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008 知らない龍

 特に魔物が近寄って来る事も無く、無事に新しい朝を迎える。

 寝ている間に凝り固まった体を、伸ばしてほぐし、頭を覚まさせる。

 周りを見ると、既にノノもブレイブも目を覚ましていた。

 ノノは何かの武術の型を取っているのか、決まった幾つかの型を繰り返し取っていた。

 ブレイブの方を見ると、彼は荷物の整理をしているのか、鞄の中身を広げて一つ一つ丁寧に仕舞い直していた。

 ブレイブはこちらが目を覚ました事に気が付いて声を掛けてくる。


「おはようクロ」


 ブレイブの挨拶で、ノノも俺が起きた事に気が付いて声を掛けてくる。


「…クロおはよ」


「…ああ、おはよう」


 まだ少し動いてない頭で、なんとか挨拶を返す。

 荷物整理が終わったのか、ブレイブが朝食の準備を始めていた。

 程なくして準備が完了し、近くの倒木に腰掛け、三人仲良くいつもの干し肉と干した果実を並んで食べる。

 半分程食べた所で、そう言えばとブレイブはノノに問い掛ける。


「ノノはこれからどうするんだい?」


「…特に予定も、目的も無い」


「俺とクロは帝都に向かっているんだけど、一緒に来るかい?」


 ブレイブのその提案に、ノノは一瞬俺の顔を見る。

 ノノと目が合うが、彼女が何を考えて居るかは全く分からなかった。

 まあ俺は人の考えとか、読み取るの苦手だから分かる訳も無いのだけど。


「…行く」


 ノノが何を考えていたのかは分からなかったが、取り敢えず彼女も一緒に帝都に来るらしい。

 まあ現状帝都に向かって居るかは分からないけど。


 食事も終わり、荷物を持って移動を開始する事にする。

 俺とブレイブは結構な量の荷物を持っており、背負う鞄の大きさもそこそこな大きさになって居るのだが、ノノは小さな肩掛け鞄一つだった。

 着替えとかどうしてるんだろうか。


「さて、行こうか。クロ頼んだよ」


 皆の準備が完了したと見て、ブレイブが俺に話しかけてくる。

 頼んだと言われても、兎に角前に進むだけだが。


「…ああ」


 何はともあれ、新しく三人での旅が始まったのだった。







「…変だな」


「何が変なんだい?」


 つい漏らしていたらしい俺の独り言に、ブレイブは律儀に言葉を返してくれた。


「あまりにも生物の気配が無さすぎる」


 そう、先程から歩けど歩けど、小さな動物の気配すら無いのだ。


「…クロ前から何か来てる」


 ノノの言う通り、前に気を向けると確かに何かの気配を感じる。

 俺もかなり生物の気配には鋭い方だが、ノノはそれ以上かもしれない。


「…こちらに向かって来るな」


「どうする?クロ。道を逸らすかい?」


「…そんな暇は無いかも」


 ノノの言う通りだ、その生物はかなりのスピードでこちらに向かって来ている。

 蜂合わさない様にするには、少し気が付くのが遅かった様だ。

 程なくしてその生物は俺達の前に姿を現す、二本の後ろ脚が発達し、走る事に特化したタイプのトカゲが二体。

 大きさは二メートルといった所か。

 俺達と鉢合わせて驚いている様に見えるが、逃げ出す様子も無く、こちらに襲い掛かって来る。

 奴らが近付いて来ていると分かった時から、こちらは剣を構えている。

 こちらを殺さんと噛みかかって来た所を、体を半身だけずらして下から斜めに剣を振るう。


「フッ!」


 それだけで十分だ。

 襲い掛かって来た時は一つだった体は、二つになって地面に落ちた。

 ノノとブレイブの方にも一体行ったので、大丈夫かと視線を向けようとした時、激しい音破壊音が聞こえた。

 慌ててそちらを見ると、腹に大きな穴を開けたトカゲが木にめり込んでいた。

 少しするとトカゲがぶつかった部分を始点として、木は凄まじい音を立てながら倒れていく。

 余りの光景に、何が起きているのか全く理解が出来なかった。


「…ぶい」


 ノノの方を見ると、ピースサインをしながら可愛い声を発していた。


「えっと…ノノ、今のは何をやったんだい?」


 俺と同じく、脳が理解を拒んだであろうブレイブが、ノノに質問をしていたが、帰ってきたのはシンプルな答えだった。


「…力とマナを込めて…殴った」


 言いながらノノはファイティングポーズを取って、拳を振っていた。

 普通それだけであのサイズの生物を吹っ飛ばした挙句、木にぶつけて折るなんて事は出来ない。


「…凄いな」


「…でしょ?」


 俺はそれしか言う事が出来なかった。

 ノノは誇らしげにしているが、この小さな体の何処からそんな力が出ているのだろうか…俺は恐ろしかった。

 ブレイブの方を見ると、彼と目が合った。俺達は同時に顔を縦に振る。

 きっと考えている事は同じだろう。

 ノノを怒らせるのは辞めておこう、と。

 気を取り直してトカゲの解体をする事にする。


「…こいつの肉…美味しい?」


 解体を始めた俺の横までノノが来ていた。両足を畳んで、覗き込むそうにしてこちらを見ている。


「…不味い」


 そう、こいつの肉は不味いのだ。と言うよりも、トカゲの肉は不味いものが多い。

 肉食生物独自の臭みなどで食べられた物では無い。


「…こいつは皮だけ使う」


「…そうなんだ」


 味は最悪だが、皮は様々な用途に使う事が出来るのだ。

 撥水性が良く、耐久性も高いのできちんと鞣して使えば、小物や鞄など使い道は多い。

 皮を剥ぎ、肉はその辺りに置いて行く。そうすれば日が暮れる頃には肉食の生物によって全て食い尽くされる。

 残った骨も虫等の小さな生物や菌によって、少しずつ分解されていく。

 そうして分解された物や、動物の糞によって植物が育ち循環をしていく。


「クロ、こっちの奴はどうする?」


 ブレイブの方へと向かうと、ノノが吹っ飛ばしたトカゲの死体が有った、が…


「…これは…使えないな」


 遠くから見ただけでも、腹に穴が空いているのは分かっていたが、近付いて精査すると、思った以上に酷い状態だった。

 これでは皮を剥ぎ取った所で使い物にならないだろう。


「そうか」


「…次はもうちょっと…加減する」


 ノノは少ししょんぼりとしているが…


「素材よりも命の方が大切だ…これで良い」


 今回は素材を集める為に殺したのでは無い。相手から襲い掛かって来たから返り討ちにしただけだ。

 そんな時にまで加減をしていたらいつ自分が死んでもおかしく無い。なので、今回はこれで良いのだ。


「ん…分かった」


 つい妹に掛ける様な事を言ってしまったが、ノノは気を取り直した様だ。

 身長の事もあるが、ノノにはついティナに掛けるのと同じ様な事を言ってしまう。


「それにしても、この竜達は何故こちらに向かって来ていたんだろうね」


「…」


 腹を空かせて襲って来たのかと思ったが、俺達に出会うのはあちらとしても想定外だった様に思える。

 そもそもこの辺りには生物の気配が無かったのだ、“他の生物”は何処に行ったのだろうか。


「…何かから逃げてる様にも見えた」


 ノノの言う通りだが、問題は何から逃げていたのか、である。

 この辺りは“龍”の住処からも遠い筈だが…そんな俺の思考は途中で遮られた。


「えっ?」


 気がつけば俺たちの前に巨大な“何か”が現れていた。

 俺達よりも遥かに、遥かに大きいその体。四つ足で地面に立っていると言うのにも関わらず、十メートルはあるのでは無いだろうか。

 鋭い牙に、爪。

 長く、太い大きな尾。

 体全体を覆う赤く、紅い、その鱗。

 間違いない、これ“龍”だ。

 だが、こんな龍を俺は知らない。この辺りに住んでいる龍の事は殆ど知っている筈だが…


「…いつの間に…?」


 ノノが思わずと言った感じに言葉を漏らす。

 確かに、生物の気配に敏感な俺とノノの感知を掻い潜り、音も無しにこの場に現れた。

 はっきり言って異常である。さっきのトカゲはこいつから逃げていたのかも知れない。

 そいつはこちらを観察する様に見ている。やけに俺の事を見ている様な気もする。

 だが、俺は一番気になっている、と言うか思っている事があった。


「…ブレイブよりも赤いなぁ」


 俺がそう言葉を発した瞬間、ぷちんと、音がした様な気がした。が、その音の発生源を確かめる事は出来なかった。

 何故なら俺達三人は仲良く宙を舞っていたのだから。

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