005 問題ない
おはようございます!いやぁ!太陽が眩しい!
見える景色は一面美しいクソ緑!そして美味しいご飯!うーん、完璧。
やっぱり出荷される可哀想な男なんて何処にも居なかったんやなって。さ、今日も素振りを…
「おはようクロ!いつもこの時間から素振りをしているのかい?」
しようと思ったら昨日のロン毛君が話しかけて来た。
夢じゃなかったのか…面倒臭いけど挨拶は変えさておくか、挨拶はすごく大切だからな。
「…おはよう」
「良かったら俺も隣で振っても良いかな?」
「…ああ」
俺が返事をするや否や、すぐに剣を振り始めるロン毛君。元気だねぇ…まあ隣にいても特に邪魔でも無いので、俺も素振りを始める事にした。
「うーん、やはりクロの剣筋は全くブレがないな」
どうしたらそんな風に剣を振れるんだい?と、ロン毛君が質問をしてくるが、正直分からん。
俺は楽しくて剣を振っていただけだからなぁ…
「…兎に角振る事が大事だ」
「やっぱり基礎が大切なのか…近道は無いって事だね!」
適当に答えただけだったのだが、ロン毛君は納得してくれた様だ。君がそう思うのならそうなんだろう。きっと。
しかし、ロン毛君の素振りを見ていると、何だかこう…あまりにも力に任せて振っている様に見えるな。
剣を振るのに力は必要だ。あればある程良いと言って良いだろう。
だが、腕の筋力だけで振る剣は鈍だ。その切れ味には必ず限界が来る。
「…もっと力を抜いて」
「えっ…?ああ、分かった!」
「…力を連動させるんだ」
「こうかな?」
「…もっと体全身の筋肉と、骨で振るんだ」
「筋肉は分かるけど骨でかい?」
「…ああ…筋肉は必ず、骨が支えている…骨から動かせば、筋肉は自然な形で動く」
「成程…!」
俺は剣は我流だが、体の動きは村の知り合いから教わった、まあこの村に住んでる人間は皆そうだ。
知ってる知識を教えて、次に繋げる。そこに血の繋がりは関係ない。
得意な人間が得意な事をする。俺は体を動かすのが得意だから、主にそう言った知識を教えてもらった。
とは言え、こんな初歩的な体の使い方なんて、この村に住んでる人なら皆出来るが。
そんな初歩的な知識でも、ロン毛君は満足してくれた様だ。先程よりも自然な形で剣が振れてる。
うーん、しかし今日はもう喋り疲れたな、後は素振りに集中しよう。
「ところで、昨日は急にすまなかったね、少しテンションが上がり過ぎてしまって」
「…ああ」
「急に帝都に来てくれなんて、困るよね。クロにも生活があるだろうし」
「…問題ない」
「本当かい?じゃあ改めて聞くのだけど…俺と一緒に帝都で冒険者になってもらっても良いかな?」
「…ああ」
「!!良かった!嬉しいよクロ!トナリさんの提案で三日はこの村に居ようと思ってるんだ。出発するのは三日後で大丈夫かな?」
「…問題ない」
「そうか!君と冒険者として活動できるのがとても楽しみだよ!」
「…ああ」
「それじゃあ俺はここで失礼するよ、トナリさんの仕事を少し手伝いたくてね」
「…問題ない」
「じゃあ!」
「…ああ」
「ふぅ…」
どうやら無心で剣を振っている内に、いつの間にか日が傾いてしまった様だ。気が付けばロン毛君も居なくなっている。
もしかすると、アホみたいに剣を振っている俺に呆れて帰ったのかもしれない。
もしかすると帝都に一緒に行くのも諦めるかもな!!ガハハ!流石俺、気付かぬ内に面倒事を回避していた様だ!!
「お兄ちゃん素振り終わった〜?」
丁度ティナが家の方から歩いてくる。
「終わった終わった」
「そう、ご飯できてるよ〜」
ティナにそう言われて、朝から殆ど何も食べていない事に気がつく。急に腹が減って来たな…早く食事にしたい、俺は家に向かって歩き出した。
「そう言えば意外だったな〜」
「何がだ?」
「いや、お昼にブレイブさんが改めてお兄ちゃんに、帝都行きの話してたじゃん?」
「…ああ」
してたっけ?
「その時に許可したのが意外だなって」
ん?
「…したか?」
「うん、してたよ、問題ないって言ってた」
およよ?
「…さてはお兄ちゃん、剣振るのに夢中で話聞いてなかったでしょ?」
「…ああ」
やっちまったなぁ!クソ!ティナが返事しただけなら、まだ断れる可能性があったのに!もう!アタイってほんと馬鹿!
コミュニケーションの重要性!コミュニケーションの重要性!!
「…お兄ちゃんはその面倒臭がりな性格、ちょっとは治した方が良いと思うよ?」
俺は何も言い返す事が出来なかった。
そうして今に至り、俺はロン毛君と仲良く、帝都を目指しているのであった。所で帝都ってどっちだ?