たかくんは金魚鉢を見ながら言いました。

一匹、金魚が腹を上にし、浮いています。

「どうしてきらいなの?」

「だって死ぬもん」

たかくんは指で金魚蜂を指でつつきました。

「たかくん、さかなはみんな死んじゃうんだよ」

「じゃあ、さかなぜんぶきらい」





ある冬の日、たかくんはあみちゃんに言いました。

「ぼく、うさぎきらい」

たかくんはケージの前に座り込んでいます。

中には一羽、うさぎが倒れています。

「どうしてきらいなの?」

「だって死ぬもん」

たかくんはケージの中のうさぎに水の入ったお皿を近づけます。

「たかくん、どうぶつはみんな死んじゃうんだよ」

「じゃあ、どうぶつぜんぶきらい」





ある春の日、たかくんはあみちゃんに言いました。

「ぼく、おかあさんきらい」

たかくんは病院のベッドの前で言いました。

お母さんはベッドに横になっています。

「どうしてきらいなの?」

「だって死んじゃったもん」

たかくんは涙をこぼしながら言いました。

「たかくん、にんげんはみんな死んじゃうんだよ」

「うそだよ」

たかくんは怒鳴って言いました

「死なない!みんなが死んだら、ぼくひとりぼっちになっちゃうもん!!」

「そうだね。たかくんは死なないもの」

たかくんは世界的に有名なお医者様でした。

がんを治すお薬の他にも人の寿命を延ばす薬や不老不死になる薬も作りました。

可愛い息子を死なせたくなかったのです。

「いやだ!ひとりぼっちはいやだ!それなら死んだほうがマシだ!」

あみちゃんはたかくんに微笑みかけました。

「あみちゃんもね、もうすこしで死んじゃうかもしれないわ」

あみちゃんはしわしわなった両手を見つめました。

「そうしたら、またあたらしい『あみちゃん』がくるからね」

そう言った3日後にあみちゃんは倒れたまま動かなくなりました。




たかくんは何も無い真っ白な部屋であみちゃんに言いました。

「ぼくは、ぼくがきらいだ」

「どうしてきらいなの?」

たかくんは言いました。

「だって、死なないもん」

たかくんは寂しそうに微笑みました。

「ぼくは、死にたい」

あみちゃんはたかくんの肩に手を置き言いました。

「たかくん、生きるのがいやになったの?」

「いやだ。さみしいよぅ」

「でもね、たかくんは死ぬことができないの。

これからなんびゃくねんも生きて、生きて、生きていかなきゃいけないの」

あみちゃんの言葉は子守唄のようで、たかくんは眠たくなり、そのまま床に横になりました。

もう、たかくんは起きたくありませんでした。

たかくんはそのまま、何も無い部屋でまるで死人のように全く動かずに過ごし、死んだフリをしていました。

ただ、世界が終わるのを待ち続け―――…

珍しく真面目に書いてみた童話風短編です。


受け取り方はいろいろあると思います。



誰もが「死にたくない」と一度は思うはずです。




「ずっと生き続ける事」とはどういう事か。。。


何故、人は死ぬのか。。。。。


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