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第11話 死闘の裏で

 物語は、あの戦いの最中へと遡る。


────────

────────────────

 私たちは、上空で対抗策を練っていた。


「──じゃあどうやったら倒せるの⁉」


 大規模攻撃はローゼスを巻き込む、狙いを付けた攻撃は回避か防御されるだろう、というライルの読みから、私たちは行き詰っていた。

 これにライルはできそうもないことを言う。


「ヤツの動きを止めた上で、一点突破の攻撃を当てることができれば……」


「動きを止めるなんて無理でしょ⁉」


 だがそれでも、私は必死に考えた。

 そしてあることを思いつく。


「──『魔力障壁』に触らせたら? だって、アイツは強化魔法で体動かしてるんでしょ? じゃあ、その魔素を吸収出来れば……」


 かつて、邪龍から私を守った『魔力障壁』。

 その魔道具が持つエネルギー以上の攻撃を、なぜ受け止められるのか。

 以前、フォルシアに行くまでの間に語っていたのだが、「障壁に触れた物体や魔法から、魔素を還元・吸収することで、障壁のエネルギーに変える」というものらしい。


 即ち、魔力障壁に大男の魔素を吸収させれば、動きを止められるのでは──ということである。

 しかし、これにライルは嫌な顔をした。


「貴重な先史の遺産を壊したらどうするつもりだ⁉」


「でも! やるしかないでしょ!」


「じゃあ私が代わりに同じことをやる!」


「ダメ! 人間ができる範疇を超えてるから!」


「はあ!? では敵に奪われたらどうする⁉」


 数回のやり取りの結果、魔道具は光魔法で見た目だけ、障壁そのものは邪龍が直接出す、ということでまとまった。

 ただし、直接当てようとすると警戒されるはずだということで、向こうに触ってもらうのをお祈りする大博打作戦でもあるが……


 が、もっと問題なのは攻撃方法であった。

 始めは、ライルがそのまま攻撃もすれば、と考えていたのだが……

 私が魔道具を話題に出したせいか、ライルは変なことを言い始めたのだ。


「……お前がピストルを使え」


「ええっ!? な、なんで……というか、あんなのが効くわけ……」


「効く。私の見立てでは、あの武器はヤツの魔法防御を貫通する」


 その時の彼女はニヤついた顔で、こちらが困る様子を見て楽しんでいるようだった。

 彼女の言うことが全て本当かどうか、私には判断しようがなかったが……一瞬見せる真剣な眼差しが、私に訴えかけてきていた。


「それどころか、私の魔法──人間が使える範疇の攻撃では、ヤツには効かん可能性すらある。ヤツの魔法発動にかかる時間は常人のそれではない。一瞬動きを止めたとて、すぐに弾かれる」


 さらに追加で、もっともらしい理由を付けて私を追い込んでくる。


「それと、私は模倣と障壁の形成で忙しいからな。しかも、あれは使用者の魔法能力とは無関係に扱える……レイル、お前でも使えるぞ!」


「え、えっと……」


「大丈夫だ、弾はヤツの急所に命中するように私が制御する。お前は撃つだけでいい!」


 私もこれには反対しようと思ったが──『邪龍』のことだ。

 私と継承石さえ守っていれば、ローゼスさんのことはどうでもいいとすら考えているに違いない。

 ……つまり、ローゼスさんを守りたいという私の意思を盾に、私の「おもしろい様子」を見たがっていたのである。


 これで決断が遅れたら、彼を救うのに間に合わないと考え──私は了承するしかなかった。


────────────────

────────


 …………私にも非があったと言えば、あるだろう。

 あの時に、「敵に近づけば私が危険になるぞ」、そう強く主張し、邪龍を抑えることができていれば……


 しかし、過ぎたことを考え続けても仕方がない。

 そう思い直し、今はローゼスさんの様子を見ることにした。


(寝てるようには見えるけど……でも心配だな……)


 私の様子に気づいたのか、ライルが話しかけてくる。

 彼女は私と話したことで随分落ち着いたのか、その声はほとんど普段の状態に戻っていた。

 

「こいつのことは心配しなくていい──強化魔法の副作用だ。『物質反応加速』のな」


「えっ? なんですかそれ?」


 聞き慣れないその魔法について聞くと、ライルは饒舌になった。


「『物質反応加速』はその言葉通り、対象内で生じる物質の反応を加速させる──つまりは、神経や筋肉の動きを速めるということだ。ヤツと正面から戦わせるには、やらざるを得んかった」


「は、はあ……それで、この様子は話からして……めちゃくちゃ体力を消耗したってこと?」


「そういうことだ。まあ、放っておけば起きるだろ」


 彼女は少しぶっきらぼうにそう言うが、私はそうは思えなかった。


(そうは言われても…… 明らかに栄養か何か、足りなくなってるような……)


 その時だった。

 突然、地面が崩れるような音が前方で響いた。

 私は警戒して、物陰から顔を出す。


「何!? まさかまた敵が──」


 しかし、それ以上の音はしなかった。

 何が起きたのかと、私はライルをその音の元へ向かわせた。


「!! これは────なんだ?」


 そこは、大男が窪みを作ったところ……即ち、王室兼行政所の下。

 地盤が崩落し、大穴から地下室が顔を覗かせていた。


「レイル、ちょっと来い!」


 私は身を屈めながら、急いで駆け寄る。

 そしてそこに見えたのは、大量の瓶、酒樽、缶詰──


「これは……食料庫!!」

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